エンジニアリングカルチャーを共通言語として育てるための取り組み

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Yusuke Karakita
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Jul 29, 2025
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組織開発
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こんにちは。Backendエンジニアの @ykarakita です。
普段はプロダクト開発を行う傍ら、開発組織の課題を組織横断で検討・改善し、開発組織の成果を最大化することを目指す「Developer Success」というチームのメンバーとしても活動しています。
このブログでは「エンジニアリングカルチャーが共通言語として浸透していない」という課題に対する施策の一つとして「行動指針(Good / Not Good)」を作成した話と、作成するうえで工夫したポイントなどをお伝えします。
 

令和トラベルにおける「エンジニアリングカルチャー」

本題に入る前に令和トラベルのエンジニアリングカルチャーの紹介とそれがどのような位置づけのものなのかを説明します。エンジニアリングカルチャーは以下の3つで構成されています。
https://speakerdeck.com/reiwatravel_0405/20241106-company-deck-for-engineers?slide=27
 
これらは令和トラベルの開発組織のメンバー(エンジニア、PM、デザイナー、QA)がこれまで大事にしてきたこと、そしてこれからも大事にしていきたいことを言語化したもので2024年9月に策定されました。
会社によってはバリューと呼ぶこともあると思います。本記事でも必要に応じて、バリューという言葉と置き換えて読んでいただいて構いません。
 

カルチャーはあるが ”聞こえてこない” というギャップ

私はカルチャーが策定された後に入社したのですが、少し経ってからある違和感を持ち始めました。それは「メンバー全員、カルチャーを体現していないわけではなさそうなものの、カルチャーのワードを会話の中で聞くことがほとんどない」というものでした。
 
ところで「カルチャーが浸透している」というのはどういう状態でしょうか。
私の認識では、日々の会話の中で自然とカルチャーに関連するワードが出てくる、さらに何かを判断する際や意思決定に迷った際にはカルチャーを指針として向かう方向を合意できている状態だと思っています。
それを踏まえると、令和トラベルのカルチャーはまだ ”浸透している” とは言えない状態でした。
私の前職は比較的カルチャー(バリューと呼んでいました)が自然に会話に出てくるような会社で、その意味で “浸透している” と感じていました。だからこそ、ギャップを強く感じたのかもしれません。
 

納得の浸透していない事情

その違和感について気になったので、カルチャーを検討したチームのメンバーに話を聞いてみました。すると、以下のような事情が見えてきました。
  • そもそも私が入社する数ヶ月前に策定されたばかりのもので、まだ浸透させるうえで十分な時間が経っていなかった
  • 令和トラベルの開発組織におけるカルチャーは、策定時点の組織のスナップショットを取ったもので、以前からいたメンバーにとっては当時の状態に名前が付いただけだったため、特に意識してカルチャーを体現するマインドを持つ必要がなかった
  • 策定後もしばらくは何もせずとも全体が体現できている状態を保てていたため、あえて浸透の施策を打つ必要がなかった
 
つまり、「共通言語」としてのカルチャーはまだ組織に根付いていない、しかし行動は自然と体現されている。これが、当時の令和トラベルのカルチャー浸透における “現在地” でした。
 
自然と体現されていたからこそ、「共通言語化する」ことの必要性はあまり高くないと認識されていたということです。
しかし、組織拡大に伴い、新たに入社するメンバーも増えていく中で、カルチャーを “維持し続ける” ことの難易度は上がっていきます。これからの成長フェーズにおいてこそ、カルチャーを組織の共通言語として定着させる必要がある。
そんな課題意識のもと、Developer Successチームが発足されました。
 

現状を把握するためのヒアリング

まずは実態を把握するために、メンバーに対してカルチャーに関する認知や理解、体現する動きができているかを確認するアンケートを実施しました。
その結果、以下のような声が少なからずあり、カルチャーに対する温度感にはメンバー間で大きな差があることが分かりました。
💡
  • そもそもカルチャーというものがあることを知らなかった
  • 日頃カルチャーを意識するタイミングがない
  • このアンケートで初めてカルチャーを知った
 
このアンケートを通じて、(当たり前かもしれませんが)カルチャーを作っただけで自然と組織に浸透していくことはないということを改めて実感しました。
 
実際、メンバーがカルチャーに触れる機会は限られており、主にAll Handsや入社時のオンボーディングにとどまっていました。浸透を進めていくには、継続的な働きかけや仕組みづくりが必要です。
こうした課題感を踏まえ、Developer Successチームでは「どうすればカルチャーをより自然に、そして日常業務の中で意識しやすくなるのか?」を検討し、具体的な取り組みに着手しました。
 

TRY その1: 月次アンケートでカルチャーに照らし合わせた行動の振り返り

カルチャーを思い出す機会がない、という課題に対してはカルチャーを思い出すためのタッチポイントを増やす必要があると考え、月に一度、自身の行動をカルチャーに照らし合わせて振り返るアンケートに答えてもらうという取り組みにTRYし始めました。
月次で振り返りのタイミングを設けたことで、早速カルチャーに対する意識が変化している傾向が見られました。たとえば、初回のアンケートでは「カルチャーを知らなかった」という回答もありましたが、数回の実施後にはそのような回答は見られなくなりました。
 

TRY その2: 行動指針(Good / Not Good)で解像度を上げる

定期的に振り返る機会を設けることでタッチポイントを増やすことはできたものの、そもそも「どう動けばカルチャーを体現したことになるのか?」という解像度が低く、さらにその基準に関する共通認識も組織内に欠けていました。
これではカルチャーに基づいた意思決定や合意形成は困難でしょう。
 
そこで個々のカルチャーに対する解像度を高め、組織で認識を共有するために「エンジニアリングカルチャー行動指針(Good / Not Good)」というドキュメントを作成しました。このドキュメントにはそれぞれのカルチャーに対して、日常業務に落とし込めるレベルで「こういう動きがGood / Not Good」という例がリストアップされています。
 
以下はそのドキュメントの一部を抜粋したものです。
notion image
 
このドキュメントは組織が以下の状態に近づくことを目指して作成しました。
💡
  • 組織の中に「これはいい動き、よくない動き」という共通認識ができあがり、それによりカルチャーに則した行動を取りやすくなる
  • 判断にブレが少なくなり結果的に意思決定スピードが上がる
  • メンバーの間でエンジニアリングカルチャーを軸としたフィードバックが日常的に行われる
 
カルチャーをメンバー自ら咀嚼し解釈することも大切ですが、抽象度の高いカルチャーの文章を読み解き行動につなげるというのはなかなかハードルが高いことです。
まずはトップダウンの形でカルチャーの解釈を提示することで、「このGood例を自身の業務に当てはめるとつまりこういうこと?」といった議論を生み出し、再解釈・血肉化されていく、そんな “呼び水” としてこのドキュメントが活用されることを期待して作りました。
 

ドキュメント作成で工夫したこと

最後にこのドキュメントを作成する際に工夫したポイントを紹介します。

具体と抽象のバランス

具体的すぎると特定のケースや職種にしか当てはまらず応用が効かなくなり、逆に抽象的すぎると動きのイメージができず解像度を上げるという目的を満たせない、という感じで絶妙にいい落とし所を探りながら作成しました。

サクッと読める文量に

作成しているといろいろな状況が頭に浮かびあれもこれもと入れたくなりますが、文量が多いと読む気がなくなってしまうので些細なことですが文量は最低限に絞ることを意識しました。
理想としてGood / Not Goodそれぞれ3つずつくらいがちょうどいい感覚ですが、それでも今回ひとつのカルチャーにいくつかの価値観を包含しているものはGoodの例だけで6個になったものもありました。

思い出しやすいタイトルに

これも些細なことですが、見たいときにすぐにたどり着けるというのは大事なことなので、Notionで「good」などのキーワード検索をした際にすぐヒットするよう、タイトルにも意図的に「Good / Not Good」を含めました。
 

おわりに

カルチャーも、今回ご紹介した「行動指針(Good / Not Good)」も、作って終わりではありません。これをきっかけに、メンバー同士が日々の行動をカルチャーと照らし合わせて振り返ったり、フィードバックを送り合える土壌を作り上げていきたいと思っています。
また、今回の行動指針は完成形ではなく、あくまでたたき台です。業務での気づきや対話を通じて継続的にアップデートを重ね、抽象的なカルチャーを具体的な行動に落とし込む。そんな循環をチーム全体で育てていけたらと考えています。
この記事が、「カルチャーをどう浸透させ、日々の行動に落とし込んでいくか?」に向き合う他のチーム・組織の方々にとっても、何かのヒントになれば幸いです。
 

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