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NEWT開発の2023年の振り返りと2024年の抱負

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新年あけましておめでとうございます。VPoE 兼 PdMのまがらです。
年初ということで、2023年のプロダクト開発を振り返りつつ、今年の抱負を書き記そうと思います。
 
NEWTローンチから2年目の急激な事業成長を駆け抜け、その成長痛ともいえる様々な課題に直面しているのが今かなと思っており、プロダクト開発組織としても1つの転換点にさしかかっていると捉えています。
toCアーリーフェーズスタートアップのプロダクト組織の1事例として、参考にしてもらえれば幸いです。

■ 2023年の振り返り

2023年は「NEWT(ニュート)」飛躍の一年となりました。
2023年4月にNEWTリリース1周年を迎え、2年目は「10X」をテーマに非連続な成長を目指して毎月多くの施策に取り組んできました。
 
プロダクト開発目線では、
  • NEWTツアーの商品ラインナップの拡充
  • NEWTホテルの立ち上げ
  • プロダクトチームの組織スケール
の3つが特に大きなトピックでした。

1) NEWTツアーの商品ラインナップの拡充

事業戦略上の重要なテーマの1つがNEWTでの商品ラインナップを非連続に拡充していくことでした。
 
2023年開始時点では17エリアで2,000ツアー程度と、他社と比較するとNEWTに決して十分なラインナップがあるとは言えない状況でした。
例えば、家族4人でシンガポール旅行を検討している方が、NEWTで「シンガポール×4人」という条件で検索したとき、ツアーが1件も見つからなければ自分にはこのサービスは使えないと判断して一瞬で離脱してしまいます。
 
当たり前のことですが、ECサイトおいて十分に比較検討可能な商品ラインナップが取り扱われていることは最低条件です。
商品数と予約数の明確な相関は1年目から見て取れていたので、事業としては魅力的な商品ラインナップの拡充が至上命題でした。
 
この課題を乗り越えるために、プロダクトとしてはこの1年で、
  • ヨーロッパ周遊ツアー対応
  • 商品数増に対応する検索体験の改善
  • 航空券座席の事前仕入れ方式へのシステム拡張対応
  • NEWTで販売するツアー商品の登録と販売管理の自動化
  • 在庫・料金管理の自動化
など、NEWTでの体験はもちろんのこと、多数の魅力的な商品を生み出す基幹システム(トラベルマネジメントシステム)の構築にも力を入れて取り組んできました。
 
その結果、1年間で50エリア14,000ツアーと、主要エリアについてはホテルもフライトも競合他社にも見劣りしない十分なラインナップを揃えることができました。
売上高もFY242Q(2023年7〜9月)はYoYで4.4倍と、非常に大きな事業成長を実現することができました。
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世界中のあらゆる旅行プランを提供できるように2024年も引き続き注力していきたいと思います。

2) NEWTホテルの立ち上げ

また、2023年は飛行機とホテルを別々に予約する個人手配型海外旅行の増加を背景として、海外のホテルを簡単に予約できる機能の拡充にも取り組んできました。
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1月にステルスでリリースし基礎的な検証を経て、4月から本格的にサービスローンチしました。
ホテル予約サイトによくある不正予約攻撃などにも対処しつつ、宿泊したいエリアから空室のあるホテルを検索できる「マップ検索」をリリースするなど、ホテル予約機能としての基礎機能を拡充していきました。
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2023年12月末時点で、最新から王道まで約70万軒から自分好みのホテルを最低価格で簡単に予約でき、更には5%ものNEWTポイントが貯まるという非常に魅力的なサービスとなっています。
 
一方で、ツアー事業と違い、PMF達成に向けて取り組むべき課題はまだまだ山積みな状況です。
2024年は1つの事業としてのPMFはもちろんのこと、ツアー事業や航空券予約サービスなど、今後立ち上げる事業とのシナジーを生み出し、NEWTのスーパーアプリ化を進めていきたいと考えています。

3) プロダクト開発組織の拡大

2023年は全社的に積極的な採用で組織拡大を進めた1年でした。
プロダクト開発組織も1年で7名のメンバーが入社するなど、フルタイムメンバーのみで23人と組織規模が約1.5倍となりました(※PdM、QA、エンジニア、EMなどプロダクト開発ロールのメンバー全員の人数です)。
 
採用活動はブログでの継続的な情報発信や勉強会の開催といった技術広報から、スカウトの徹底送付やリファラルなど行動量を担保して精力的に取り組んできました。それと平行して、選考フローにおける候補者体験の向上もPDCAを回して改善をつづけました。
それらの取り組みの成果が実を結び、10月以降は内定承諾率90%で9人の採用が決定するなど驚異的な結果を生み出すことができました。
 
チーム運営観点では、組織拡大に合わせて2チーム体制から3チーム体制にチームを分割しました。
各チームの担当EMが裁量をもってプロダクト開発をマネジメントしていくことで、創業期からの攻めの開発スタイルで機能リリースを積み重ねることができたと思います。
 
開発生産性は、シンプルにリリース案件数という結果指標を追っていましたが、実績としても組織拡大に伴い順調にリリースを積み重ねることができました。
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具体的な生産性向上に関する取り組みについては、ぜひNEWT Appチーム EMの吉田のこちらの記事もご覧ください。
 
ちなみに、質がスピードを生むという思想から、システム品質もQAフェーズでの重大不具合発生率や、リリース後の重大障害発生率をメイン指標に定めて、開発サイクルを通じて品質をつくりこむ取り組みもしています。
100%リスクテイクして短期的なスピードのみを追うことは決してしないと2022年4月のNEWTローンチ時に判断したのですが、それからの1年半積み重ねが現在の健全な生産性を生み出したと考えています。
(※ 質とスピードを両立するQAの取り組みについては少し前の記事ですがこちらもご覧ください。)
 
総じて、プロダクト開発組織の拡大をしっかりとアウトプット拡大につなげられた1年だったと振り返っています。

■ 2024年の抱負

上記の振り返りのとおり、2023年は開発組織としてもプロダクトとしても飛躍の一年となりました。
プロダクトを前に進めることを最重要視し、リスクテイクして機能開発に辺重した投資を行ってきたからこその結果であり、事業2年目でPMFからのグロースを模索するフェーズとしては非常によい成果に繋がったと考えています。
 
一方で、事業として順調に成長しているからこそ、さらなる非連続な成長のためにはこれまでの勝ちパターンにとらわれず、自分たち自身を非連続に進化させていく必要があるフェーズになってきたとも考えています。
2024年は、3年後にNEWTを1,000億円の事業にすることを大前提に置きなおし、その壮大な未来を自分たちでつくりあげるために必要なことを既存の制約に縛られることなく、妥協なく取り組んでいきたいと考えています。
 
まだ全く戦略とは言えないレベルの曖昧なテーマの羅列にすぎませんが、いくつか思いつくことをあげてみます。

1) PMFの波状攻撃

別に誰かを攻撃するわけではありませんが、連続して何度もPMFさせていく必要があるよね、という話です。
 
前提として、令和トラベルは事業開始から5年で1,000億円の流通総額をつくること、そのためにありとあらゆる旅行ニーズに応える旅行サービスを拡充していくことを目指しています。
事業が急激に成長しているとは言え、目標からするとまだまだ遠く、今PMFしていると思われるプロダクトだけでは到底到達することができないレベルです。
 
海外旅行マーケットは、渡航先ごとにカスタマーの旅行ニーズも旅行商品の特性も異なります。
様々なニーズを持った多様なカスタマーに対して異なる特性の商品を提供していくためには、共通で普遍的な価値だけでなく、ある程度のニーズごとに最適化された価値を提供していく必要があります。
ここは仮説ですがAmazonのような総合ECにおいて、商品セグメントごとに絶妙に異なる検索体験や商品説明、オプションの提示などがあるようなイメージかな・・・とは考えていますが、どのような形かは今後突き詰めていかないとわかりません。
また、より柔軟な旅行を検討される方にはホテル予約だけでなく、航空券予約サービスも提供していきたいですし、現在はLINEチャットでのみ受け付けている旅行相談サービス・トラベルコンシェルジュもNEWTに組み込んでいきたいと考えています。
 
いずれにしても、
  • U29世代を中心にしつつも、ファミリーやシニアなど全世代にまで
  • 海外旅行慣れしていないカスタマーから海外旅行常連層まで
  • ソウルなどショートエリアを中心にしつつもヨーロッパやハワイなどのロングエリアや、世界中のニッチエリアにまで
というように、今はまだNEWTのど真ん中ではない顧客セグメントに対しても、NEWTでの提供価値を広げていき、第二次PMF、第三次PMF、・・・とPMFを重ねていく必要があります。
 
2024年は価値が明確になりグロースに集中すべき領域と、新たな価値検証をしつつPSF→PMFにより広げていく部分を切り分けたうえで、その両取りを狙うべくプロダクト開発を発展させていきたいたいと考えています。

2) NEWTツアー事業のグロースを徹底的に科学する

これまでのNEWTの機能開発は、定性的な側面を重視して価値仮説を立て機能をリリースしてきましたが、PMFしたとみなせる領域においてNEWTを非連続にグロースさせていくには、グロースを徹底的に科学していくことが必要不可欠です。
 
現在もKPIをKPIツリーとして指標分解し、主要指標をモニタリングしたり、Google Analyticsで必要な基礎行動をトラッキングしたりなど基本的な取り組みは行っていますが、
  • データからカスタマーセグメントごとの具体行動を捉え、プロダクトの課題仮説を抽出していく
  • プロダクト機能リリースの効果を素早く振り返り、学びを得て次のアクションにつなげる
という観点では、まだ改善の余地が多分にあるのが現状で、都度トライアンドエラーをしながら取り組んでいる段階です。
 
プロダクトチームとして、データからGo Fastに意思決定を日々当たり前のように行動できるようにするためには、データ分析スキルの強化やデータ分析基盤の整備などを推し進める必要があります。
 
少し話は飛躍しますが、過去データから精度の高い在庫や料金の予測モデルをつくることも事業グロース上は重要なテーマとなりますので、データアナリティクス、データサイエンス、データエンジニアリングとデータ文脈ではデータチームの立ち上げからリードしていただける方の採用から本腰を入れて取り組んでいきたいと考えています。
ご興味をお持ちの方はぜひご連絡いただけると嬉しいです!

3) 徹底的なオートメーション化

2023年のNEWTツアーラインナップ拡充の裏で、旅行代理店業務の自動化が大きく進みました。
例えば、1つのツアー商品を販売にするにあたり、取り扱うホテルとフライトそれぞれの仕入れ価格(しかも結構複雑な条件あり)と空室・空席情報を日ごとに設定し、出発時刻やフライト時間、部屋の設備情報など細かな情報やたくさんの写真も全て入稿し、ツアーごとに販売価格や販売期間などを設定し、ツアーの魅力を一言で伝えるタイトルをつけてキービジュアル写真をチョイスする・・・というわりと多くの作業が必要となります(大変だということを雰囲気で感じていただければと)。
1年前は、ツアー1件あたり154分かかっていたこのツアー入稿業務が、いまでは61分/件と、この一年で60%削減と大きく改善しました。
 
同様に、カスタマーの予約をすべて確定させ、NEWT上で確定旅程表を表示するまでの一連の手配業務で必要な工数は、1予約あたり79分かかっていたところが30分/件と、こちらもこの一年で62%削減と大きく短縮しました。
 
これらは海外旅行という複雑なドメインを紐解き、愚直に業務をゼロ化するための自動化機能を開発し続けた結果です。
しかし、当然ですが旅行代理店の業務を100%ソフトウェアで構築するには全く至っておりません。
  • ホテル、フライト、アクティビティや保険など、様々な取引先との商品情報、在庫・料金・予約のやり取りを自動連携すること
  • ツアータイトルやおすすめポイントなどのライティングを自動化し、ツアー生成を完全に自動化すること
  • 需要予測や在庫状況などにもとづき、プライシングを時々刻々と自動で最適化していくこと
など、将来的に流通額ベースで5〜10億円/人レベルの生産性を実現するべく、やるべきことは山積みな状況です。
 
事業の土台ができつつある今だからこそ、2024年は目先業務の効率化ではなく、将来のあるべき姿から逆算して本質的な業務ゼロ化のための自動化に注力し切りたいと考えています。

4) 中長期的に高い開発生産性を実現できる仕組みと組織づくり

このテーマこそが2024年私たちがもっとも意識して、これまでのマインドを切り替えて取り組まなければならないポイントです。
2023年の高生産性やプロダクトの進化は今いるメンバーの個人スキルやナレッジに依存している部分が大きく、チームとしての再現性がない領域が多いからです。
 
リモートワークを前提に、オンラインコミュニケーションでプロダクト開発が滞りなく進むようにドキュメントも一定残していますし、ワークフローも土台は定まっています。
しかし、開発標準も暗黙の了解となっているものが多々あり、歴史的経緯で直感的に理解しにくい仕様や設計になってしまっている箇所もあり、実態としてはシステム全体を一定把握していないと高い生産性が発揮しにくいのが実情です。
にもかかわらず、創業期からいるメンバー同士でも「あれ、日付を入れないときの料金表示ロジックって具体どういう仕様だったっけ?」など、仕様や設計に関する質問や確認のやりとりが増えてきており、プロダクト規模の拡大と複雑化とともに、完全に一人ひとりの認知負荷の限界を超えつつあると感じています。
 
2024年は、20人規模から30人規模のチームへ1.5倍程度スケールさせることを計画していますが、このような状態では、採用による組織拡大を適切な組織パフォーマンスにつなげることができません。
  • 新規ジョインメンバーがGo Fastにオンボーディングされ、本来のパフォーマンスを早期に発揮できるようにすること
  • 30〜50人のプロダクト開発組織になっても4〜8人程度の少人数チームでそれぞれのチームがアジリティ高く開発できるようにすること
  • 一人ひとりが「あたらしい旅行を、デザインする。」ために雑念なくカスタマーファーストな開発に没頭できるようにすること
などを目標に、個人依存したプロダクト開発スタイルから、相乗効果を生むチーム開発スタイルに進化していく必要があると考えています。
 
これは個を殺すという意味ではありません。一人ひとりの個性や強み、そして何よりもポテンシャルを最大限活かしつつ、チームとしての成果を中長期目線で最大化していくことを念頭にプロダクト開発組織を運営していく、という意味合いになります。
いわゆるプロダクトマネジメントやエンジニアリングマネジメントの領域において、先人達のナレッジやベストプラクティスを多分にLearn newして取り入れつつ、” 令和トラベルらしい ” チーム開発スタイルを追求していきたいと考えています。
 
また、システムアーキテクチャや開発環境という観点でも、誰もが生産性高く開発できる仕組みづくりが必要です。
  • ドメインとチーム構成を加味した適切な粒度でのシステムの疎結合化
  • システム安定稼働のためのインフラ構成の見直しやSRE業務の強化
  • コードレビューやテストなどのポリシーを定めた開発ガイドラインの整備
  • 開発、テストを阻害しないデプロイパイプラインやテスト環境の整備
  • API仕様ファーストな開発フローの整備
など、Developer eXperienceの向上にもしっかり取り組んでいきたいと考えています。

■ 最後に

正月ボケした頭を再起動させながらつらつらと書いてみましたが、激動の2023年以上に2024年はやりたいことであふれていることに気がついてしまいました笑
1年後に「1年前はまだあんなことを課題視していたのか、かわいらしいこと言ってたなあw」と笑って振り返れるように、2024年もチーム一丸となって全力で取り組んで行きたいと思います。

■ 最後の最後に

令和トラベルのプロダクトチームでは、エンジニアを全ポジション積極採用中です。
EMやCTO候補ポジションなども絶賛募集中です!
 
ぜひこの記事を読んで会社やプロダクトについて興味を持ってくれた方はご連絡お待ちしています!
フランクに話だけでも聞きたいという方は、カジュアル面談も実施できますので、お気軽にお声がけください。
 
さらに令和トラベルでは定期的にTech LT会などの勉強会やイベントを開催していく予定です。connpass にてメンバー登録して最新情報をお見逃しなく!
 
それでは次回のブログもお楽しみに!Have a nice trip!!