【イベントレポート】開発生産性 Conference 2025に参加しました!

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Keisuke Yoshida
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Jul 10, 2025
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開発生産性
組織開発
AI
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こんにちは。令和トラベルのEMのyoshikeiです!
2025年7月3日~4日の2日間に渡り「開発生産性Conference 2025」が開催されました。参加されたみなさま、カンファレンス運営に携わったみなさまお疲れさまでした。
 
今回は開発生産性Conference 2025において印象に残った内容や、当日の様子を交えてイベント内容をお伝えしたいと思います。

開発生産性Conference 2025について

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カンファレンス概要

📝
開発生産性Conference 2025 とは?
テクノロジーで生産性が変わる。 DXで産業が変わる。AIで未来が変わる。 この10年で必ず、世界は歴史的な変化を迎えます。
そして、ソフトウェアのつくり方も、数十年に一度の大変革が訪れようとしています。 エンジニアの仕事やエンジニア組織の在り方は、今後どうなっていくのか? 人口減少していく日本社会において競争力をつくっていくためには、何が突破口になるのか? キーワードは、今大きな注目集めている「開発生産性」です。
開発生産性Conferenceは、海外・日本の開発生産性に関する最新の知見を集め、 各企業のベストプラクティスや開発生産性向上への取り組みを通して、 新しい時代の開発のヒントを提供します。
※ 開発生産性Conference 2025 (イベントサイト) より

タイムテーブル

当日はA~Dの合計4つのホールでセッションが実施され、同時にスポンサーブースの出展やKent Beckさんや和田 卓人さんのサイン会、スタンプラリーのミッション達成で挑戦できる巨大くじなど多くの催し物が用意されていました。
 
▼ タイムテーブルの詳細はこちら

イベント当日の様子

メインボード
メインボード
フロアマップ
フロアマップ
セッション会場
セッション会場
スポンサーブース
スポンサーブース
2Daysで開催されたカンファレンスでしたが、連日多くの人で賑わっていました。また、お弁当やドリンクの配布など無料のカンファレンスとは思えないほど環境が整っており、快適にイベントを楽しむことができました。
Keynoteなど一部のセッションを除き、基本的には4つのホールで同時に複数セッションが開催されており、どのセッションを聞こうか迷いながら参加していました。

印象に残ったセッション

#1 Keynote: 開発生産性測定のトレードオフ 「グッドハートの法則」はもっと悲観的に捉えるべきだった | Kent Beck

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本セッションでは、ソフトウェア開発における生産性測定の難しさとリスク、そしてリーダーシップのあり方について深い示唆が共有されました。特に印象的だったのは、Goodhartの法則「指標が目標になると、それはもはや良い指標ではない」が開発現場でも頻繁に当てはまるという警鐘です。
たとえば、プルリクエスト数をKPIにすると、形式的なPRが乱立し、かえって品質や協力体制が損なわれてしまう。こうした「指標ドリブンな歪み」は、障害報告の隠蔽といった不健全な行動にもつながりかねません。
講演では、価値創出の流れを「Effort→Output→Outcome→Impact」と分解し、測定は可能な限り後工程(ビジネスインパクト)で行うべきだと提言されました。AIの活用についても、工数削減や育成面での期待はあるものの、過度な目標設定はシステムの歪みを招くリスクがあると注意が促されました。
最も印象に残ったメッセージは、「押しつける(Push)のではなく、引き出す(Pull)」リーダーシップの重要性。指標にとらわれず、開発者自身が気づき、自発的に価値を生み出せる環境づくりこそが、本質的な生産性向上につながると学びました。

Proposal

#2 ソフトウェアエンジニアリングの人類史 〜AI エージェント時代の知識創造企業〜 | 広木 大地

本セッションでは、ソフトウェアの進化を人類史の文脈で捉えながら、AIエージェント時代における知識創造と価値創出の在り方が語られました。技術の進歩は常に「偶発的複雑性」を解消してきた一方で、これからは「本質的複雑性」、つまり知識や創造性に関わる課題への挑戦が問われます。
AIが単なる効率化ツールにとどまらず、業務プロセス全体の自律化・創造支援へと進化する中で、真に問われるのは「どのように使うか」。AIチャットに頼るだけでは不十分で、専門家ボットやナレッジ統合型エージェントの設計・実装が生産性の鍵を握ると感じました。
また、技術による変化は雇用の喪失ではなく、スキル再編の機会として捉えるべきというメッセージも印象的でした。日本の文脈では、少子高齢化による労働力不足もあり、変化の圧力が相対的に弱く見える一方で、それゆえに「変わらないことへの不安」も存在します。
重要なのは、AIという新技術を外部要因として恐れるのではなく、自己の可能性を拡張する味方として捉え、能動的に使いこなしていく姿勢。セッションを通じて、変化を味方にし、AIを使いこなし走り続けることが、これからの時代を生き抜いていく上で改めて重要な局面であると感じさせられました。

Proposal

#3 コードのその先へ:開発者体験を活性化させる方法 | Kate Wardin

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本セッションでは、開発者の生産性を高める上で数値指標だけに頼ることの限界と、その先にある“人”に着目したアプローチが語られました。コード行数やチケット消化数といった従来のアウトプット中心の評価は、技術的負債やバーンアウトを引き起こす「生産性のパラドックス」を招くと指摘していました。持続可能な開発には、目に見えない要素「強固なコラボレーション」「効果的なコミュニケーションと連携」「集中時間の確保」「ツールとワークフローの見直し」「心理的安全性の担保」「継続的な学びによる成長と進歩」といった6つの要素が不可欠であると説きました。
特に印象的だったのは、心理的安全性の重要性です。安心して意見を述べられる文化が、チームの創造性や問題解決力を支える土台となっている点に共感を覚えました。また、リーダーは数値でチームを管理するのではなく、価値ある対話を重ね、開発者の障壁や摩擦を取り除く役割を担うべきとされており、リーダーシップの在り方にも学びがありました。
開発者体験はプロダクトの質と競争優位に直結する。改めてそう実感させられるセッションでした。

Proposal

#4 AI時代のソフトウェア開発を考える | 和田 卓人

本セッションでは、AIエージェントがコードを書くことが当たり前になった2025年現在、ソフトウェアエンジニアリングの在り方を問い直す内容が展開されました。
「プログラミングは終わったのか?」という問いに始まり、Vibe CodingやAIによる高速開発がもたらす恩恵と、その裏に潜む課題「技術的負債の早期蓄積」や「レビュー困難なコードの増加」などが鋭く指摘されました。
AIとの協業スタイルとして「伴走モード (対話的開発)」と「委託モード (自律的開発)」の二軸について紹介されました。状況に応じたモード選択が、今後のエンジニアのスキルとして不可欠になると感じました。
また、AIに成果を委ねるためには、「自動化 (Automation)」ではなく「自働化 (Autonomation)」という視点が求められ、テストや構成管理、観測性といった従来の開発基盤の重要性が再確認されました。
「AIは鏡であり、能力は委託できない」という言葉が印象に残りました。AIの活用には、開発・設計・学習すべての面で人間側の力量が問われるのです。
単なる効率化ではなく、より深い本質的なエンジニアリング力がこれまで以上に重要になることを実感するセッションでした。

Proposal

 
他にも開催期間中にたくさんのセッションが企画されていました。詳しくはこちらをご覧ください!

おわりに

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今回のカンファレンスを通じて、AIによる開発支援の進化はもちろんのこと、それに伴う組織マネジメントや開発文化の変革が不可避であることを強く感じました。マネジメントする立場として特に印象に残ったのは、技術やツールそのものよりも、それらをどう「組織の力」に転換するか、という観点で語られていた数々の事例です。
多くの企業が、ドキュメントをGitHubで管理し、コードと双方向に育てていく仕組みを取り入れている点が興味深く、コードレビューと同様に意思決定や設計の背景も扱う文化が徐々に根付き始めていると感じました。特に、ADR (Architectural Decision Records) を活用して組織内の意思決定を明示し、属人化を防ぐ取り組みは、チームを横断して仕事を進めるうえで大きなヒントになりました。こうしたドキュメント文化は、個々の判断の透明性を高めるだけでなく、新しく入ってきたメンバーへの学習支援にもつながり、持続可能なチーム運営に寄与するものだと感じました。
また、マネージャー自身の「効力感 (self-efficacy)」がチーム全体のエネルギーに直結するという話も心に残りました。マネジメントはしばしば「環境整備」や「調整役」として語られがちですが、それだけでなく、自らが判断し、意思を持って動く姿勢がチームに良い影響を与えるという指摘には大いに共感しました。
 
開発組織における生産性の議論では、どうしても定量的な指標に頼りたくなりますが、Goodhartの法則が示すように、指標が目的化すると歪みが生まれます。実際に、KPIによってチームメンバーが萎縮したり、無意識に「指標のための行動」が生まれてしまうという話には、多くのマネージャーが共感したのではないかと思います。指標を「健康診断」として使い、チームの文脈を丁寧に読み解きながら意思決定を支援していくアプローチの重要性を、改めて認識しました。
AIの進化により「開発の速度」が上がる一方で、「認知負荷の増大」や「技術的負債の早期蓄積」といった新たな課題も表面化しています。この変化の時代において、マネージャーの役割は、タスクの管理や評価ではなく、「問いを立て続けること」や「健全なシステムを維持すること」にシフトしているように感じます。組織にとって何が価値か、どこに複雑性があり、それをどう分散・吸収していくか。その答えをメンバーと共に模索していくことこそが、今後のマネジメントに求められる姿勢なのだと思いました。
 
非常に学びのある2日間でした。運営の方々、素敵なカンファレンスの企画、運営ありがとうございました!

【7月30日開催】4社合同イベントのお知らせ

令和トラベルでは、技術的な知識や知見・成果を共有するLT会を毎月実施しています。発表テーマや令和トラベルに興味をお持ちいただいた方は、誰でも気軽に参加いただけます。

テーマは ”開発における生成AI

今回は『開発における生成AIフル活用事例』と題し、DeNA社/スマートバンク社/カウシェ社/令和トラベルが集まり、toCプロダクトに強みを持つ4社が生成AIをどう活用し体験価値や開発競争力を高めているのかについてLT形式で発表を行います。 令和トラベルのオフィスにてオフライン・オンラインのハイブリット開催となりますので、ご興味のある方はぜひご参加ください!
そのほか、毎月開催している技術発信イベントについては、connpass にてメンバー登録して最新情報をお見逃しなく!

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それでは次回のブログもお楽しみに!Have a nice trip ✈️
 

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