【イベントレポート】AI×開発組織Summit に参加しました!

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Keisuke Yoshida
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Sep 9, 2025
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AI
組織開発
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こんにちは。令和トラベルのEMのyoshikeiです!
2025年9月2日に『AI×開発組織Summit』が開催されました。参加されたみなさま、カンファレンス運営に携わったみなさまお疲れさまでした。
 
今回はAI×開発組織Summitにおいて印象に残った内容や、当日の様子を交えてイベント内容をお伝えしたいと思います。

『AI × 開発組織 Summit』について

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カンファレンス概要

📝
AI×開発組織Summit とは?
—— AI×開発組織の未来に向き合う ——
近年のAI技術の飛躍的な進化により、世界中のテックリーダーは、開発プロセスや組織の抜本的な変革と日々向き合う必要性が増しています。
 
しかし、AIの導入、技術選定、さらには開発組織のあるべき姿については「正解」が見えない中、各社が手探りで取り組んでいるのが実情です。
開発生産性をいかに高めるか、エンジニアリングへの投資をどう判断するか、採用戦略や組織設計をどう描くかなど、テックリーダーの皆様には多角的な視点からの意思決定が求められています。
 
「AI × 開発組織 Summit」は、こうした課題に向き合う皆様が、AI時代における開発プロセスや組織のあり方、そして変革の方向性について議論を深め、新たな視点と実践的な知見を得る場を提供します。
※ AI×開発組織Summit (イベントサイト) より
 

タイムテーブル

当日はA~Cの合計3つのホールでセッションが実施され、同時にスポンサーブースの出展とスタンプラリーのミッション達成で挑戦できる巨大くじなどのコンテンツもありました。
▼ タイムテーブルの詳細はこちら
 

イベント当日の様子

メインボード
メインボード
セッション会場
セッション会場
スポンサーブース
スポンサーブース
 
「AI x 開発組織」という、これまでにないテーマを掲げて開催された今回のカンファレンスは、開始前から大きな注目を集めていました。当日は実際に多くの参加者が会場に集まり、最新の知見や事例を共有する場として非常に熱気にあふれていたのが印象的でした。
 
また、イベントの運営面も非常に充実しており、昼食のお弁当やドリンクの配布、さらには最後の懇親会までがすべて無料で提供されるなど、とても無料カンファレンスとは思えない規模感とクオリティでした。
食事や交流の場がしっかり設けられていたことで、参加者同士がリラックスして意見交換を行える雰囲気がつくられており、単なるセッション視聴の場を超えて「コミュニティ」としての一体感を体験できるイベントだったと思います。
 

印象に残ったセッション

#1 AI時代に非連続な成長を実現するエンジニアリング戦略|Sansan株式会社 大西 真央

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本セッションでは、AI時代における「非連続な成長」を実現するためのエンジニアリング戦略が紹介されました。
特に印象的だったのは、AI活用による「スマイルカーブ現象」という仮説です。AIがコード生成を担うことで実装の価値は相対的に低下し、その一方で「何を作るか」「なぜ作るのか」という上流工程や、データを活かした改善の重要性が急速に高まっています。
 
講演では、マネージャーが安定を担うのに対し、リーダーは未知の価値創造を牽引する存在であると明確に区別されていました。組織が「管理型」から「挑戦型」へと進化し、すべてのエンジニアがそれぞれの立場でリーダーシップを発揮することが、非連続な成長の推進力になるというメッセージは非常に説得力がありました。
 
また、Sansanが実践する「AIネイティブ組織」の構想も共有されました。AIを単なる効率化の道具ではなく、プロダクトや文化形成の中核に位置づける取り組みは、実際に開発期間を半減させた事例を伴って語られました。失敗も学びとして価値化する文化が、試行錯誤を可能にし、成果につながっている点が印象的です。
さらに、OKRを軸に事業戦略・AI活用・組織変革を統合する運営手法も紹介されました。中期計画を置かず、超短期と超長期を往復するアプローチは、変化の速い時代に適したモデルと感じます。
 
最も強く心に残ったのは、「コードを書くこと自体が価値ではなく、課題を定義し意味を与えることこそが人間にしかできない仕事」というメッセージです。AIと共創する未来において、エンジニアに求められる役割は大きく変わりつつあることを改めて実感しました。
 

Proposal

 

#2 サイボウズ×メルカリと考える、AI時代の組織戦略 ー サイロ化解消で事業貢献を最大化 | サイボウズ株式会社 佐藤 鉄平 / 株式会社メルカリ 木村 俊也 / ファインディ株式会社 佐藤 将高

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本セッションでは、組織拡大に伴い避けられない「サイロ化」の課題と、その解消に向けた取り組みが共有されました。AIを最大限に活用するためにも、組織の断絶をどう乗り越えるかが重要なテーマとして位置づけられていたのが印象的です。
 
サイボウズは、職能とプロダクトの断絶や横断チームとの情報共有不足といった課題に直面していました。その解決策として、日報や会議議題までオープンに共有し、社内テックイベントで部門横断の対話を促進。また、思い切って職能ラインを廃止し、プロダクトチーム主体の体制へと移行しました。新たな課題も生まれましたが、「問題があれば解決し続ける」という螺旋的な進化を重視する姿勢が強調されました。
 
一方、メルカリは多様な子会社・サービスを抱えるがゆえに、知識の属人化や優先順位の不一致が課題となっていました。これに対し、全社統一のエンジニアリングロードマップを策定し、ゴールデンパスによる技術標準化を推進。また、100名規模のAIタスクフォースを立ち上げ、異なる部門をシャッフルして協働させることで、暗黙知を形式知化しAIに活用する好循環を生み出しつつありました。
両社に共通していたのは、「変化への挑戦」を恐れない姿勢です。サイボウズは組織文化そのものを更新し続け、メルカリは厳しい議論を経ても標準化に踏み切る。こうした大胆な意思決定こそが、サイロ化を乗り越える原動力となっていました。
 
最も印象的だったのは、AIを導入するだけでなく、AIを媒介として組織の相互理解を深め、知識の形式知化を進めることが、事業貢献を最大化する鍵であるという点です。AI時代の競争力は技術だけでなく、組織の在り方そのものに左右されることを学びました。

Proposal

 

#3 AI時代に生き残るための開発組織戦略 ー いま求められる人材と投資の現在地 | 株式会社BuySell Technologies 今村 雅幸 / エムスリー株式会社 山崎 聡 / ファインディ株式会社 佐藤 将高

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本セッションでは、BuySell Technologiesの今村氏とエムスリーの山崎氏が、AI活用がもたらす組織変革と人材戦略について議論しました。両者に共通していたのは、生成AIの普及により「数から質へ」と開発組織のパラダイムが大きく変わりつつあるという認識です。
 
BuySell Technologiesは、内製のAI基盤「Buddy」を社員の半数以上が活用し、査定や顧客対応の効率化を推進。エムスリーはわずか100名規模のエンジニア組織で30以上の事業を支える少数精鋭体制を維持しつつ、DevinやCopilotなど多様なAIツールを全面導入しています。いずれも、AIを積極的に組み込むことで既存の人材リソースを最大限に引き出している点が印象的でした。
 
議論の中では、AIの進化がもたらす二つの大きな変化が浮き彫りになりました。第一に、トップエンジニアがAIを活用することで、従来以上の速度と品質で開発が進む一方、ジュニア層の育成が新たな課題となっていること。第二に、新卒世代は「LLMネイティブ」としてAIを自在に使いこなし、これまで一部の人材に限られていた「一軍」ポジションへの扉が広がっていることです。AIが優秀な家庭教師のように機能し、エンジニア全体の底上げを加速させている様子が共有されました。
 
また、チーム体制や投資戦略も再定義が進んでいます。少数精鋭の方向性は強まりつつも、マルチプロダクト戦略を進めるには依然として人材が必要であり、採用の在り方は企業によって二極化しています。エムスリーの山崎氏は「AIで個々の生産性が向上すればこそ、横展開を加速させるための人材投資が重要」と指摘していました。
特に印象的だったのは、テックリーダーに求められる姿勢です。AIを前提にキャッチアップする柔軟さを持ち、領域の壁を越えて「理想から逆算する」思考が求められると今村氏は述べました。山崎氏も「CTOやVPoEを目指すならAIをマスターすることが必須条件」と断言し、リーダー自らがAIを理解・実践する必要性を強調しました。
 
学びとして強く残ったのは、AIによってコーディングの効率が飛躍的に高まる中、ボトルネックはもはやコードではなく、プロダクトの課題定義や意思決定に移っているという点です。AI時代におけるエンジニアの真価は、技術力そのもの以上に「信頼され、任せられる存在」になれるかどうかにあると感じました。

Proposal

 
他にも開催期間中にたくさんのセッションが企画されていました。詳しくはこちらをご覧ください!
 

おわりに

今回のカンファレンスを通じて強く感じたのは、AI時代における開発組織の変革は「技術の進化」そのもの以上に、「組織としてどう適応し、活かすか」という観点が鍵になるという点です。
生成AIによる生産性向上はもはや前提であり、それをどう事業価値や文化の進化に結びつけるかが各社の実践から浮き彫りになっていました。
 
印象的だったのは、多くの企業が「サイロ化の解消」「少数精鋭とAIの協働」「非連続な成長を可能にするリーダーシップ」といったテーマに取り組んでいたことです。サイボウズのように組織構造を思い切って変えるアプローチもあれば、メルカリのように技術標準化と暗黙知の形式知化を進めるケースもありました。どちらにも共通していたのは、AIを導入すること自体が目的ではなく、AIを触媒として組織の境界を超え、知識と人材の力を最大化していく姿勢でした。
 
また、「LLMネイティブ世代」の新卒や、AIを使いこなすリーダー像といった議論も示唆に富んでいました。AIがエンジニアの学び方やキャリアパスそのものを変えつつある中で、マネージャーやリーダーに求められるのはタスクの管理ではなく、問いを立て、変化を受け止め、信頼を得る存在であることだと改めて感じました。
 
AIの進化は開発組織に新しい可能性と同時に複雑性をもたらしています。その複雑性をどう吸収し、事業貢献へつなげるかは、結局のところ「人と組織の力」にかかっています。本イベントで得た学びを、自身の組織マネジメントや実務に活かしていきたいと思います。
運営の皆さま、素晴らしい企画と運営を本当にありがとうございました。
 

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令和トラベルでは、このように技術的な知識や知見・成果を共有するLT会を毎月実施しています。発表テーマや令和トラベルに興味をお持ちいただいた方は、誰でも気軽に参加いただけます。

9月の『NEWT Tech Talk vo.16』は、”AI × Backend” がテーマ!

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それでは次回のブログもお楽しみに!Have a nice trip ✈️
 

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