【イベントレポート】DroidKaigi 2025に参加しました!

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Akiko Tomonaga
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android
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Android
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こんにちは。令和トラベルのAndroidエンジニアのともながyagi2です!
2025年9月10日~9月12日の3日間にわたり「DroidKaigi 2025」が開催されました。参加されたみなさま、カンファレンス運営に携わったみなさま、お疲れさまでした。
 
今回は DroidKaigi 2025 において印象に残ったセッションや当日の様子を交えて、イベント内容をお伝えしたいと思います。
 
▼ 2024年の参加レポートはこちら

DroidKaigiについて

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カンファレンス概要

📝
DroidKaigi とは?
DroidKaigiはエンジニアが主役の Androidカンファレンスです
Android技術情報の共有とコミュニケーションを目的に 2025年9月10日(水)〜12日(金)の3日間開催します
※ DroidKaigi 2025 (イベントサイト) より
 

タイムテーブル

DroidKaigi 2025 は、Workshop DayとConference Dayの2つに分かれて開催されました。
Day1のWorkshop Dayでは、JetBrainsの方々によるワークショップが行われ、Kotlin MultiplatformとCompose Multiplatformを活用し、コードを最大限に再利用しながら、高品質なクロスプラットフォームアプリを構築する方法を学ぶことができました。
Day2からDay3にかけてのConference Dayでは、Android Studioのバージョン名を冠した5つのホールでセッションが同時並行で実施されました。また、スポンサーブースの展示やスタンプラリー、ミートアップ、ネイル体験など、参加者が楽しめるさまざまな企画も用意されていました。
 
▼ タイムテーブルの詳細はこちら
 

イベント当日の様子

まずは会場の様子をともながからご紹介。会場には写真撮影もできる大きなパネルが登場。今年はサイバーなお祭りっぽいテイストでした。かっこいい!
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セッションは4~5部屋が同時並行で行われ、会期中に合計48セッションが開催されました。今年も2つの部屋で同時通訳が提供されており、英語のセッションも安心して楽しめました!
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スポンサーブースではスタンプラリーが開催され、セッションの合間にまわることができます。私もかわいいタオルとクリップをGET!
淹れたてのコーヒーの提供や、ネイル体験もあり楽しかったです。
 

Workshopのふり返り

続いて、初日のワークショップの様子をyagi2からお伝えします。
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DroidKaigi2025 でのWorkshopのテーマは、 ”Building cross-platform apps in Kotlin with Compose Multiplatform” 。
Kotlin Multiplatform と Compose Multiplatform を用いたクロスプラットフォームアプリの開発をおおよそ6時間かけて実践しました。
 
私自身、Kotlin Multiplatform には昔から興味があり、2019年にはこのトピックを題材として執筆し技術書典で出版するくらいには高い関心を持っていました。
当日は、世界での Kotlin Multiplatform 採用アプリの例や、直近の Kotlin Conf での Multiplatform のセッションの紹介なども挟まれ、プロダクトアプリケーションにおいても各社で採用するモチベーションが高い事、またプロダクト環境でも耐えうる開発体験、パフォーマンスを持ったフレームワークになっているなと感じました。
 
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加えてCompose Multiplatform は、 Android アプリ開発者は普段からスタンダードに使っているUI構築ツールキットである Jetpack Compose を Android 以外のプラットフォームでもマルチに用いることができる技術です。
こちらを触るのは私自身初めてでしたが、Kotlin Multiplatform と Jetpack Compose への理解が一定あるだけで、詰まることなく iOS や Desktop, Web 向けにUI構築やViewModelを用いたUIとロジックのバインディングを記述することができ、大変感動しました。
 
私は前職で、Flutter を用いたマルチプラットフォームのモバイルアプリ開発を3年強ほど行っておりましたが、React Native や Kotlin Multiplatform など、様々なマルチプラットフォームアプリ開発の選択肢が生まれているなと実感しました。
 
各社が解決したい組織課題の状況に対して取りうる選択肢が多く、適切な選択を行ってモバイルアプリケーションの開発が出来るようになっているのは、モバイルアプリエンジニアとしてもとても良い時代だなと Workshop を通じて感じることが出来ました。
 

印象に残ったセッション

一部ではありますが、ともなが・yagi2 がそれぞれで印象に残ったセッションをご紹介します!
まずは、yagi2が印象に残ったセッションから。

#1 共有と分離 ─ Compose Multiplatform “本番導入” の設計指針

 
Day1の Workshop Day の題材でもあった、UI構築のマルチプラットフォームフレームワークである Compose Multiplatform を実際に本番導入した際に大切だった設計指針に関するセッションでした。
Kotlin Multiplatform、Compose Multiplatform の採用理由として、今回題材になったアプリが飲食店のキッチン向けのアプリであり、プロダクト要件やキッチンで使われるタブレットはAndroid端末が多い状況があることから、技術選定がマッチしているというのが印象的でした。
 
設計指針では、UI、ロジックと分離した上で共有できるラインを見極めることが大切であるというのが大切な部分でした。
Kotlin の標準ライブラリで満たせるのか、Multiplatform に対応したOSSライブラリで実現可能なのかというフローチャートを用いて、要件から共有できる部分、分離しなければならない部分を整理した上で開発していたのが大変印象的でした。
 
また、セッション後には、実際に題材になったアプリが Stores社のスポンサーブースに展示されていたため触らせていただいたのですが、完全にネイティブで構築されたアプリとは区別が出来ないクオリティに仕上がっていました。
複雑な操作等も試させていただきましたが、パフォーマンス面でも違和感なく作られており、Compose Multiplatform のポテンシャルの高さを感じさせられました。

セッション概要

共有と分離 ─ Compose Multiplatform “本番導入” の設計指針
Kotlin Multiplatform (KMP) は、ネットワーク通信やドメインロジックを Android / iOS で共通化し、Compose Multiplatform (CMP) はそのうえ UI までを共通化します。両者を組み合わせれば、アプリの大部分を単一のコードベースで開発できることが大きな魅力です。 ところが実プロダクトへの導入に踏み出すと ・使いたいライブラリや SDK が KMP に非対応 ・OS 固有の API を直接呼びたい ・一部の画面をネイティブ UI でリッチに作り込みたい といった理由で、 ”共有できない領域” が必ず現れます。 本セッションでは、Android と iOS のエンジニアが共同登壇し、 ・プラットフォーム間でコードのどこを共有し、どこを分離するのか ・開発速度 × ユーザ体験 を両立させる設計・実装パターン を具体例とともに紹介します。実際に CMP を採用して半年弱で Android / iOS 両アプリをリリースしたプロダクトを題材に解説します。 予定しているトピック: ・共有の最前線  CMP + KMP 対応ライブラリの活用でどこまで共通化できるか ・分離のテクニック  ・Kotlin × Swift の DI 設計  ・KMP に非対応の SDK の安全な統合  ・CMP + ネイティブ UI のハイブリッド実装 ・両プラットフォーム視点で見る落とし穴と回避策 CMP 導入で必ずぶつかる ”共有できない領域” を見極め、必要に応じてコードを切り離すための指針をお伝えします。
共有と分離 ─ Compose Multiplatform “本番導入” の設計指針
 
 

#2 Performance for Conversion!分散トレーシングでボトルネックを特定せよ

 
このセッションでは、アプリのパフォーマンスがカスタマー体験やコンバージョン率に与える影響から、重要なパフォーマンス指標を分解し、Androidアプリ上でどうやって計測し収集するのかを紹介しています。
ほとんどのAndroidアプリでは、Firebase のSDKを導入し、半自動的に Firebase Performanceを用いたパフォーマンス測定がされています。しかし、APIが限定的であることや、トレースのサンプリング戦略をコントロールできないなどの制限があり、アプリケーションのどの部分がボトルネックになっていて、どう解決するべきかなどの戦略を立てづらいことが多いそうです。
 
これらの問題を解決するために、「分散トレーシング」という戦略を用いており、OpenTelemetry をベースとした Kotlin Multiplatform で取り扱うことができるライブラリを製作・導入するハウツーが紹介されました。
 
私自身、マイクロサービスのバックエンド開発していた頃は、複数のサービスやアプリケーション、データベースにまたがったトレースを収集し、パフォーマンスメトリクスの計測や SLI/SLO 等の指標をウォッチしていた経験がありますが、それをモバイルアプリに導入すればよいのでは?という発想に至ったことが無かったため、目から鱗のセッションでした。

セッション概要

Performance for Conversion! 分散トレーシングでボトルネックを特定せよ
Androidアプリにおいて、起動のもたつきやスクロールのカクつきは、ユーザーの離脱やCVR低下に直結する重大な課題です。しかし、プロジェクトが複雑になるにつれて、Firebase Performance Monitoring などの一般的な手法では、「なぜパフォーマンス指標が落ちているのか」「どこがボトルネックなのか」を突き止めるのが難しくなります。 たとえば、画面の初期状態が表示されるまでの時間(Time to First Frame)が遅い場合、Data層の処理実行や画像のデコードが遅延していると思われがちですが、実際には、TCPコネクションの確立やCDN経由でのDNS解決など、アプリの外側の非同期処理が真因であるケースもあります。また、I/Oの詰まりがパフォーマンスの不具合に繋がる場合があり、必ずしもネットワークそのものが原因とは限らないため、手元で再現できないボトルネックの調査は非常に困難です。 本セッションでは、バックエンドで広く使われている「分散トレーシング(Distributed Tracing)」の概要と、それをAndroidアプリでどのように活用できるかを解説します。また、pixivアプリが世界中の多様な環境のユーザーから愛用される中で、高品質を維持するために、アプリ内の処理とシステム処理の因果関係を明らかにし、パフォーマンスの問題を特定しやすくする手法や、モニタリングの工夫についても紹介します。 さらに、Firebase Performance や Systrace との違いを踏まえながら、OpenTelemetry を使ったトレーシングの設計・運用、モバイル向けにカスタマイズした SDK の実装例、そして実際の改善事例を交えて、「読み込みが遅い」の正体をつかむための技術と仕組みをわかりやすくお伝えします。 想定目次 - なぜ従来の手法ではパフォーマンスの原因を特定が難しいのか - 分散トレーシングとは? - Trace / Span / Context Propagation の基本概念 - OpenTelemetry とそのエコシステム - Firebase Performance, Systrace との比較 - Androidアプリ向け分散トレーシングの設計と導入 - 測定単位の粒度 - モバイル向け軽量SDKの設計と実装例 - データ収集とサンプリング - 可視化と運用 - Grafana等を用いた観測方法 - アラート設計のベストプラクティス - 課題解決フローと導入効果 - パフォーマンス問題解決フローの実例:観測→パフォーマンス指標の遅延→調査→改善→観測 - 考察と展望 - 導入前後での開発プロセスの変化 - 分散トレーシングの持つ将来的な可能性(AIと連携したモニタリングについてなど)
Performance for Conversion! 分散トレーシングでボトルネックを特定せよ
 
 
続いて、ともながの印象に残ったセッションです。

#3 はじめてのMaterial3 Expressive

 
このセッションでは、「Material 3 Expressive」の概要に加え、実装例やプロダクトに導入する際に考慮すべき観点が紹介されていました。
Material 3 Expressive といえば、特徴的な Wavy なアニメーションが印象的で、第一印象は「かわいい」だったのですが、その表現の強さから自分たちのアプリには適さないのではと感じ、あまり積極的に調べるまでには至っていませんでした。
発表の中でも「既存のデザインシステムとの親和性」という観点が取り上げられており、共感できる部分がありました。
 
セッションを通して、派手な表現を抑えつつも柔軟に取り入れられることがわかり、また、紹介されていた Button Group や Split Button などを使うことで、新機能が拡充され、見やすさと機能性のバランスが課題になりつつある私たちのアプリにも有効的に活用できるのではと感じました。
 
また、単なる表現の強化にとどまらず、アクセシビリティ改善につながる点も重要だと思いました。「アイトラッキングの検証結果として、Material 3 Expressive では、主要なUIを見つける速度が最大4倍になった」という紹介は、大きな納得感がありました。
一方で、クロスプラットフォームでの体験差や文脈を考慮しないデザインのリスクにはやはり注意が必要で、導入には工夫が求められると感じました。とはいえ、工夫次第で私たちのアプリにも取り入れられそうだと感じられ、とてもワクワクした気持ちになりました!

セッション概要

はじめてのMaterial3 Expressive
2025年5月にGoogleは「Material3 Expressive」を発表しました。 Material3 Expressiveは、これまでのMaterial Designとは異なる、より感情に訴える表現力豊かなUIを目指すデザインスタイルです。 曲線的な形状、大胆なモーション、新たなカラーシステムなど、ビジュアルのアップデートは魅力的ですが、 「プロダクトに導入するのは難しそう」と不安を感じる人も多いのではないでしょうか。 本セッションでは、Material3 Expressiveの背景や思想を紹介しつつ、 Jetpack Composeで使えるコンポーネントの実装例を通して、 UIがどのように変わるかを比較します。 さらに、様々なアプリケーションをMaterial3 Expressiveで実装し、 どのようなユースケースに向いているのかを検証します。 Googleのリサーチ結果や自身の検証結果を踏まえ、 Material3 Expressiveの導入可否を判断するための観点やチーム内での議論ポイントも整理して紹介します。 このセッションを通じて、「Material3 Expressive、ちょっと試してみようかな」と思えるきっかけを提供できればと思います。 具体的なセッション内容は以下を予定しています。 - Material3 Expressiveとは Material3 Expressiveとは何か、どのようなリサーチがされてデザインされたのかなど、 Material3 Expressiveに関するバックグラウンドについて説明します。 - Material3 ExpressiveのComponent一覧 Material3 ExpressiveでアップデートされたComponentを、実装コードと一緒に紹介します。 - Material3とMaterial3 Expressiveの比較 同じUIをMaterial3とMaterial3 Expressiveを使って実装し、 体験や印象がどのように変化するかを比較します。 - Material3 Expressiveの適したユースケース Expressiveが機能する例・機能しない例を、様々なジャンルのアプリを作って比較します。 - Expressiveを導入するための判断軸 チームで「Expressiveを採用する・しない」を議論するための観点について述べます。
はじめてのMaterial3 Expressive
 
 

#4 スマホ新法って何?12月施行?アプリビジネスに影響あるの?

こちらは「スマホソフトウェア競争促進法(スマホ新法)」の解説セッションです。公正取引委員会の現役担当者から直接話を聞ける貴重な機会ということもあり、会場はほとんど満席。私は後日アーカイブ動画で視聴しました。
 
スマホ新法は、Apple や Google などの巨大プラットフォーマーが提供する OS・アプリストア・ブラウザ・検索エンジン を対象に、競争を促進しつつ、利用者の安全・安心を守ることを目的とした法律で、2025年12月に全面施行されます。
 
アプリストアの手数料や決済手段の自由化、Web課金の容認、第三者アプリストアの登場、OS機能の開放、ブラウザや検索エンジンの選択肢拡大など、アプリ開発者に非常に気になる内容が多く盛り込まれていました。
 
個人的には、OS機能の利用可能性の向上についての内容が印象的でした。
12月の施行に向けて、どの機能を実際に開放してゆくかはまだ議論中とのことですが、例として通信機能、音声入力、NFC、位置情報、バックグラウンドでの動作、将来的なOSレベルのAIなどが挙げられ、『NEWT(ニュート)』のような旅行アプリにとっても、もしこれらが柔軟に使えるようになれば、現地での案内やチェックイン体験の向上など、これまでにない “あたらしい旅行体験” を提供できるかもしれません。夢が膨らみますね!

セッション概要

 
他にも開催期間中にたくさんのセッションが企画されていました。公式サイトにはアーカイブ動画も上がっているので、ぜひご覧ください
 

おわりに

「DroidKaigi 2025」は3日間にわたり、ワークショップやセッション発表など盛りだくさんのコンテンツで、充実した時間を過ごせました。
Androidやモバイルエンジニアが一堂に会し、知識のインプットだけでなく、交流することもできてとても刺激になりました。全ては紹介しきれませんでしたが、セッションの中にはAIやKMPといった最新トピックも多く、モバイルアプリ開発やITのトレンドを知る良い機会になりました。
運営してくださったみなさん、参加されたみなさん、本当にお疲れさまでした!
 

10月のイベント開催のお知らせ

令和トラベルでは、このように技術的な知識や知見・成果を共有するLT会を毎月実施しています。発表テーマや令和トラベルに興味をお持ちいただいた方は、誰でも気軽に参加いただけます。

【10/21(火)開催!】After iOSDC & DroidKaigi 2025|Mobile LT Night

今年も、iOSDC Japan 2025 / DroidKaigi 2025 のアフターイベントを開催予定です!
アンドパッド社・タイミー社・ココナラ社・令和トラベルの4社合同で「After iOSDC & DroidKaigi 2025 | Mobile LT Night 」と題して、スポンサー企業として参画した大規模イベントを振り返りつつ、モバイルアプリ開発に関する知見を共有しあえるコンテンツをご用意しています。
 
そのほか、毎月開催している技術発信イベントについては、connpass にてメンバー登録して最新情報をお見逃しなく!
 

令和トラベルでは一緒に働く仲間を募集しています

この記事を読んで会社やプロダクトについて興味を持ってくれた方は、ぜひご連絡お待ちしています!お気軽にお問い合わせください!
フランクに話だけでも聞きたいという方は、カジュアル面談も実施できますので、お気軽にお声がけください。
 
 
それでは次回のブログもお楽しみに!Have a nice trip ✈️
 

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