ぴったりな旅が見つかる旅行アプリへ 〜NEWTが挑んだ“品揃え改革“の舞台裏〜

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こんにちは!令和トラベル プロダクトUnit プロダクトマネージャーの田島です。 この記事は、『NEWT 3rd ANNIVERSARY CALENDAR』のDAY15として、書かせていただきます。
 

はじめに

旅行アプリ『NEWT(ニュート)』は、海外旅行アプリとして2022年にリリースされて以降、たくさんの方にご利用いただけるようになりました。
ですが、カスタマーのみなさんが『本当に行きたい』と思える旅行先やプランを、はじめから十分に揃えられているわけではなく伸びしろがある状態でした。
 
「えらびたい旅行先が見つからない」
「自分に合ったプランが少ない」
そんなカスタマーの皆さまの声を真摯に受けとめ、私たちはこの半年間、徹底的に “品揃え” と向き合ってきました。
 
この記事では、海外パッケージツアーの品揃えNo.1を目指すべく、どのように向き合い、取り組んできたかの舞台裏(特に直近半年の経緯)、そしてこれからNEWTを通してどんな旅行体験を届けていきたいのかについて、プロダクト視点で赤裸々にお話します。
 

私たちの抱えていた課題

NEWTが目指す世界観と現状の問題点

NEWTが目指している世界観を一言で言うと『自分にぴったりな旅行が、迷わず・楽しく・スマートに見つかる体験』です。
 
そのためには、まず、十分な “選択肢” があることが大前提。…なのですが、2024年初めの時点では、競合他社と比べて、正直まだまだ品揃えが足りていない状態でした。
  • 旅行先となる都市のカバー率が低い(一般的な旅行先が揃っていない)
  • 行きたい都市自体はあっても、えらべるホテルや航空会社の種類が少ない
  • 観光ツアー・食事・送迎など、現地オプションのラインナップが限られている
などなど。
こうした「えらべない」状態は、カスタマー体験に直結する課題であり、旅行という商材では致命的です。
 
さらに、選択肢の多さと同時に、“おトクさ” も旅を選ぶ上で重要な要素です。
NEWTでは、旅行代理店の業務をソフトウェアで自動化し、人的コストを最小限に抑えることで、よりリーズナブルな価格での旅行の提供を可能にする仕組みづくりにこだわっています。
しかし、仕組み作りに関しても、まだまだやり切れていない部分があるというのが実情です。
 

なぜ”品揃え”が足りないのか

主な要因は、大きく3つあります。

1. ホテル・フライトなどの仕入れ先が少ないこと

弊社が創業して間もないこともあり、仕入れ先であるパートナーの開拓はまだまだ白地がある状態です。(旅行業ではパートナーとの繋がりがとても重要)
 

2. パッケージツアー作成にかかる作業工数が多いこと

1つのパッケージツアーの作成にかかる作業工数が多いことにより、あらゆるツアー商品に対して、理想の数を作成し、品揃えを網羅するには時間が足りません。
パッケージツアーの構成要素は、フライト(航空券)・ホテル・オプション(観光や送迎など)の3つで、それぞれを組み合わせて販売可能な形にしていきます。
「ツアーのターゲットやコンセプトに合致している組み合わせか?」「スケジュールの観点で可能な組み合わせか?」など考慮すべき点は多く、さらに料金や在庫の計算、旅程表の作成、ツアーの魅力が伝わるようなライティング(ツアータイトル・ツアー概要などの文言作成)なども重なり、依然として手作業が多い状態なのです。
ゆえに品揃えを拡充するにも工数面で限界がありました。
 

3. 多様な商品構成や仕入れ形式に対応できるシステムが整っていないこと

NEWTで商品を販売するには、裏側にあるトラベルマネジメントシステムで造成機能があることが必須要件です。
しかし、海外パッケージツアーと一口にいっても1都市1ホテルに滞在するものから、複数都市・複数ホテルを巡るような「周遊ツアー」などバリエーションが豊かです。
少しでも早くカスタマーに商品を届けることを目指し、初期はまず、基本となる1都市1ホテルのツアーのみ対応していました。とはいえ商品が増えていくにつれ、複数の都市を巡る周遊ツアーや1都市複数ホテルに宿泊するツアーのニーズが増してきたものの、システムとして対応できていませんでした。
このうち、後者2点(作業効率とシステム対応)をプロダクトマネージャーとして改善することが、自分のミッションでもありました。
 

やってきたこと(一例)

ここからは、NEWTの品揃えを一気に拡充するために、プロダクトとしてどんなアプローチを取ってきたのかをご紹介します。

一括ツアー作成機能の実装

パッケージツアーの基本構成は、【フライト × ホテル】の組み合わせによって構成されています。そこに、場合によっては観光や送迎などのオプションが加わり、1つのパッケージになります。
さらに4日間、5日間、、というような日程パターンのバリエーションもあります。そして販売価格は、出発日ごとの仕入れコストや粗利率を加味して決定されます。
 
以前は、これらを一つ一つ、人の手で組み合わせてシステムに登録する必要がありました。当然ながら作業量が膨大で、限られた時間で作成できる商品数には限界がありました。
 
そこでトラベルマネジメントシステムに実装したのが、ツアーの一括作成機能です。
「このフライトとこのホテル、そしてこのオプション」というパーツの組み合わせさえ設定すれば、1ツアーずつ設定せずとも手作業ほぼゼロで何千もの商品をまとめて生成できる仕組みを構築しました。
これにより、ツアー商品の作成工数が大幅に削減され、特定の旅行先・日程に偏らない、幅広い商品を瞬時に提供することが可能になりました。
 

周遊ツアーの機能拡張

次のチャレンジは、複数都市に滞在する「周遊ツアー」への対応です。
周遊ツアーも、一見すると【フライト × ホテル × オプション】という構成要素で、1都市1ホテルのツアーと同じようにみえますが、
  • 都市間の移動手段(フライト or 鉄道など)
  • 各都市ごとのホテル組み合わせ
  • オプションの都市別適用
など、パーツ自体もパーツ間の組み合わせも、考慮すべきパターンが圧倒的に増えます。
 
ゆえに、1都市1ホテルツアーより造成工数の負荷が高かった一方、膨大なパターンをシステムロジックに落とし込むことや、在庫データ管理の複雑さがシステム化の大きな壁になり、ツアー造成の自動化が進まず…。
そのため、周遊の品揃え拡充もなかなか進まないという悪循環が生まれていました。しかし、1都市1ホテルのツアーも拡充してきた中で、周遊ツアーを販売したいニーズも高まってきており、機能改善・拡張と向き合うことになりました。
 
ここでは、特に表示ロジックの整理が難しかった旅程表の自動生成機能を例に挙げてお話します。
NEWTではツアーの詳細ページに、そのツアーの全体スケジュールがわかるような旅程表を表示しています。これは4日間、5日間、、といったツアーの日程パターンによっても内容が変わるのですが、1都市1ホテルのツアーも含め、NEWTローンチ当初は人手ですべて入稿作業を行っていました。
ツアー詳細ページの旅程表
ツアー詳細ページの旅程表
 
しかし、品揃えの拡充のボトルネック要因として述べたように、商品を増やしていくにはツアー作成業務の自動化が重要命題であり、旅程表の組み立てをロジックに落とし込んで自動生成できる機能を開発しました。
ここでネックだったのが、先に述べた周遊ツアーの旅程パターンの複雑さです。
 
例えば、1都市1ホテルのツアーであれば、ホテルのチェックイン / チェックアウトは旅程の中で各1回ずつです。しかし、2都市の周遊となると、それぞれ2回発生すると同時に、
1都市目のホテルのチェックアウト → 都市間移動 → 2都市目のホテルのチェックイン
という表示にする必要があります。これはまだ比較的シンプルで、
 
ここからさらに、
  • 1都市目のホテルをチェックアウトした後、送迎にのって空港へ向かい、2都市目へ移動する
  • 1都市目に滞在のあと、2都市目に立ち寄るがそこでは宿泊せず、3都市目に向かう
  • 日本から1都市目にフライトで到着して直後、2都市目へ移動してホテルチェックイン
  • 寝台列車にのって移動するため、都市間移動中に1泊する(ホテルには宿泊しない)
 
….といったパターンもあります。
 
ここでロジック定義を誤ると、正しくない旅程表をカスタマーに表示してしまうリスクがあるため、漏れのない考慮が必要不可欠でした。
ツアー企画チームのメンバーとも連携しながら、作りたい商品・旅程パターンをヒアリングし、それらをロジックに落とし込んだらどうなるのか、パターンによっては運用回避も考慮しつつ愚直に整理を進めました
 
旅程パターンと組み立てロジックの整理
旅程パターンと組み立てロジックの整理
 
周遊ツアーの機能拡張を推進するにあたり、ここでは旅程表の自動生成機能を一例にしましたが、他にも機能改善や、ホテルが事前に確定している周遊ツアーの造成機能拡張を行った結果、NEWTローンチから2024年末までは30本しか販売できていなかったヨーロッパの周遊ツアーが、2025年1月の1ヶ月だけでなんと約230本も追加、予約件数もYoY 370%の驚異の成長率をみせました🎉
 
社内Slack
社内Slack
 
実際に周遊ツアーの造成に携わっていたメンバーの知見なしでは成り立たなかったので、本当にチームプレイの結晶です。
 

在庫状況の精緻化と販売制御の最適化

ツアーの品揃えを広げる上で、意外にネックになっていたのが「オプションの在庫制御」でした。
例えば、人気のアクティビティは特定日程のみ催行、さらに不催行日が後から追加されるケースが存在します。
しかし、在庫管理のロジックを複雑にすればするほど検索時のパフォーマンスなどにも影響することもあり、以前のシステムではこのオプション催行日の設定が厳密に行えず、本来販売できる日程なのに販売ができないといった状況が生まれていました。
また、催行日が管理できないがゆえに暫定的に行っていた運用も煩雑さがあり、メンテナンスコストを考えてそもそも販売を控えていたケースもありました。
 
そこで、オプション催行日を精緻に管理できる機能を開発し、メンテナンス負荷をさげるとともに機会損失のない販売ができるように改善しました。
これにより、今まで「設定負荷が高かったため造成できなかったオプションつきツアー」も商品として提供できるようになり、“実質的な選択肢の幅” を大きく広げることができました。
 

結果どうなったか

このような取り組みを積み重ねることで、ツアー商品の作成工数も大幅に削減され効率が良い体制が整えるようになり、システムとして対応可能な商品カバレッジが大幅に増えました。
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その結果として、NEWTの品揃えはこの数年で劇的に拡大しました。
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これは「闇雲にツアー数を増やした」というより、“カスタマーに選ばれる商品” を意識して組み立ててきた結果だと感じています。
また、競合対比で品揃えがどれだけ充実しているかを示す”ヒートマップ”でも、カバレッジが明らかに改善されてきたことが確認できました。
 
2024/10時点のヒートマップ
2024/10時点のヒートマップ
2025/03時点のヒートマップ
2025/03時点のヒートマップ
 

苦労したこと/こだわったこと

品揃えを増やすという一見シンプルな目標にも、プロダクトの立場としては難しさと葛藤がたくさんありました。

個別最適化と汎用性のバランス

「品揃えを増やす」というのは、つまり商品パターンが爆発的に増えていくということを意味します。
都市数、宿泊数、オプション有無、日程パターン、価格帯…あらゆる軸の組み合わせが生まれる中で、それを全て機能でカバーしようとすれば、重厚長大なシステムになってしまうことは想像に容易いです。
一方で、基本的な機能だけでは「この商品は例外対応しないと販売できないけど、NEWTでは売れ筋商品なんだよな。。」というケースも当然あります。
このあたりはまさにトレードオフで、今この瞬間の課題をどう汎用的な解決に落とし込むかは、PMとしてずっと悩み続けたテーマでした(今も悩み続けている)。
 
意識していたのは、“未来に負債を残すかもしれない” ことを前提に、どこまでを一時的な実装と割り切るかという判断でした。
すべてを完璧に見通すことはできないからこそ、まずは目的に対して「一番小さく始めて、一番広げやすい形にしておく」ことを大切にしていました。これはトレードオフを迫られる中での、トレードオンを実現するための考え方でした。
 

優先順位付けのシンプルさ

もうひとつ意識していたのは、「何から手をつけるか」の優先順位の明確化です。
“品揃えを増やす” とひとことで言っても、改善ポイントは本当に無数にあります。だからこそ、まずは「競合とのギャップが大きいところ」「スケール期待値が大きいところ」をツアー企画チームのメンバーと話し優先度を決めていきました。
「いつかやるべきところではあるが喫緊度は低い」ものは敢えてしっかり見送ることもしてきました。
ものづくりをするPMとしては「全部やりたい」のが本音ですが、限られたリソースの中で “やらない判断” も必要でした。
 

今後の展望

ここまでで、ある程度「えらべる商品数」という観点では競合他社と比べても見劣りしないレベルまで来ることができました。これからは、「数を揃える」から「 ”NEWTらしい” 旅行体験を創る」フェーズへ、少しずつ軸足を移していきたいと考えています。
 
たとえば──
💡
  • ただの “旅行商品” ではなく、「自分だけの旅」と感じられる提案ができるか?
  • 在庫管理や造成ロジックにおいても、運用コストをかけずに多様性を保てるか?
  • 需要の兆しを素早く検知し、販売につなげる商品設計の”嗅覚”を育てられるか?
こうしたテーマを実現するために、今後はよりAIやデータ活用も視野に入れながら、カスタマーが「NEWTで探せば、きっと行きたい旅が見つかる」体験を磨いていきます。
また、マーケットの動きと連動して商品供給を自動的に最適化していくような「自律型造成モデル」にも挑戦していきたいと思っています。
もちろん裏側では、社内チームが迷わず業務できるような仕組みやツール整備も並行して進めていきます。
 

終わりに

旅行というプロダクトは、見た目以上に複雑で、取り扱う在庫や条件も非常に多様です。
そんな中で、「品揃えを拡充する仕組み」を考えながら、カスタマーが “えらびたくなる商品” を届けていくことには、本当に毎日悩まされます。
でもその分、うまくハマったときの達成感や手応えは大きくて、心からおもしろい。
 
難しい作業をいかに単純化して実装するか。プロダクトマネージャーとしての腕の見せ所であり、まさにAIなどの新しい技術の力も試されるところです。
もちろん、解くべき課題はまだまだ山ほどあります。
 
それぞれの課題が異なる軸を持っているからこそ、優先順位の見極めが最も大事な仕事であり、逆に言えばそこが事業のスケーラビリティを決めるキーファクターだとも感じています。
そしてそれをやり切ったとき、旅行業界に新しい風を吹かせられる。そんな挑戦のど真ん中に、自分がいられることが何より楽しいです。
 

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最後までお読みいただきありがとうございました!
明日、DAY16の『NEWT 3rd ANNIVERSARY CALENDAR』は、コミュニケーションUnit 森川が『大手エンタメ企業から旅行アプリ『NEWT(ニュート)』のSNS企画運営に転職した話』というテーマで、前職の経験や令和トラベルとの出会い、入社から4ヶ月でどのようなチャレンジをしてきたのか、スタートアップならではのスピード感や成長環境について、そしていまだからこそ感じる “令和トラベルで働く魅力” についてたっぷりとご紹介します。
次回の記事もお楽しみに!
 
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