
この記事は、「NEWT Product Advent Calendar 2025」Day8 および「プロダクトマネージャー Advent Calendar 2025」Day10 の記事となります。
「NEWT Product Advent Calendar 2025」8日目は、令和トラベル PMのkubocchiが、PM兼QAエンジニアの aoからバトンをもらい執筆します。ぜひ、最後までご覧ください!
こんにちは、旅行アプリ『NEWT(ニュート)』 プロダクトマネージャー(PM)のkubocchiです。
NEWTは2022年のリリース以降、旅行アプリとしての王道機能をメインに開発してきました。しかし、サービスが成長するにつれて「無数にある改善案の中から、いまどこにリソースを投下すべきか」という問いに向き合うフェーズになりました。
この記事では、NEWTの海外ツアー領域を例に、「データを用いて課題を定義し、施策の優先順位を決定するまでのプロセスと、そこから得た学び」を共有します。
サービス改善に関わる全ての方へ、ヒントとなれば幸いです。
NEWTにおける課題定義と優先順位設定の事例
NEWTは、カスタマー1人ひとりに最適な旅行体験を提供することを目指しています。はじめてNEWTに訪れてから予約完了までのカスタマージャーニーにおいて、予約率(CVR)の向上が今回のテーマでした。
そこで私たちは、データを起点に事実を積み上げながら、いま解くべき課題を定義し、その上で打ち手の優先順位を設定するアプローチを取りました。
以下、その手順を紹介します。
1. 全体像から「どこに課題があるのか」を見立てる
まず最初に全体像を把握するために、予約に至るまでの流れ(ファネル)を分析しました。ジャーニーに沿ってファネルを再設計することもできますが、画面の改善に繋げやすいため、まずは核となる動線からファネルを見ることで全体を把握しました。

その結果、「ツアー詳細ページ」から予約フォームへの遷移率が、他の箇所と比較して大幅に低いことがわかりました。
ここを最優先で取り組むべきボトルネックとして捉え、詳しく分析していくことにしました。
2. 「注力すべきポイント」を決める
遷移率が低い状況の解像度を上げるため、「詳細ページの閲覧回数」という軸で分析しました。その結果、カスタマーを大きく2つの層に分けることができました。
- なんとなく見ている閲覧数1〜2回のライト層
- 何度も閲覧していて、本気で検討している層
ここで重要なのは、集客施策を強化しても、その後の離脱を防げなければ予約数は伸びないという点です。いくら流入を増やしても予約に至らなければ、投資対効果は低くなります。
ディスカッションした上で、後半の水漏れを防ぐことが優先度が高いと判断し、より深く検討している「何度も閲覧していて、本気で検討している層」に注力することにしました。

3. 「真の課題」を特定する
「何度も閲覧していて、本気で検討している層」が予約フォームに至らない理由を深掘りするため、「予約に至ったカスタマー」と「至らなかったカスタマー」の行動を分析しました。
その結果、予約に至ったカスタマーには「一覧ページで『絞り込み』や『並び替え』を使いこなしている」という共通点が見つかりました。
カスタマーインタビューでも、「譲れない条件で絞り込み、予算内で妥協できる条件を探す」という比較検討プロセスが明らかになりました。

これらの発見から、「一覧ページで本当に欲しい商品に出会えていないため、離脱している」という課題が明らかになりました。
つまり、解決策は詳細ページの改善ではなく、その手前の一覧ページにて、欲しいツアーを正しく探せるようにするための検索体験の改善であり、そこに注力することにしました。
4. 「インパクト」と「不確実性」から優先順位を設定する
検索体験の改善には様々なアプローチがあります。
そこで、カスタマーの行動をより詳細に分析し、課題を細分化した上で、それぞれに対する改善案を洗い出しました。
その後、以下の3つの観点で各施策を評価し、優先順位を決定しました。
- 対象人数:その施策によって影響を受けるカスタマーの数
- 改善効果:CVRへのインパクトの大きさ
- 不確実性:仮説の確からしさ
ただし、実際の効果はやってみないとわかりません。そのため、実行段階では必ずA/Bテストで検証を行い、その学びを次の施策に反映させるサイクルを回します。
プロダクトマネージャーとして3つの学び
今回の課題定義と優先順位設定の事例を通じて、重要だと再認識した3つの学びをまとめます。
1. 「点」ではなく「文脈」を意識して分析すること
課題を正しく特定するには、数値が悪い箇所だけでなく、前後の文脈を読み解くことが不可欠です。
「詳細ページからの遷移率が低い」という数字だけを見ていれば、「詳細ページの情報を充実させる」といった局所的な改善に終始していたかもしれません。しかし、今回前後のジャーニーを踏まえて考察したことで、真の問題は詳細ページではなく、その手前の一覧ページにあることがわかりました。
学び:
特定の画面の数字だけを見るのではなく、前後の文脈も合わせて分析することで、真のボトルネックを見つけることができる
2. 数字を因数分解して、真の課題を特定すること
遷移率という全体感を示す数字だけを見ていても、何もわかりません。重要なのは、数字を構成する要素を可能な限り因数分解し、真の課題を特定することです。
今回は、詳細ページの閲覧回数というデータからカスタマーを2つのセグメントに分け、注力ポイントを決定できました。さらに「何度も閲覧していて、本気で検討している層」を細かく分析することで、真の課題が「一覧ページにおける検索体験」にあることを発見できました。
学び:
遷移率などの全体感を示す数字だけを分析するのではなく、可能な限り因数分解した上で分析することで、「真の課題」を特定できる
3. 「事実」と「不確実な部分」を切り分け、共通指標でインパクトを比較すること
どれだけ分析しても、すべての情報をデータで証明することはできません。だからこそ、「データで証明されている事実」と「推測に基づく部分」を明確に区別し、議論することが重要です。
また、データから「一覧ページの検索体験改善が最もインパクトが大きい」とわかっても、複数の打ち手を横並びで比較してはじめて、その正しさを検証できます。今回は「CVRがどれくらい向上するか」という共通指標で比較することで、納得感のある優先順位を設定できました。
学び:
「事実」と「不確実な部分」を切り分けることで建設的な議論が可能になり、共通指標で比較することで納得感のある優先順位設定ができたこと
さいごに
「データを用いて課題を定義し、施策の優先順位を決定するまでのプロセスと、そこから得た学び」について書かせていただきました。
表面的な数字を追うのではなく、仮説をたてることができるまで数字を分解し、構造を捉えて課題を定義していくプロセスこそが、プロダクト価値向上につながるのです。
この記事が、皆さんのプロダクトディスカバリーの一助になれば幸いです。
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