AI時代だからこそ忘れたくない一次情報の大切さ

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Yujiro Shin
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Sep 19, 2025
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はじめに

こんにちは!令和トラベルにPMとして今年5月に入社した shin です!
 
私はこのAIが盛り上がりまくっている 2024年8月 ~ 2025年3月 まで、人生の夏休み的(?)に海外を旅したりしてすごしていました。そして、その後、就職活動経て令和トラベルにジョインしたため、知らぬ間にGoogle Meetにも高精度な日本語文字起こしが実装されていて、AIの進化に驚かされました。
実業務に入ってからも、AIは本当に便利で具体的には以下のように利用しています。
💡
  • 今まではエンジニアに聞くしかなかった仕様調査も、部分的には自分で確認できるようになった
  • SQLクエリの作成がCursorを用いることで格段に楽になった
  • 業界特有の専門知識を deep research で誰の手間も煩わせずに深く学べるようになった
 
一方で、令和トラベルで初めてのタスクに取り組む中で、一次情報に泥臭く向き合うことで感じたものがあったので、今回はそのことについて書いてみようと思います。
 

オンボーディングタスクとして取り組んだこと

私は業務ツール寄りのPMとしてアサインされたので、オンボーディングタスクとしては「ツアーQA」の改善に取り組みました。
 
「ツアーQA」というのは、私達が提供する旅行アプリ『NEWT(ニュート)』のツアーについて、実際に販売する前にツアーの内容に誤りや設定ミスがないかといったことを確認(QA)する作業を指します。より具体的には、ツアーの宿泊ホテルや交通手段の情報に誤りが無いかをレビューし、誤りがあればツアーの作成者に修正を依頼します。
 
ツアーQAはお客さまに表示されるツアーの内容が正しいことを確認する大事な作業です。それと同時に、多くの工数がかかってしまっている業務でもあります。
というのも令和トラベルでは業務のDXを積極的に推進しており、ツアーの作成も効率的に行っている一方、この業務は、NEWTで販売されるツアー1件1件について行う必要があるからです。
 
そのため、私はオンボーディングタスクとしてこのツアーQAの改善に取り組むことになりました。目標としては「ツアーQAの工数を削減すること」としました。
 

まずは定量のデータから

業務改善を考えるときは常に「現状の把握」から始めます。
具体的には、まずは「どの業務にどれくらいの工数がかかっているのか」などの定量的な全体感の把握から始めます。というのも、そもそもの割合の大きい課題を見極めないと得られる効果というのは限定されてしまうからです。
 
そして、その後または同時並行として、「業務理解」を進めます。
「どういった業務を、どういったツールを用いながら、どういう形で作業をしているか」を自分の目で見ていきます。このミクロとマクロの両方の理解が進むことで、より確からしく課題を見極めることができます
 
今回の場合は「そもそも誤りが発生しなければ修正も必要なく、確認も楽になる」ということで、具体的な誤りの指摘内容を分析することから始めていきました。
 
…が、これはもちろん簡単な話ではありません。
定量化といいつつ、最初から自分が見たい粒度でカテゴリ付けがされていることはほとんどありません。今回もその壁にはぶちあたりました。
まずは業務で利用する大量の「誤りの指摘情報」を定量化すべくAIを利用してみたものの、これがうまくいきませんでした。これは指摘内容自体が集計を意識されて書かれているものでなく、指摘者と修正者が理解できればよいため、必要最低限のことしか書かれていないからです。
 
そのため、かなりハイコンテキストな内容となっており、AIが次のアクションに繋げられるようなしっくりくるアウトプットを出すことはできませんでした。
 

じゃあ、どうする

じゃあ、どうするという話になるのですが、そこはもちろん、人力で見ます!
最新の指摘を500件ほど抽出したうえで、それをスプレッドシートに貼り付け、自分自身で分類していきます。ツアーQAを実際に行っている人にもヒアリングをしながら進めます。
 
そして、「どういう分類が今回の集計の目的に対してよいのだろうか」ということを考えつつ最初は作業をしていきます。一度当てをつけて分類を進めたあとに微修正をいれたり、特定の大きいカテゴリにはそのあとにサブカテゴリを付けたりしました。
 
実際に集計していった指摘内容。指摘内容カテゴリとサブカテゴリを自分で埋めていった。
実際に集計していった指摘内容。指摘内容カテゴリとサブカテゴリを自分で埋めていった。
 

得られたもの

今回は開発工数の関係で全てを効率化できたわけではありませんでしたが、改めて分類と定量化を行うことで、以下が達成されました。
💡
  • 効果がもはや薄くなっている確認項目をやめることができた
  • 高頻度で発生している間違いを定量ベースで把握し、ツアー作成者に注意喚起を促すことができた
  • 今後のポテンシャルとして、「どういったポイントで、何ができれば効率化できそうか」のイメージが具体化できた
 
また、それだけでなく実際に自ら手作業で分類をすることで、自分の中に「肌感」と呼べるものを持つことができるようになりました。その結果、以下のようなメリットがありました。
 
💡
  • どういった誤りが多いのかと、それが発生するであろう大まかな仮説をたてることができた
  • 実際に業務を行っているメンバーと、より目線のあった状態で会話ができるようになった
  • 「どういったソリューションで、何が解決しうるか」を、より具体でイメージしやすくなった
 
 
こういった一次情報に触れていく中で、自分の中でも
  • こういうものはAIでうまくできそう
  • AIでもうまくできるかもしれないけど、そのために必要なコンテキストとしては、XXが必要だろう
といったこともよりイメージしていきやすくなりました。
 

「AIの否定」ではなく「AIを自分のパートナーにするために」

AIが何でもすぐに良い感じのアウトプットをだしてくれる中、こういった地道な手作業をすることに焦りを感じることは正直あります。
自分のAIの使い方が悪いだけで、良いプロンプトを使ったり、良いツールを使えば、この1時間の作業が5分になるのではないかと焦りを感じることもあります。
 
もちろん、そういった焦りは健全なもので業務効率をあげていくことは非常に大事です。
とはいえ、自分自身がよくわかっていない状態で、なんでもAIが良い感じにしてくれるはずだという思い込みをしてしまうのも危険です。そのため、まずは自分で愚直に手を動かして、肌感を獲得していく。
このプロセスは非常に大事だと考えています。AIもコンテキストを獲得できなければアウトプットが良くならないように、人間もきちんとコンテキストを得ないと良いアウトプットは出せません
 
自分自身にコンテキストがない状態だと、AIが出したアウトプット以上のものをだすことが難しくなり、AIが自分の上限を規定してしまいます。
一方で、自分自身が高い解像度で情報を理解することで、AIはあなたのディスカッション相手として、強力なパートナーになり、あなたのアウトプットの上限をより高めるものとなります。
 
そのため、AIで要約された情報に容易にアクセスできるようになった今だからこそ、一次情報に触れる大事さというのを改めて感じました。
そして、こういった地道な取り組みの大切さを忘れないようにしていきたいです。
 

10月のイベント開催のお知らせ

令和トラベルでは、このように技術的な知識や知見・成果を共有するLT会を毎月実施しています。発表テーマや令和トラベルに興味をお持ちいただいた方は、誰でも気軽に参加いただけます。

【10/3(金)開催】生成AI時代のリアーキテクチャ

「生成AI時代のリアーキテクチャ。iCARE・Voicy・コインチェックの3社が語る、エンジニアの未来」というテーマで、令和トラベルは会場協賛としてイベントに参加します!
ご興味のある方は下記のconnpassページから詳細をご確認ください。
 

【10/17(金)開催】GopherCon Tour 2025 報告会

Gophers EXと令和トラベルがタッグを組んでお届けした、世界最大のGo言語カンファレンス『GopherCon』に参加するためのパッケージツアー「GopherCon Tour」。
現地での熱狂や学び、そして「GopherCon Tour 2025」ができるまでの舞台裏のすべてを語り尽くす報告会を開催します!
 
そのほか、毎月開催している技術発信イベントについては、connpass にてメンバー登録して最新情報をお見逃しなく!
 

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それでは次回のブログもお楽しみに!Have a nice trip ✈️

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