AI と一緒に Android → iOS 開発にチャレンジしたら iOS/Android チームが統合された半年間

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Kazuho Hosoi
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Dec 11, 2025
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💡
この記事は、NEWT Product Advent Calendar 2025」Day9 および「Android Advent Calendar 2025」Day11 の記事となります。
「NEWT Product Advent Calendar 2025」9日目は、令和トラベル アプリエンジニアのhossyが、PM kubocchiからバトンをもらい執筆。ぜひ、最後までご覧ください!

🌱 はじめに

こんにちは。令和トラベルで、旅行アプリ『NEWT(ニュート)』 のアプリエンジニアをしている hossy です。
令和トラベルでは AIのさまざまな活用を推進しており、篠塚の記事でも、新規プロジェクトで AI ファーストな開発手法が紹介されましたが、NEWTアプリについては、AI Coding で一定高速化しつつも、まだまだ泥臭い開発が続いています。
 
そんな中でも AI時代な開発に向けて、個人・アプリチームで、少しづつチャレンジしているので、その一部を紹介したいと思います。
💡
  • Androidアプリエンジニアの iOSアプリ開発への挑戦
  • iOS/Android チームの統合と、マルチスキル化に向けた体制づくり
  • 統合した結果、iOSのリリース頻度が倍増
  • クロスプラットフォーム化ではなく、ネイティブでいく技術的決断
 

👨‍💻 個人の挑戦 (Android → iOS)

2025年6月、iOSアプリエンジニアの一人が育休に、一人がBackendエンジニアへの転向する話があり、iOSアプリエンジニアが一人しかいない状況になりました。
 
そうなると、iOS/Androidそれぞれにメンバーをアサインする従来の体制では、1レーンでしか施策を回すことができず、NEWTアプリの成長が鈍化してしまうという課題がでてきたのです。
 
ちょうど自分としても、Androidアプリ開発でAI Codingで生産性が上がってきたタイミングでもあり、AIに伴走してもらえる今であれば、iOSアプリ開発にチャレンジしてもいいかなと思っていました。
組織的にも AI活用によって、マルチスキル化や染み出しが求められはじめており、色々な状況が噛み合い、AndroidとiOSアプリ開発を両立することになりました。
 

AI による伴走

SwiftとKotlinの言語的な類似性や、GraphQL/Apolloなど共通する技術があったとはいえ、iOSで採用している TCA (The Composable Architecture) や、iOSフレームワーク等、キャッチアップが必要な技術は多量です。
 
iOSメンバーに一定フォローしてもらいつつも、あまりコストをかけてもらえる状況ではなかったため、AI をフル活用して学習と実装を進めました。
 
従来であれば、あたらしいプラットフォームを学ぶためには、ペアプログラミングやコードレビューを通じて、メンターの工数と時間をかける必要がありましたが、AI Codingを活用することで、学習や相談をある程度一人で進めることができ、限られたリソースの中でも前に進めることができました。
 

半年後の成長と現実

半年が経過したいま、自分がどの程度「iOSアプリエンジニア」と言える状態になったかを振り返ると、「iOSアプリの機能開発もできる」というのが適切な表現だと思います。
できるようになったこと
  • 既存設計に沿った機能開発
  • 軽微なリファクタリング
  • バグ調査
  • リリース作業
まだ難しいこと
  • iOSフレームワークやSwiftUI、TCAの深いところの理解
  • iOSアプリらしい仕様やUIの理解
  • Tech Leadのような技術的な意思決定や、難易度の高い技術課題解決
現状、「iOSコーダー」に留まっており、少なくともiOSの機能開発速度がAndroidレベルになるまでは、マルチスキル化を進めていく必要がありますし、iOSの深い技術的なところもキャッチアップしていかないといけません。
 

🧬 チームの統合

個人としての挑戦と並行して、2025年10月にチーム体制の変更が実施されました。
これまで、iOS/Androidそれぞれのチームに分かれていた体制を、一つのネイティブアプリチームとして統合し、アプリエンジニアが両プラットフォームを開発するチームへと変更しました。

統合の背景

2025年10月には、アプリ開発で手を動かせるメンバーが、iOSアプリエンジニア1人 + Androidアプリエンジニア2人 (自身含む) の体制になるのが見えていました。
この状況では、回せる施策のレーン数が少なく、iOSアプリエンジニアの負荷が高まる懸念があり、それを解決するために、統合を進める決断をしました。
 
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🏗️ 統合チームの立ち上げ

チーム内の認識作り

統合を進めるにあたり、まず「iOS/Android統合とは何か」のチームでの認識を揃える必要がありました。そこで、ここ半年で目指すレベルを定義し、すり合わせを行いました。
 
両方できるようになりたいこと
まずは、小さい機能から一人で回してデリバリーできることや、差し込みで入るような作業をリソース状況に応じて分担できるような状態を目標にしています。
💡
  • 小〜中規模の機能開発を一人で、プロジェクトの進行〜実装〜リリースまで完遂できること
  • 実装難易度として、各プラットフォームやライブラリに強く依存しないが、仕様上複雑な画面の実装ができること
  • リリース作業や日々のルーティン作業
  • 仕様確認や調査(難しければ、PrimaryスキルメンバーにDispatchできること)
 
 
Primaryスキルのメンバーがメインでやること
目標が手広くなりすぎても中途半端になってしまうので、緊急度が高いことや専門性が高いことに関しては、これまでどおりPrimaryスキルの強みを活かして対応していくことにしました。
💡
  • インシデント対応やカスタマーからの問い合わせ対応 (緊急・重要性が高い対応)
  • 日々の技術的なキャッチアップ・改善
  • ライブラリアップデート、クラッシュレポートの確認
  • 登壇やブログなど技術ブランディング
 

キャッチアップ合宿

認識を合わせただけでは動けないため、1.5日ほどの開発合宿を実施し、それぞれのアーキテクチャ説明やペアプロを通じてキャッチアップしつつ、ライトに質問できる空気作りも行いました。
 

開発基盤の整備

Secondaryスキルのメンバーでも迷わずリリースまでの作業ができるよう、GitフローやCI/CDの統一といった開発基盤の整備も併せて行っています。
 

Slackチャンネル・メンションの統合

これまで、iOS/Androidで分かれていたSlackチャンネルやメンションもアプリという括りのものに統合しました。
他職種のメンバーからの問い合せ先を一本化して迷わなくする意図もありましたが、アプリエンジニアが、iOS/Androidに囚われず対応していこう!という気概の表明にもなっています。
 
 

🧪 統合したことによる変化

はやくキャッチアップして、アウトプットできるように

小さくてもいいので作って・デリバリーのサイクルを回して成功体験を積み重ねたい、というのは当然思うところでした。
 
そのために、例として、レビューの基準を意識的に変えました。
Primaryスキルのメンバーのレビューであれば、「ついでにリファクタリングしておこう」などのコメントをすることもありましたが、SecondaryスキルのメンバーにはそれをMustにせず、学習や作ることを優先してもらうようにしています。
それによって技術負債になるのであれば、それはPrimaryスキルのメンバーが後からリファクタリングするなどしてカバーしていこう、という気概です。
また、「相談や質問はどんどんしてほしい」という文化も徹底しています。
もちろん応える側は、コストを一定払うことになりますが、質問を受けることで、自領域の「当たり前」を再考するきっかけになり、だれが見ても分かりやすい設計やコードを意識するようになるなど、双方にとって学びの機会となっています。
 

iOS先行A/Bテスト戦略

統合により変化したこととして、iOS先行A/Bテスト戦略の確立があります。
施策に対してA/Bテストを実施することが増えてきた中で、カスタマー母数の多いiOSで先行リリースし、A/Bテストの結果が出て有効なものだけをAndroidに展開する、という戦略を取れるようになりました。
現在、大型機能やカスタマー価値が高い施策を除くグロース施策については、ほぼ全てiOS先行 A/Bテスト戦略で実践しています。
これにより、限られたリソースを効率的に使いながら、効果的な施策だけを両プラットフォームに展開できるようになりました。
 

iOSリリース頻度の倍化

チーム統合前までは、週1回のリリースを基本としていたため、月のリリース回数は 4回程度でしたが、チーム統合後の10月は10回・11月は8回と単純な回数だけ見ると倍になりました。(緊急の対応も多かったので若干盛り気味ではありますが)
 
要因としては、チーム統合+上記A/Bテスト戦略により、レーン数をiOSに全振りすることもできるようになったので、人数が少ない中でも複数の施策を並列して回すことができるようになったことが大きいと思っています。 従来のリリース頻度では、実装完了した施策のリリース待ちが発生する状況になり得たので、リリースサイクルを見直し、できたものからリリースして、早くA/Bの検証サイクルを回すということができています。
その分、Androidのリリース頻度は低下していますが、A/Bテストで効率的に施策の取捨選択ができるため、総合的なカスタマーへの価値提供は確実にプラスになってると考えています。
 
 

🛠️ 技術的戦略

チームの運用と併せて、以前から継続的に議題にあがるテーマだった、今後の技術的な方針についても議論を重ねました。
 

クロスプラットフォーム技術の導入の見送り

FlutterやKotlin Multiplatform (KMP) といったクロスプラットフォーム技術の導入も話題にあがることもありましたが、以下の理由を踏まえ、やはりネイティブでの開発は継続することにしました。
  • すでに一定の規模がある現在のアプリを、少人数のリソースでリプレイスするのはシンプルに体力が足りない
  • 「Data Layerなどのプラットフォームに依存しない箇所からKMP化してはどうか」という話もあったが、そういった定型的な実装はAI Codingが最も得意とする領域であり、実装コストはすでに限りなく低くなっているため、共通化によって生じる管理コストの方が高くなる懸念がある
 

iOSのリアーキテクチャの選択

NEWT iOSアプリは現在、TCAを採用しています。TCAは非常に優れた技術ではありますが、運用上、以下のような課題が見え始めていました。
  • iOS初学者がiOSフレームワーク + TCAの学習難易度が高く、開発効率が上がりづらい
    • iOSアプリエンジニアでも初見だとTCAに慣れるのに時間がかかる
  • Androidで採用しているMVVMとTCAに分かれていることで、実装都合でロジックに差異がでており、AIでの「1つのプロンプトから両OSのコードを生成する」「iOS/Android 間で相互にコード変換を行う」といったことが難しい
これらの課題をふまえ、iOSのアーキテクチャをTCAからAndroidの設計に寄せたMVVMにリアーキテクチャする決断をしました
 
色々な仕組みが用意されている TCAに依存できないため、MVVMに寄せるといっても、ベースとなるコードを設計することや置き換えていくコストも当然かかりますが、チームの統合も後押しして、プロジェクトを開始しています。
最終的には、同じプロンプトでまとめて実装できることをゴールにしていきたいです。
 
 

🍒 おわりに

AI Codingがあることで、従来なら躊躇していたクロスプラットフォーム開発への挑戦が現実的な選択肢になってきています。
 
私自身、10年以上Androidアプリエンジニアのキャリアがある中で、非常に重い腰をあげてiOS開発に挑戦し、半年間で多少なりとも開発ができるようになりました。
 
それがきっかけとなったかは定かではないですが、チームも統合されました。
まだまだ始まったばかりですし、これから難しいことも出てくるのかなと思いながらも、既存のiOSアプリエンジニアから「統合によるネガティブなことはない。いまこの体制になってなかったら詰んでたかも」という言葉ももらって、絶妙にタイミングが噛み合って、結果的に良い選択になったのではと思っています。
 
この記事が、同じようにチームのマルチスキル化を検討されている方々の参考になれば幸いです。
 
 

🎄 興味を持っていただけたら

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次回のNEWT Product Advent Calendar 2025Day10は、「Evolving NEWT’s TypeScript Backend for the AI-Driven Era」と題してシニアエンジニアのrodrigoが担当します。次のブログもお楽しみに!

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