2022年4月に海外旅行予約アプリ『NEWT(ニュート)』をリリースしてから1年。令和トラベルは開発体制を刷新し、アプリチームとウェブチームに分かれてプロダクト開発をしていくことになりました。
新たな開発体制になったということで、今回はそれぞれのチームでエンジニアリングマネージャー(EM)を務める、吉田圭佑(yoshikei)と櫻井みづき(miisan)が対談しました。
この記事に登場する人
- 吉田圭佑(よしだ・けいすけ/yoshikei)
新卒でソフトバンク株式会社の社内ベンチャーAgoopに入社。モバイルエンジニアとしてiOS/Androidアプリの企画から設計、開発、運用までプロダクト開発の一通りのフローを経験。R&DやSDKプロジェクトのプロジェクトマネージャーも兼任。その後、STORES 株式会社にエンジニアリングマネージャー兼モバイルエンジニアとして参画。予約事業の1人目モバイルエンジニアとして開発チームの立ち上げと既存iOS/Androidアプリのフルリニューアルを担当。2023年3月より株式会社令和トラベルのNEWT App Unitのマネージャー兼iOSエンジニア。
- 櫻井みづき(さくらい・みづき/miisan)/Twitter
新卒で ERP パッケージの開発・QA を担当した後、2018年よりメルペイにQAエンジニアとして参画。Lead QA Engineerとしてメルペイコアローンチに携わった後、Engineering ManagerとしてQAチームを牽引する。現在は、『NEWT(ニュート)』を運営している令和トラベルの1人目QA Engineerとして、QA組織の立ち上げと品質管理を行なう傍ら、NEWT Web Unitのマネージャー他、D&I推進活動やエンジニア広報など多岐にわたって奮闘中。
ベンチャー企業2社を経て決めた「令和トラベル」でのキャリア
櫻井:改めて今日はよろしくお願いします!yoshikeiさんのこれまでのキャリアについて、きちんと聞いたことがなかった気がするので、改めてこれまでのキャリアを教えてください。
吉田:自分は学生の頃から「プロダクトをつくりたい」「自分が深く関わったプロダクトで世の中を良くしたい」という想いがあり、起業に近いことをやっていたんです。
大学を卒業するタイミングで起業するか、就職するかの2択でキャリアを考えた結果、大企業のリソースを活用しながら、ベンチャーでの経験が積めることにファーストキャリアとして魅力を感じ、最終的には就職する道を選びました。
新卒で入社したのが、ソフトバンクの社内ベンチャーとして立ち上がった、位置情報を専門としたビッグデータの収集・解析・生成などを手がけるAgoop(アグープ)という会社です。Agoopでは主にモバイルエンジニアとして3年ほど働き、その過程でプロジェクトマネジメントの仕事にも携わらせてもらいました。
プロジェクトマネジメントの仕事もする中で、少しずつそのスキルを伸ばしていきたいと思うとともに、マネージャーというキャリアの方向性も見えてきました。「技術的にももっとスキルの幅を広げて、レベルアップしていきたい」という思いが強くなり、3年働いたAgoopを退職し、商売をサポートするサービス群を展開するSTORES(ストアーズ)に転職しました。
STORESでは主に予約システムに関するサービスに関わっていました。自分が入社したタイミングで、すでに予約システムに関するモバイルアプリは存在していたのですが、当時は専任のモバイルエンジニアがおらず、バックエンドエンジニアがメンテナンスを対応するという体制になっていました。ちょうどSTORESはネットショップの作成から決済、POSレジ、予約システムなど商売をまるっとサポートするサービスを複数展開するようになっていて、各サービスの連携観点でアプリの重要性がすごく高まっていました。
そうした背景もあり、予約システムはそれまでウェブがメインでしたが、アプリを再始動させようということで、アプリ開発チームの立ち上げと合計4つのアプリのフルリニューアルに取り組みました。1年半ほどでチームも立ち上がり、アプリのリニューアルもできたタイミングで次のキャリアを考えたときに、プロパートナー(業務委託)として関わっていた令和トラベルに正式にジョインすることを決めました。
櫻井:プロパートナーという関わり方ではなく、フルタイムのメンバーとして令和トラベルに関わろうと思った決め手は何だったんですか?
吉田:もともと令和トラベルのこと自体は知っていました。1社目から2社目の転職では大企業の社内ベンチャーからベンチャー企業に挑戦する、なおかつマネジメントの幅、技術の幅を広げることを目的に転職先を決めました。令和トラベルのこと自体は認知していたのですが、タイミングが合わず2社目の候補としては見れていませんでした。
ただ、STORESで働き始めてから半年ほど経ったタイミングで、「副業で働いてみないですか?」と連絡をもらったんです。もともと令和トラベルのことは気になっていたので、プロパートナーとして関わり始めました。
自分が関わり始めたのがちょうどNEWTがリリースされたくらいのタイミングだったこともあり、社内の雰囲気や開発のスピード感がすごく魅力的だったんです。一緒に働くメンバーも良い人たちばかりで、一緒にプロダクトを成長させたい、ここでプロダクト開発を経験できたら自分自身のキャリアアップに繋がるなという思いが強くなっていきました。
STORESもすごく魅力的な環境で、仕事を通して学べるものはたくさんあると感じていました。ただ、令和トラベルでの仕事を通して、自分の中にあった「小さい規模でより経営に近いところで意思決定に関わりながらプロダクトをつくって育てていきたい」という想いをより満たせるのは令和トラベルだと思い、フルタイムでの参画を決めました。
自分の当たり前を押し付けない。マネージャーとして違和感にいち早く気づけるか?
櫻井:ありがとうございます。4月から新体制のエンジニアリングマネージャーとして働いていますが、マネジメントをする上で大事にしていることは何ですか?
吉田:まず前提として、マネージャーの定義・役割は組織やチームによって異なります。それを踏まえた上で、自分がエンジニアリングマネージャーとしてまず大事にしているのは、チームの生産性を高めるということです。メンバーが少しでも働きやすい環境をつくるために、どれだけ些細なことであっても課題だと感じるものは取り除き、なるべくパフォーマンスを発揮しやすくすることを心がけています。現状に満足することなく、常に何かしらの課題があるというスタンスで、どこに課題があるかを探し続けています。
そのためにはメンバーとの信頼関係の構築も重要です。信頼関係があることで1on1を通してメンバーが普段気になっていることや困っていることなどを知ることができます。
それ以外にもメンバー自身が気づけていない課題、当たり前になりすぎていて気づいていないけど、実はパフォーマンスを発揮する上で障害になっていることなどにいち早く気づき、それを解消することにも取り組んでいきたいと思っているところです。
櫻井:課題発見のスキルはすごく重要だと思います。私自身も身につけたいと思っていますが、yoshikeiさんはどうやって身につけていったのでしょうか?
吉田:正直マネジメントに関する体系的な知識は、まだまだ足りていないと思っています。「こういうときは、こうすればいい」というものが自分の中に強く持てていないです。今後知識を身につけ、引き出しの数を増やしていかなければと思っていますが、個人的にマネジメントは究極的に人間関係だと思っているので、人によって考え方や価値観が違うのは当たり前。その前提を持った上で、なるべく個々人の強みを生かしつつ、結果にコミットしていけるような組織にしていきたいと思っています。
また、課題を見つける部分に関してはメンバーが働きやすそうにしているかは気にするようにしています。すぐに気になったことを言ってくれるメンバーもいれば、なかなか言えずに溜め込んでしまうメンバーもいる。人それぞれ違いがあるからこそ、そこの違和感に早く気づけるようにするのは意識的にしています。
EMというポジションでキャリアを積むことにした理由
櫻井:yoshikeiさんはもともとモバイルエンジニアとして働かれていたと思いますが、どういった経緯でマネジメントもやることになったんでしょうか?
吉田:マネジメントに関して言えば、学生の頃から起業に近しいことをやっていたこともあり、経営目線での意思決定や企画が好きだったんです。ただ、就職してモバイルエンジニアとして働く中でエンジニアリングの面白さも感じるようになって。両方が面白いと感じるようになった中で、エンジニア組織をマネジメントすることでプロダクトの意思決定に深く関われる、チームづくりにも深く関われると思ったんです。そこからエンジニアリングに関わりつつ、企画や経営に関わるためにマネジメントの方に進むことを決めました。
ちなみにmiisanはなぜ、マネジメントの道に進もうと思ったんですか?
櫻井:思い返すと私は、自ら選んだわけではありませんでした。もともと文系出身だったこともあり、就職するまではエンジニアに対して「ひとりでプログラムを書いている人」という勝手なイメージを持っていました。私自身、あまりコミュニケーションをとることが向いていないと思っていたので、ひとりで黙々と仕事をして、それがアウトプットになって評価されるエンジニアの仕事はいいなと思っていたんです。
ただ、実際に働いてみてわかったのは、プロダクト開発はチーム戦で人と関わりながら開発していくということです。私は大学卒業後にプログラミングを学び始めたのでスキルはそこまでなかったのですが、働く中で最初に評価されたのがコミュニケーションの部分でした。自分では弱みだと思っていた部分が、周りからは強みに思われていたんです。そこから、マネジメントに対するイメージも変わり、気づいたらマネジメントにも関わるようになっていました。
そしてマネジメントをやってみて、自分一人でやれることの限界もわかりました。自分だけでなく、いろんな人の力を合わせた方が何十倍ものパフォーマンスを発揮できる。私がマネジメントをすることで、それが結果的にプロダクトのためにもなるし、お客さまのためにもなる。周りから求められているなら、マネジメントをやるべきだと思ったんです。それでマネジメントの道に進むことを決めました。
吉田:人の強みや弱みをきちんと把握して、チームのパフォーマンスを10倍、20倍にしていく。そこがマネジメントの面白いところだと思います。一方でマネジメントの再現性は難しい部分です。型にハメすぎるのは良くないけれど、先人の知恵のような体系的なメソッドも型がハマるタイミングだったら使うべきだと思うんです。そういった自分の中でのやり方というか、どういう武器をどう使えばチームのパフォーマンスが最大化するかは分からない部分がある。そういう意味ではその場、その場でチームや環境に合わせた動き方が求められるのかなと思います。
櫻井:私も100%は自信を持てませんが、マネジメントの変数になるものはいくつかあることに気づきました。それをどこまで揃えることができ、微調整を加えていけるか。そこがマネジメントにおいては重要なのかなと思っています。
吉田:エンジニアリングは成果も分かりやすいですし、小さい成功体験を積み重ねていくことができますが、マネジメントはゴールがない。「長い目で見てチームや組織が良くなれば」という話なので、目的を見失うというか、迷子になりがちですよね。自分がちゃんとマネジメントできているか不安になるときがあります。
櫻井:ゴールがないことが大前提だから、そこを面白がれる人でないと難しいなと思います。分かりやすく「これが正解です」というのが存在していない。ある人には「良い」と思われているけど、ある人には「良くない」と思われているかもしれない。そういうのを全部受け入れていかなければいけないし、常に変わっていくことも受け入れていくことが必要です。そこがマネジメントの不思議なところであり、魅力でもあります。
今後EMとして開発チームをどうしていくか?
櫻井:2023年4月から新しい開発体制になりましたが、yoshikeiさんはこれからどんなチームを作っていきたいですか?
吉田:プロフェッショナルとして自分の仕事に責任、誇りを持っているメンバーが集まっているので、今後人が増えてもそこは大事にしたい部分です。ただ、自分の専門分野にこだわることは大事ですけど、それはあくまでお客さまに価値を届けるための手段ということも理解しておく必要があると思っています。いわゆる”プロダクト思考”というやつです。そういう考えを持った人たちと一緒にやっていきたいと思いますし、そういう人たちが集まったチームにしていきたいです。あとはチームメンバー全員がプロダクトとチームを好きで居続けられる形にしたいです。”好き”がモチベーションに繋がり、高いモチベーションが高い成果を呼ぶ。その結果、さらにプロダクトやチームを好きになる。その好循環を回していけるチームにしたいです。そのためにもやるべきことはきちんとやっていきたいですね。
また、会社全体としてはチームをスケールさせて、プロダクトをより良くするフェーズに入っていくと思うので、スケールに耐えうるチームにしていかなければいけないですし、引き続き採用にも力を入れていきたいです。今まではチームの人数が少なかったこともあり、フェーズ的にも属人化でスピードを出すことが一定正しい戦略だったかもしれないですが、今後は誰がやってもある程度クオリティが出せる状態にはしていかないといけない。チームとしては自動化やドキュメンテーションなど、中長期的に運用していく体制づくりをやっていきたいと思います。
櫻井:この1年はどんどん作って、スピード感を出すフェーズでしたけど、今はクライアントも増えてきていますし、NEWTを利用して旅行に行く人も増えました。これまでと同じやり方ではいけない部分が増えているからこそ、継続してプロダクト開発をしていき、価値を継続して出し続けていくことがお客さまにとっての価値になっていくはずです。日々良いものが増えていく状態を続けるためには、長期戦ができる体制にしていかなければ後々厳しくなっていくので、そこに取り組めたらいいなと思います。
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