DeNA・令和トラベル・スマートバンク・カウシェでの開発における生成AIフル活用事例

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Hironori Nakano
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Aug 13, 2025
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AI
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こんにちは!令和トラベル エンジニアリングオフィスです。
この記事では、2025年7月30日にオンライン・オフラインのハイブリッドで開催された、『DeNA・令和トラベル・スマートバンク・カウシェでの開発における生成AIフル活用事例』の様子を紹介します!
 
今回のイベントでは、LT発表に続き、テーマに沿ってパネルディスカッション形式で開催。各社の開発組織がどのように生成AIを現場に導入し、その活用によってどのような成果や課題が見えているのかについて、具体的な事例を交えながら活発な議論が展開されました。
 

登壇内容について

登壇者は、株式会社ディー・エヌ・エーよりAI技術開発部部長 田中 一樹さん、株式会社スマートバンクより取締役CTO 堀井 雄太さん、株式会社カウシェ 執行役員CTO 池松 恭平さん、株式会社令和トラベルより執行役員VPoE 麻柄が登壇。そして、モデレータを株式会社ディー・エヌ・エー AIイノベーション事業本部 本部長 住吉 政一郎さんが努めました。
今回はこの5名の方に、以下4つのテーマで熱い議論をしていただきました!
💡
  • 各社の開発組織の特徴について
  • 直近は組織面においてどのような施策を行っている?
  • プロダクト面で取り組んでいることは?
  • 今後考えている、注力していくことは?
 
それぞれのトークテーマについて、簡単にご紹介していきます!
 

#1. 各社の開発組織の特徴について

企業規模や事業フェーズに応じて大きく異なる特徴を持っているのが印象的でした!
DeNA社は全社2500人の大企業でありながら、AI新規事業において、1プロダクトあたりPdM・UXデザイナー・エンジニア・AIエンジニアからなる2~4人の少数精鋭体制を採用し、スポーツ事業からヘルスケア事業に至るまで幅広い領域でAI活用を推進しています。
 
スマートバンク社では、全社で60~70名の組織のうち開発者が50名を占めており、開発者主体の組織構成が特徴的で、金融系システムを展開していることもあり、バックエンドエンジニアが26名在籍しています。全エンジニアに月額100ドルのClaude利用予算を支給し、CursorやDevinも積極的に利用しているそうです。
 
令和トラベルは全社で100名の組織規模となり、そのうちプロダクトチーム45名を占めています。旅行アプリ『NEWT(ニュート)』を運営し、旅行代理店業務のDX化を司る重厚なバックエンドシステムを構築しています。LLMサービスは全社的にGeminiを導入しており、ChatGPTやClaudeも必要に応じて予算内で自由に利用可能です。『AIオールイン』という全社戦略を掲げ、非エンジニアも含めAIツールの利用率が非常に高い状態です。
 
カウシェ社は全社で50~60名の組織であり、そのうちエンジニアが23名を占めています。ECにエンタメ・ゲーミフィケーション要素を組み合わせたユニークなサービスを提供しており、LLMツールにおいてはClaudeや以前はCline、Cursorなどを利用し、1チーム5~6名でスモールなチーム体制で大きなアウトプットを目指しています。「100人で1兆円のEC事業」という野心的な目標のもと、少人数での高い生産性を追求しています。
 
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#2. 直近は組織面において、どのような施策を行っている?

昨今のAI技術における急速な進化に対応するため、各社独自に組織におけるさまざま施策を展開していました。
DeNA社では、AIツールの利用申請において、事業責任者の承認があれば利用開始できるツールトライアルフローを新設。世の中のスピードに合わせて待ち時間少なく利用検証できる環境に改善しました。また、法務チェック業務の一部をAI化することで、導入の障壁を大幅に削減したとのことでした。
 
スマートバンク社では、OKRにAI活用を組み込み、5人体制のAI投資委員会を設立して全社的な推進体制を構築。Devinの使用状況を月次レポートで共有し、非エンジニアへの支援窓口も設置するなど、組織全体でのAI活用を促進しています。
 
令和トラベルでは、定期的なLT会とハッカソンを通じて知見共有を活発化し、commitの60~90%をAI生成にするなど具体的な数値目標を設定しています。
 
カウシェ社は「全員が業務でAIに触る」を徹底し、評価項目にAI活用を組み込むトップダウンアプローチを採用。プルリクエストの8~9割をLLM起点で作成するチャレンジや、新ツールに対する1週間の様子見期間を設けるなど、積極性と慎重性のバランスを取った戦略を展開していました。
 
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#3. プロダクト面で取り組んでいることは?

プロダクトへのアプローチは、事業特性に応じて大きく異なるようです。
各社とも事業特性に応じたAI活用の優先度を明確に定め、技術的可能性と事業インパクトのバランスを慎重に見極めながらプロダクト開発を推進していました。
DeNA社は「AIのフィードバックループ」を核とした新規プロダクト開発を推進し、従来の補助機能的AI活用から脱却し、LLMやVLM、生成AIによる全く新しいプロダクト構築を目指しています。少人数でのAIネイティブな立ち上げを重視し、AIがユーザー体験を改善し、そのデータがAIをさらに向上させる循環型の開発を実践していました。
 
スマートバンク社では、家計簿アプリ「ワンバンク」でClaudeAPIを活用したレシート自動分類機能を約5ヶ月で実装し、従来の大量データによるモデル構築なしで高い精度を実現しています。プロトタイプ量産体制にシフトし、PMとエンジニアが連携して、1ヶ月に複数の企画を迅速に試す開発プロセスを確立しています。
 
令和トラベルは旅行メディア記事の自動生成、10万件のパッケージツアータイトル作成、ツアーへの自動タグ付けなど、コンテンツ制作領域で積極的にAI技術を活用。一方で、AIコンシェルジュは期待値を超える精度の実現が困難として導入を見送ったなど、現実的な判断も行なってきました
 
カウシェ社においてはLLMの直接的な組み込みに慎重で、従来の機械学習ロジックを重視しつつ、将来的にはユーザーの感情データを活用したレコメンデーションやパーソナライズされたUI生成を構想しているそうです。
 
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#4. 今後考えている、注力していくことは?

AI時代における各社の成長戦略は、それぞれのビジョンや組織・人材への各社の考え方が明確に反映されていました。
DeNA社はAI新規事業のグローバル展開を最重要視し、アメリカや中国での現地調査を強化して最先端情報の技術や取り組みをプロダクトに還元。「プロダクト開発ができるAIエンジニア」「AIの仕組みを深く理解したプロダクトマネージャー」をマーケットにおいて価値ある人材として位置づけ、AIとプロダクト両方をつくれる人材育成に注力しています。
 
スマートバンク社は家計管理における「良いAIアシスタント」構築を目指し、ユーザーデータから投資余力提示や節約プラン提案など、プロアクティブな金融支援サービスの実現を構想。求める人材像として、AIツールを使いこなしながらビジネス仕様を深く理解し、生産性を向上させられるエンジニアを挙げています。
 
令和トラベルでは、旅行に伴う不安や面倒さを解消し、最適な「旅行体験」を提供することを目指して、総合的な「トラベルAIエージェント」の実現に取り組んでいます。基幹システムにおいては、AX(AI Transformation)を推進し、複雑かつ曖昧なパターンも構造化データとして扱える旅行の裏側の完全自動化を目指しています。そのために、エンジニアには「フルサイクル・マルチスタック」として、現実世界の課題を自らの手で直接解決する力を求めています。
 
カウシェは「100人で1兆円のEC事業」という野心的目標のもと、少人数での大きなアウトカムの実現を最重要視。日本のEC利用率9.38%という現状に対し、エンタメ要素を加えたプロダクト体験でEC未利用層の開拓を目指しています。
 
▼当日の様子や発表内容が気になる方は、こちらから視聴可能です!👀
 
各社とも、単なる技術力だけでなく、AIを活用してビジネス価値を創出できる複合的なスキルを持つ人材を求めていて、AI時代におけるエンジニアの生存戦略において示唆に富んだパネルディスカッションとなりました。
 

懇親会パートの紹介

発表後には、毎回恒例の懇親会を開催しました!
登壇者・モデレーターの5名を中心に、活発な交流が行われていました。登壇では話せなかった内容についても深掘りなどがなされ、有意義なナレッジシェアの場になったのではないかと思います。
毎度、直接オフィスへお越しくださる方には、お食事とお飲み物をご用意しております。みなさま、ご足労いただきありがとうございました!
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まとめ

発表後の質疑応答セッションでは、会場のオフライン参加のみなさんだけでなく、オンライン参加のみなさんからも質問が集まり、非常に充実した内容となりました。
この4社の事例をパネルディスカッションという形で比較しながら聞けたことで、組織規模や事業フェーズによって、さまざまなAI活用のアプローチがあるという気づきがありました。
それぞれの会社が置かれた状況に応じて、最適なAI活用戦略を模索しているということもわかり、昨今のAI技術の進化においても、かならずしも一つの正解があるわけではないという面白さを感じました。
 

8月開催のLT会は、 ”AI x フロントエンド “がテーマ!

8月の「NEWT Tech Talk」は、NEWTのプロダクト開発を牽引するフロントエンドチームよりyassan、Ippo Matsuiの2名が登壇!
さらに今回は特別ゲストとして、LAPRAS株式会社からRyo Kawamataさん、Dress Code株式会社からYuji Yamaguchiさんをお迎えし、”AIが加速させるフロントエンド開発の未来 〜実装とUXの最前線〜” と題して、LT形式で発表を行います。
 
そのほか、毎月開催している技術発信イベントについては、connpass にてメンバー登録して最新情報をお見逃しなく!
 

令和トラベルでは一緒に働く仲間を募集しています

この記事を読んで会社やプロダクトについて興味を持ってくれた方は、ぜひご連絡お待ちしています!お気軽にお問い合わせください!
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それでは次回のブログもお楽しみに!Have a nice trip ✈️
 
 

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