LLMを今すぐビジネスに活かすなら「エージェント」の前に「ワークフロー」〜MLラボのチャレンジから見えてきた知見〜

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Jan 31, 2025
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Daisuke Miyata
 
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こんにちは、令和トラベルのプロダクトマネージャー miyattiです。
昨年10月、正確には5月ぐらいから動き始めた NEWT MLラボで活動し始めてから、あっという間に半年が経ちました。旅行に関してはほぼ無知同然、生成AIの実践的な活用も手探りだった自分が、「LLMを旅行業界でどう使うか?」を試行錯誤してきたわけですが、その取り組みの中で見えてきた知見や結論をまとめてみようと思います。
 

1. 結論:今年は「エージェント」の時代ではまだない…?

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かわりに、LLMを取り入れたワークフロー開発でごりごり役に立つものを作っていく
この1年、社内外で「エージェントの時代が来る!」という声を耳にすることが増えました。実際、SNSや技術コミュニティでもエージェントが注目されているのは事実です。ただ、あえてここは「今年はエージェントではなくワークフローの時代」といわせていただきます。 しかし私がいろいろ試行錯誤した結果、「お客様向けに完全自律のエージェントを提供」するのは現状まだ難度が高いと感じました。とくにハルシネーションリスクや誤った操作の暴走などが起きやすいからです。
一方、「確実にビジネス効果が出る」方法として、LLMを活用したワークフローを構築するほうが圧倒的に安定し、成果を出しやすい。たとえばコンテンツ生成工程や顧客対応の下準備工程にLLMを組み込み、最後は人間がチェックする形で運用することで、高速なアウトプットを手堅く実現できます。
 

2. そもそもの前提知識

いきなり本題に入る前に、ここで取り上げるエージェントワークフローについて簡単に整理しておきます。
 

エージェントとは

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  • 大規模言語モデル(LLM)にタスクを与え、自律的に判断・行動させる仕組み。
    • 例:「旅行プランを提案してほしい」と伝えるだけで、予算や日程を質問し、ホテルや観光地を調べ、交通手段まで含めた具体的なプランを組み立て、予約サイトのリンクまで提示してくれる
    • メリット:人間が細かい指示を出さなくても、必要な情報収集や判断を自律的に行い、目的に沿った結果を出せる。複雑な要望にも柔軟に対応可能
    • デメリット:自律的な判断ゆえに予期せぬ行動を取るリスクがあり、誤った情報を断定的に提示したり、意図しない方向に暴走する可能性がある。エラー時の制御が難しい
    • 実現方法:現状自律的なエージェントを実装するのは難易度が高く、がっつりコーディングによるシステム開発が必要。ノーコードツールなどで気軽に作れるツールはまだメジャーなものはでてきてはいない。
    •  

ワークフローとは

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  • 「入力→処理A→処理B→出力」のように、あらかじめ定義された手順に沿ってLLMを活用する仕組み。
    • 例:「ホテル情報をDBから取得→LLMで紹介文を生成→誤字脱字チェック→担当者レビュー→CMS投稿」という決められた流れで処理
    • メリット:各工程で期待する動作が明確で、チェックポイントを設けやすい。人間による確認や修正のタイミングが明確で、品質管理がしやすい
    • デメリット:想定外の状況への対応力は低く、あたらしいケースごとにフローの追加や修正が必要。システムの保守・運用コストがかかる
    • 実現方法:LangChain/LangGraphなどのライブラリ / Difyなどのノーコードツールで非常に簡単に開発が可能。ノーコードなどをつかえばノンエンジニアでも開発可能で、現場の運用ともなじみやすい。
 
(図表など こちらの記事より引用 https://www.anthropic.com/research/building-effective-agents) こうした前提を踏まえると、エージェントは夢がある一方でリスクおよび難易度が高く、ワークフローは自律度こそ下がるが運用しやすい、という構造が見えてきます。
 
※この辺の話題はここ1-2カ月Xを中心に盛んに議論されてました。詳細を知りたい方は、こちらの記事などおすすめです
 

3. 1年で行き着いた結論:ワークフロー × 外向け(顧客対応)がコスパが良い

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上の図は、この1年間いろいろ試行錯誤して最終的にまとめた「ワークフロー/エージェント × 内向き/外向き」のマトリクスです。
当初から似たような図を描き直してきたのですが、最終的には「外向き × ワークフロー」が現時点での"鉄板"だという結論に落ち着きました。
 

ワークフロー vs エージェント(横軸)の観点

  • エージェント
    • アイディア出しなど、発散的な質問、明確にステップが決まっていないタスクに対して、自律的に自ら推論し、自律的に適したAIツールやAPIを利用して、自律的にゴールまで突き進みます
    • 自律性と自由度が高い反面、品質の安定性に課題があります。特に複雑なタスクでは誤動作のリスクが増加します。
    • たとえば旅行相談のBotなどでは、エージェントだと必ずきいてほしい項目を時にはとばしたり、チェックの精度にムラが出やすい傾向があります。
引用元: NEC、自律型AIを提供 経営計画や人材管理に活用
引用元: NEC、自律型AIを提供 経営計画や人材管理に活用
 
 

外向き vs 内向き(縦軸)の観点

  • 内向き利用(業務DX)
    • 業務サポートBotでLLMを使い、社内業務を安全&高速化
      • 実際のチェッカー
        実際のチェッカー
      • 成果例:PR記事チェッカーで、かならず人間が作ったPR記事に対して誤字脱字やコンプライアンス観点などでのチェックを行う。
        • LLMとの相性は良好で、ミスのリスクを最小限に抑えられます
        • 一方で、得られる価値は主に業務効率化が中心です。
        • トップライン向上よりも、コスト改善の色合いが強いですね。
  • 外向き利用(顧客対応)
    • 生成したコンテンツを直接お客様向けに公開
ツアータイトル生成支援システム、実際のUI
ツアータイトル生成支援システム、実際のUI
    • 成果例:ツアータイトルのLLMによる自動生成を導入し、商品造成のスピードを向上。また「たびみくじ」などのプロモーションコンテンツのクリエイティブ制作にも活用し、生産性を大幅に改善
      • ヒューマンインザループ(人間のチェック)が欠かせないが、うまく回せれば大きなインパクト
      • LLMとの相性は要注意。ハルシネーションや不適切な応答のリスクが高い
      • しかし、成功すれば売上向上に直結する大きな価値を生みます。
 
こうしてみると、ヒューマンインザループ前提の「外向き × ワークフロー」が最適だとわかりました。一定のガードレールを敷いて、最終的に人が確認すれば、カスタマー向けに直接価値を届けることも十分可能です。

4. ナイストライでした:エージェント×外向き(顧客対応)

https://www.docswell.com/s/miyatti/KL1QYP-2024-11-23-122752/21
とはいえ、外向きエージェントへの期待ももちろんありました。
「カスタマーが "旅の目的地" や "予算" を入力したら、すべての調整や予約まで自動でやってくれるエージェント」があれば最高ですよね。

実際やってみた例

開発中のデザインプロトタイプ
開発中のデザインプロトタイプ
  • 秋以降、ヒアリングエージェントを企画・開発してみました。
    • 「旅行相談そのものはハルシネーション的に難しいとしても、その前段階のヒアリングならいけるのでは」という発想からスタート。AIがヒアリングし、その情報をコンシェルジェがうけとり、実際のアドバイスは人間が行う。ハルシネーションのリスクも、質問と確認が中心なら最小限に抑えられるはず、と。
    • 「予算のすり合わせ」「興味のありそうなアクティビティの確認」など、実際の会話パターンを整理してプロンプトに組み込みました。
    • さらに面白かったのが、「必ずしも完璧な正確性は求められないのでは?」という気づき。人間だって常に100%正確な対応はできていない。むしろ、会話体験自体の心地よさで信頼関係を築けるのでは、という仮説を立てました。
    • この仮説のもと、社内のトラベルコンシェルジュに直接ヒアリングをしまくったり、お客様との対話ログを分析したり。会話のトーンや質問の順序など、顧客満足度を高めるコツをプロンプトに反映しました。
    • ここちよいヒアリングとは。それは1を聞いて10を知ること、でした。お客様の一言から推測(推論)し、推論をもとに深堀をする。お子様が同行される、ときけば、じゃあ深夜便は候補からぬいたほうがいいかも、とか。お客様が直接要望をだしていなくても、そういったことをさらっとやることで、信頼が生まれます。
    • UI/UXの研究も重ねました。やはり色々検討したうえでのChatUI。ただし、なるべくエージェントライクにふるまう。つまりお客様からの入力を極力減らし、聞く場合も選択肢はこちらから提案する。

結果

  • 社内のトラベルコンシェルジェにクオリティのチェックなどしてもらった結果、普通に使う分には活用可能とされるボーダーをぎりぎり超える評価をいただく。
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社内調査の評価より抜粋
社内調査の評価より抜粋

苦戦ポイント

  • しかし、本当に実際にお客様に提供する、となると、現実は厳しく、いくつかの壁にぶつかりました:
    • やっぱりハルシネーションは、どれだけ対策しても完全には防げず、時折「あれ?」という違和感のある返答が出てしまう
      • お客様からの質問が、結局情報収集段階であったとしても、当然なんでもきくことはでき、想定外の展開に対応しきれない
    • これを厳密にガードしようとすると、昔ながらのチャットボットのような機械的な反応になりがちだし、自然にしようとするとそれはそれで生じる不自然な唐突なやりとりに悩まされるなどなど…。なかなかのモグラたたき状態に。

自律型エージェントはまだプロ向けかもしれない…

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  • プログラミング領域でのエージェント活用
    • 世の中では「今年はエージェント元年」とも言われ、プログラミング領域ではDevinやClineなど "自走するエージェント"(プログラムの作成や修正を自動で行うAI)が注目を集めています。
    • しかし、プログラミングの場合は "コンパイルエラー"(プログラムの文法ミスを自動チェックする機能)や "テスト"(動作確認)などで誤りをすぐ検出できる仕組みがあるのが大きいポイントです。つまり、AIが間違えても即座に気付けるという安全性があります。
  • 一般ビジネスでの困難
    • プログラミングと違って、AIの判断が正しいか間違っているかをすぐに判定できないケースが圧倒的に多い
      • 例:「この旅行プランは本当にお客様に合っているか?」「この接客対応は適切か?」など、正解が一つではない
    • 特に一般のカスタマーは「AIが言うことは全て正しい」と思い込みやすく、AIの間違った提案をそのまま信じてしまい、大きなトラブルに発展する可能性がある
      • 例:予算オーバーの提案を鵜呑みにして予約してしまう、実際には満室なのに「予約できます」と案内してしまうなど
 
このような課題を考えると、当面は完全自律型エージェントをプログラミング領域以外では企業間取引(B2B)向け社内の専門家向けツールとして活用するのが現実的かな、というのが今の私の見立てです。専門知識を持った人が使うことで、AIの間違いにもすぐ気付けるからです。
 

5. "現時点の勝ち筋" は、外向き×ワークフロー

ここまでの話をまとめると、「ワークフロー」で確実に成果が出るシステムを組むのがいまは無難。そして、その生成物を最終的に外向き(顧客向け)に届けることで、スピード・品質・ブランドリスクのバランスが取れるわけです。
  • 直接お客様向けにLLMを提供するのではなく、
    • 中央集権的に「内向き」で判断ポイントを集約
    • ヒューマンインザループで品質管理→OKなら外向きにリリース
  • 人間が最終段階をチェックするヒューマンインザループを組み込むことで、相当な効率化と品質向上が実現できました

実際の事例(一部)

  • 旅行記事生成
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    • Difyのワークフローに沿って
      • Notionやネットから情報をピックアップ
      • LLMで記事化
    • ヒューマンインザループ
      • 誤情報対策として担当者がファクトチェック、問題なければ公開
    • 成果:
  • ホテル詳細ページの生成AIによるお役立ち情報追加
    • Difyのワークフローに沿って
      • 内部のナレッジやネットの最新情報をLLMで一括取得
      • ドラフト生成
    • ヒューマンインザループ
      • "ヒト"が最終チェックし、問題なければWeb・SNSへ一括公開
      • notion image
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  • 旅行相談用ナレッジページのたたき自動生成
    • LangGraphのワークフローにそって
      • もともと持っているナレッジや最新のネット情報を随時取得
      • LLMが情報まとめページを作成
        • Tavilyなどを活用し、ネットから基礎情報を集める
          Tavilyなどを活用し、ネットから基礎情報を集める
    • ヒューマンインザループ
      • それをベースに旅行相談のプロが知識をさらに追記などして育てていく
      • ちなみに、この施策はDifyではなくLangGraph。
        • Difyの弱点としてIteration周りの多重ループが難しいところがある。LangGraphはもちろんコーディングなのでその辺はいくらでも工夫することができる。
        • これにより、多重構造をもった情報収集が可能になりました。
      • Notionに集約することで、旅行相談チーム同士で情報を共有しつつ必要に応じて編集。カスタマー対応の共通のナレッジとして育てていく予定です。
 

6. 2025年はノンエンジニアのプロ「ワークフロー」大量開発時代

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外向き × ワークフローが「鉄板」なら、ここで注目したいのがDifyのようなノーコードツールです。Difyは、エンジニアだけでなくノンエンジニアでもLLMの仕組みを活用できる秘密兵器と言えます。Difyはこの1年で出会ったツールの中でも最高のやつです。
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実際の成果例

前述の旅行記事生成のワークフローでは、Difyを活用することで高品質なコンテンツを効率的に生み出しました。さらに、実際にライターやツアー企画チームが現場で改善しながら運用し、エンジニアもプロトタイピングに活用しています。このようなコラボレーションは日本中でもっと進めていくのがいいと思います。

ノンエンジニアの可能性を解放

これまでノンエンジニアは、せいぜいChatGPTで調べものをする程度でしたが、Difyを使えば単発作業を卒業し、プロンプトをテンプレート化して安定した成果を出すことが可能です。昨年に比べてツールも使いやすく進化しており、今こそ本格活用のチャンスです。

事業会社に最適な理由

専門知識を持つプロフェッショナルが集まっているような事業会社では、その知見をワークフロー化し、LLMを活用することでさらなる価値を引き出せます。Difyを活用すれば、安定したアウトプットを大量に生み出し、ビジネス成果につなげるポテンシャルが大いにあります。
 
「ポン出しだけじゃもったいない!」Difyなどのノーコードワークフロー開発ツールを導入してナレッジを増幅し、効率よく価値を届ける仕組みづくりを進めるべきです。詳細なDifyの使い方や事例については、以下のブログやスライドをご覧ください。
 

7. エージェントは本当にずっと難しいままなのか? 〜エージェンティックワークフローとアンビエントエージェントの可能性〜

とはいえ、「エージェント」が今は難しいといっても、それは現時点での話。2つの突破口を最後にご紹介したいと思います。

「内向き」ならエージェンティックワークフロー

「ワークフローにエージェントの柔軟性をミックス」

勝ち筋としては、外向きのワークフローが現時点ではコスパがよいですが、エージェントのインパクトはうまくいけばやはり大きい。そして今まで述べてきたように、外向き(顧客向け)はリスクが大きくても、内向き(プロ向け)であれば比較的導入しやすく、会社のビジネスモデル的に内向きにDXをすることが強いバリューを出すなら内向きxエージェントはやっていくべきだと思います。ただし、完全に自律エージェントではなく、エージェントとワークフローの中間としての「エージェンティックワークフロー」という形で。
 

エージェンティックワークフローとは?

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  1. 基本は決められた工程
      • たとえば「レポート作成→レビュー→公開」みたいな流れをセット
  1. エージェントに“判断の余地”を部分的に与える
      • 例:「このステップの細かい加工や追加資料の検索はエージェントに一任。でも必ず成果物を人間が承認」といった形
  1. 人間による最終コントロール
      • ガードレールを徹底して設計し、「ここを越えるときは必ず通知&承認」的なフローを挟む
こうすれば、エージェントの“自由度とワークフローの“安定感を両立しやすい。

どんな問題を解決するか?

  • ハルシネーションの問題が小さい
    • 内部スタッフなら誤情報に気づきやすく、危険度の高い意思決定には必ず二重チェックを入れられる
  • 制御が大変でもプロが慣れれば運用可能
    • エージェントが複雑な判断を自律で行おうとしても、チームが運用ルールを理解しやすく「ここで止めればいい」という目安も立てやすい

エージェントとワークフローのいいとこどり

「今年中にエージェントが人間並みに何でもこなす!」というのは厳しくてもエージェンティックなワークフロー”として組み込めば、内向きDXでは十分なメリットが得られそうですし、またこれもエージェントではなくワークフローと考えれば、自律エージェントに比べていろいろ制御が可能なので、外向きxワークフローの派生形として、直接お客様に提供できる道もあると思います!(ただし内向きよりも難易度は高いのは間違いない)
エージェンティックワークフローは令和トラベルでも模索中
エージェンティックワークフローは令和トラベルでも模索中
 

「外向き」ならアンビエントエージェント

「いつでもお客様のことを考え続けるエージェント」

では、外向きのエージェントはやっぱり難しいのか?というところについては、最近面白い考え方、仕組みが話題になりまして、一つのアプローチとして、「アンビエントエージェント」https://blog.langchain.dev/introducing-ambient-agents/)という考え方が「外向きエージェント」の課題解決になっていくだろうなとおもっています。なぜなら、通常のエージェントの難点である「人間のチェックがいれづらい」という問題を解決するエージェントだからです。
自分のXでも翻訳記事で紹介しました。 https://x.com/miyatti/status/1881192788643254494
自分のXでも翻訳記事で紹介しました。 https://x.com/miyatti/status/1881192788643254494
 

アンビエントエージェントとは?

  • 従来のチャット型:カスタマーが話しかけるまでエージェントは待ち受け状態
  • アンビエントエージェント:システムが常時イベントやカスタマーの行動をモニタリングし、必要なときに自律的に動き出す
    • 例:「◯◯ツアーを迷っているお客さんがいる」などの状態を検知し、勝手にお得なオプションやキャンセル防止施策を考えてくれる

どうして外向きエージェントにアンビエントエージェントがいいのか?

  • チャット型だと、カスタマーから質問がきた瞬間に“即答しなきゃ”というプレッシャーがある。一方、アンビエントなら、エージェントが「先に思考しておく」ので、人間が合間にレビューする余裕が生まれやすい。
    • 例:旅行相談Botも、カスタマーが相談を正式に投げる前から「この人、北海道系のツアーを検索してる」と察知し、裏でヒアリング項目をまとめてスタッフの承認を得てから提案できる。
    • つまり、エージェントなのに人間側で吟味する時間、ヒューマインザループを回す余裕を確保しやすいわけです。

ヒューマンインザループで安全性も担保

  • 完全放置すると暴走しがちですが、重大な判断だけは人間に確認を入れる仕組みを組み込めば、ハルシネーションによる誤案内や間違った予約を大幅に減らせる。
  • 普段から「常に考えている」ぶん情報収集が進んでいて、いざ提案するときの精度も高い可能性がある。

とはいえ、実装ハードルや過剰通知問題も

  • 常時イベント監視となると、インフラコストや個人情報管理に注意が必要。
  • 「必要なときだけ通知」の設計を誤ると、逆にカスタマーにとって“鬱陶しい”Botになってしまう。
  • また、最終確認を常に人間が行うなら工数が増え、結局効率はどうなの?という声も出てくる。

それでも期待される理由

  • チャット型の「受け身」では拾えないチャンスや問題を、アンビエントなら“先回り”で解決できるかもしれない。守りより攻め。攻めが、余裕を作り、人間が介在する余裕を作れる。
  • 将来的には、こうした仕組みが外向きエージェントの限界を突破し、“自律的に動きつつ安全性も確保”する形に繋がる可能性がある。
  • 「常に考えているエージェント」がうまく回れば、カスタマーがわざわざ問い合わせしなくても、より自然なアシストが実現するかもしれません。
結局、アンビエントエージェントもハードルは高いし、実装コスト・設計上のリスクは大きいですが、外向きエージェント“無理ゲー”説に対する一つの希望的アプローチではあると感じています。LangChainや他のフレームワークでも、この方向の研究が進んでいるので、今後の進化に期待ですね。
このようにとにかく、生成AIの世界は日進月歩。この記事の内容も1か月後には時代遅れになることでしょう。ぜひとにかく皆さん、この面白く超速ですすむビッグウェーブにのっかって、楽しんでいきましょう!
 

 

8. MLラボ発足から半年、令和トラベルでの1年と感謝

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そんなこんなで、MLラボ発足から半年、私自身が入社したのはおととしの12月でちょうど1年。ふりかえってみると、まったくわかっていなかった旅行業界で、LLM運用の実践をさせてもらえたのは本当に貴重な経験でした。

王道戦略に基づいた、実践的な活用模索ができた

  • LLMを活用していく!という視点だけでチャレンジしようと思えば、いきなりカスタマー向けのチャットをやりはじめて大失敗しLLM使えない!という結論になっているか、最初から内向きのワークフローをはじめてしまい、LLMで使えるにしても地味だね、となって尻すぼみになっていたのではないかと思います。
  • 令和トラベルのカルチャーは「王道戦略」LLMのようなあたらしい技術であっても、R&D的な実験ではなく確実に成果につながるよう、また、ちょっとした内向きのDXで満足しないように、チャレンジを後押しされてきました。

実際の成果も出せた。知見もためられた。

  • また、社員みんなが常に泥臭く前向きで、結果社員からPPさん(※ 令和トラベルでは業務委託の方をプロパートナー(PP)と呼んでいます)までチーム一丸となってDifyのワークフローやプロンプトを最適化していくダイナミズムがすごかったです。
  • 結果、記事生成などを中心に実際にビジネス的な成果もだせ、外向き x ワークフローという 領域を見つけられたのではないかと思っています。本当にいいチャレンジ領域だと思います。
 
こういう経験をできたのは、自分の中で大きな糧になりました。プロジェクトを一緒に走ってくださった皆さん、本当にありがとうございました。
 

9. 私事としてのご報告:退職しますが…令和トラベルはAIに興味ある人におすすめ

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実は今回、個人的な理由で令和トラベルを離れることになりました。これまで半年、LLMに携わった中で、私個人としてはよりLLM業界に深く入り込み、エージェントの可能性をもっと追いかけたいと強く思うようになってしまいました。

今年はまだ顧客向けとしての、エージェントは難易度が高そう

  • 確かに今は「ワークフローこそ正攻法」で、実際に大きなインパクトを出せる時期だなと自分の中では結論がでています。
  • しかし、これからの近い将来来るであろう、顧客向けだろうとなんだろうと、エージェントがより自律的に動いてビジネス的成果をだす、社会的なアウトカムをだしていくような方向性にも、どうしても惹かれてしまうのです。

プロのアシストとしてのエージェント(内向きxエージェント)は間違いなくくるし、外向きエージェントも可能性しかない

  • 今まで述べたようにエージェントが活躍する場としては、直近は内向き、プロのサポートであると考えています。そしてこのプロの領域でもエージェントがはまるところ、はまらないところというのもある気がしています。これをエージェンティックワークフローでつくりきること。ここに関してより旅行領域に限らずもっと広範囲にエージェントの実験的活用を模索したいと考えております。
  • さらに、外向き自律型エージェントの在り方を模索していくこと。さきほどかいたアンビエントエージェントも注目されていますし、AIが社会全体に溶け込み、人間をいつでもどこでもサポートする時代はそこまで遠くない気がしています。
  • 実際には、ハルシネーション対策や規制、倫理面など乗り越えるべきハードルは多々あります。でも、大企業や既存プラットフォームに縛られずにAIを活かせる未来は、やっぱりわくわくするんですよね。

エージェントが作る未来の社会

  • 大企業的に中央集権型ではなく、一人法人など個人や中小プレイヤーでも、自分のデータを自分で管理しながらAIと一緒に大企業に負けない事業を自律型エージェントと作れるようになる——そういう「分散型社会」と自分では呼んでる、社会の在り方、夢を形にしてみたくて、あたらしいステージに踏み出すことにしました。
 
もちろん、すぐにビジネス化は難しいし、技術・法的整備・倫理面など越えるべきハードルもたくさんあります。しかし、この急成長を遂げる令和トラベルで見つけた "勝ち筋" に賛同しながらも、あえて「夢寄り」のR&Dに振り切るのが自分に合っていると思い、今回退職を決意しました。
 
この辺のネクストアクションはまた、私のSNS(x: @miyatti / note: @miyatad)などで発信していくので、フォローなどいただければ。
 

引き続き、令和トラベルでは、AIまわりやプロダクトまわり、幅広いポジションで仲間を募集しています!

  • ただ、令和トラベルとしてはまだまだ「LLM × 旅行」の最先端を攻めるチャンスがたっぷりあると思います。
    • 旅行×AIの可能性にピンときた方
    • ワークフロー型LLM開発で実践力をつけたい方
    • 泥臭くチャレンジできるスタートアップで成長したい方
 
現在も絶賛採用中で、AIまわりやプロダクトまわり、幅広いポジションで仲間を探しているので、興味あればぜひご連絡いただければうれしいです!お気軽にお問い合わせください!
フランクに話だけでも聞きたいという方は、カジュアル面談も実施できますので、お気軽に令和トラベルのメンバーなどにお声がけください。
 

10. 結び

以上が、1年間の取り組みを通じて得た知見と、私個人の今後についてです。
たくさんの挑戦を許してくれたチーム、そして一緒に泥臭くワークフローを整備してくれた仲間には、本当に感謝しかありません。
今後は別の道を歩むことになりますが、令和トラベルにはまだまだ大きな可能性があると思いますし、旅行やAIに興味ある方には心からおすすめできる職場です。もし興味を持ってくださったら、お気軽に採用ページなど見てみてください。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました!
 

 
 

[お知らせ 1 ] NEWTのMLラボに関するポッドキャスト公開中

クライス&カンパニーさんの「プロダクトマネージャーのキャリアラジオ」にゲスト出演し、MLラボでの取り組みや、生成AIのこれからなどについて3回にわたってしゃべったポッドキャストが現在公開中です。
こちらのブログで紹介した記事生成の詳細なエピソードや、生成AIに最適なUIUXの話、良い「生成AIプロダクト」の見抜き方など、多様な観点で話しておりますので、ご興味ある方はぜひ。
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※音声を聞く暇ないよ、という方は番組内容をまとめた記事を公開中ですのでこちらもチェックしてみてください
 

[お知らせ 2 ] 2月25日開催!「NEWT Tech Talk」のお知らせ

令和トラベルでは、技術的な知識や知見・成果を共有するLT会を毎月実施しています。発表テーマや令和トラベルに興味をお持ちいただいた方は、誰でも気軽に参加いただけます。

今月のテーマは ”プロダクトデザイナーのPMスキル”

2月の「NEWT Tech Talk vol.14」は、『NEWT(ニュート)』のプロダクト開発を牽引するデザインチームよりDesigner兼PM 金浜、同じくDesigner兼PM 島田、Designer 戸井の3名が、”プロダクトデザイナーが語るPMスキルを融合させた実務アプローチ” と題して、LT形式で発表を行います。
 
そのほか、毎月開催している技術発信イベントについては、connpass にてメンバー登録して最新情報をお見逃しなく!
それでは次回のブログもお楽しみに!Have a nice trip ✈️
 
 
 
 
 
 
 

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