ハイパーグロースを実現するtoCスタートアップ逆説のプロダクトマネジメント

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Feb 27, 2025
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Junya Fujinuma
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こんにちは!令和トラベルで旅行アプリ『NEWT(ニュート)』のPMをしている藤沼です。
令和トラベルには2021年の1月から副業開始、同年の6月に1人目のPMとして入社してからカスタマー向けに計3プロダクト(ツアー、ホテル、Webメディア)のリリースとグロースを担当してきました。
それ以前でも保険領域、SNS、配車サービス、オートモーティブ領域、toCやtoBなどのPMをしていましたがそこで触れたプロダクトグロースの定説とNEWTで目の当たりしているハイパーグロースを通して経験した逆説についてお話させてください。
 
今日の定説と逆説のサマリとしてはこちらになります
💡
  • 70点さくっと vs 100点に近づけてリリース
  • PMFまでフォーカス vs 並行した未来への種まき
  • 差別化の追求 vs 王道の追求
  • 答えはカスタマー vs 自分の中
  • テキストよしな vs テキスト is 命
 
 

定説 1:リリースクオリティ 70点 vs 100点

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定説1ではスタートアップでは「まずは出す」というスピード重視の手法が一般的で、初期のプロダクトは70点程度のクオリティでリリースし、フィードバックを得た後に順次ブラッシュアップしていくのがセオリーとしています。
 
ただ、こんなあるあるありますよね
  • とりあえずクイックに出せる状態を作ってからカスタマーの反応やデータを見て改善していこうという意思決定
  • まだ磨けるポイントはありそうだがなんかみんな頑張って作ったから言いづらくこのままリリースをする
 
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ハイパーグロースを目指していくプロダクトは、次から次へと新機能の開発をし続けていきます。そのため、後から磨こうと意思決定をした機能の開発よりも新機能の開発の優先度が高くなるということが往々にあります。
つまり、最初から高品質に作り込まないと中長期的にプロダクト品質を下げてしまうので作り込む必要があるということです。
 
リリースクオリティ 70点 vs 100点のサマリ
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定説1:70点で素早くリリースし、その後に改善する
スタートアップでは「まずは出す」というスピード重視の手法が一般的。初期のプロダクトは70点程度のクオリティでリリースし、フィードバックを得た後に順次ブラッシュアップしていくのがセオリーです。
 
逆説1:初期段階から可能な限り100点に近づけてリリースする
  • 急速な成長を目指すプロダクトでは、後からの改善に回す余裕がなく、初期段階で高い品質を実現しないと、その後の機能拡充が技術的・運用上の負債となるリスクをはらんでいます。
  • 最初から高品質なリリースが、結果として長期的な成長に寄与していくので最初から可能な限り高品質を目指していきましょう。
 
逆説1のおさらい:
最初から現実的なQCDのバランスを見ながら可能な限り100点を目指してリリースをすることがハイパーグロースへとつながる
 
 

定説2:PMFまでフォーカス vs 並行した未来への種まき

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定説2では、PMFまでは限られたリソースを1つのプロダクトに集中し、確実にPMFを達成することが重要としています。(基本的には僕もこの考え方が重要だと思っています。)
一方で、ハイパーグロースを目指していく中での逆説は、リソースを1つに絞ってPMFを目指すだけでなく、未来への種まきも平行していく必要があるということです。
 
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NEWTでは、PMFの探索期間中にも並行して新規事業(例えば、ツアー事業、ホテル事業、Webメディア事業、国内旅行事業など)様々なプロダクトを並行で立ち上げてきました。
その結果、FY23 → FY24で大きな成長を実現したのです。
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  • ツアー事業も大きく成長(FY25も順調に成長しております)
  • Webメディアも3桁万MAUに成長
 
PMFまでフォーカス vs 並行した未来への種まきのサマリ
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定説2:PMF獲得までは一点集中で取り組む
従来は、限られたリソースを1つのプロダクトに集中し、確実にPMFを達成することが重要とされていました。
 
逆説2:PMFを模索しながらも、未来への種まきを並行して行う
  • 令和トラベルでは、PMFの探索期間中にも並行して新規事業(例えば、ツアー事業、ホテル事業、国内旅行事業など)の立ち上げや改善を実施。
  • その結果、WebメディアのMAUが3桁万に達し、各事業が大きな売上の柱となるなど、複数の領域で非連続的な成長を実現しています。
 
逆説2のおさらい:
PMFを模索しながらも、未来への種まきを並行して行うことで非連続的な成長を生み出していく
 
 

定説3:差別化の追求 vs 王道の追求

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定説3としては、プロダクト開発の現場ではターゲットを明確に絞り込み、競合との差別化などが常に問われると思います。よく偉い人などに聞かれるのもあるあるだと思います。
 
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NEWTでは、本気で10年でデカコーンを目指しているため、ニッチに絞るのではなくとにかく王道を揃えていくことを重視しています。社内でマジックワードとして「かおえあ」を意識しております。
  • か:かんたん
  • お:おトク
  • え:えらべる
  • あ:あんしん
 
王道の機能としての揃え方も自分たちのプロダクトがどういう性質なのか?を正しく理解する必要があります。
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NEWTではシンプルに「ECとして重要な機能 」 × 「海外ツアーの商品を販売するための機能」の2つを総合的に判断をしながら王道の機能を揃えることをしてきました。
また、その王道を逆説1でもお伝えしたように可能な限り100点に磨きながら出していくことで、結果的にこの積み重ねが競合に対する差別化につながっていると確信しています。
 
差別化の追求 vs 王道の追求のサマリ
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定説3:ターゲットを明確に絞り込み、競合との差別化を徹底する
特定のニッチ市場に焦点を当て、独自性を追求するのが一般的な戦略です。
 
逆説3:無理な差別化は狙わず、王道のプロダクト体験を提供する
  • 令和トラベルの例では、スマホで商品を売るECサイトと旅行商品の提供という二本柱をシンプルに組み合わせ、基本に忠実な体験を提供することで、自然な形での差別化を実現。
  • 付加価値として+αの要素を積み上げることで、競合との差を生み出しています。
 
逆説3のおさらい:
最強の差別化は、細かいニッチな機能ではなく他社よりも ”なんか良い” の積み重ねから生まれるプロダクト体験
 
 

定説4:答えはカスタマーから探す vs 自分の答えを出す

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これもあるあるとしては以下でしょうか。
  • とりあえず100人のカスタマーからヒアリングをしてみましょう
  • 一旦データを洗い出してみましょう
(答えが一定ある中での仮説の精度を上げるための行為としてはめっちゃ重要だと思っています)
 
ただ、カスタマーヒアリングは流派あると思いますが、僕はヘンリー・フォードのこの言葉を信じている側面があります。
📝
If I had asked people what they wanted, they would have said faster horces.
「もし、人々に”移動手段として何が欲しいのか?”と聞いていたら、彼らはもっと速い馬が欲しいと答えただろう」
ーフォード・モーター・カンパニー創立者 ヘンリー・フォード
 
ただ、逆説的な答えの作り方としては、下記の方法で解像度を上げるのが一番早いと思いました。
  • 圧倒的な実体験を積んで自分がカスタマーになる
  • ベンチマークのプロダクトから先行事例として学ぶ
 
圧倒的なカスタマー体験を積むために令和トラベルに入ってから13カ国、40都道府県で延べ160日くらいは旅行に行ったと思います。
また、ベンチマークのプロダクトを先行事例として学ぶ際に、出典を誤ると学びの深度が変わるので、海外のメガサービス、国内No1サービス、めっちゃ勢いのあるユニコーンなどを適切なベンチマークを対象にして研究をしています。
 
ベンチマークのプロダクトを正しく選定できれば、そこから調査をすることで以下のようなメリットがあります。
  • 数千、数万のABテストの生き残りが実装されているため5-10年の学びをスキップできる
  • 偉大なプロダクトのPMが創意工夫して意図を込めているので、触ることでカスタマー体験がわかる(Good & More含めて)
 
答えはカスタマーから探す vs 自分の答えを探すのサマリ
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定説4:顧客ヒアリングからプロダクトの答えを導き出す
直接カスタマーの意見を聞き、その要望に沿って改善していく手法が一般的です。
 
逆説4:圧倒的な実体験で自らがカスタマーとなり、競合製品の調査を徹底する
  • 講師自身が実際に13カ国・40都道府県を旅行するなど、膨大な実体験を積むことで、顧客視点を自ら体現。
  • また、海外メガサービスや国内ナンバーワンの事例を徹底的に研究し、先人の知見やABテストの結果を自社プロダクトに取り入れることで、より深い洞察を得ています。
 
逆説4のおさらい:
答えはカスタマーヒアリングではなく、圧倒的な実体験+競合(海外メガ + 国内No1サービス)調査をして自分の中から作りあげていく
 

定説5 : テキストはよしな vs テキスト is 命

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僕の今までのものづくりの現場では、テキスト(キャッチコピーや説明文)は、あくまで補助的な要素として扱われ、ここにこだわって1日遅れるよりはリリースを優先をして後から直していこうという意思決定をしてきました。
 
一方で、NEWTではテキストを補助的な要素ではなく、カスタマー体験の根幹として位置付けております。テキスト1つに見えますが、そのテキストによって「カスタマーの行動ハードルを下げる」「直感的に伝わること」「サービス特有のブランディングの形成」が変わります
例えば、NEWTにおいて「検索する」というボタンテキストもどれを採用するかによって印象が大きく異なります。
 
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ライティングエクスペリエンスを高めるために
  • ライティングを専門で見るメンバーを存在させていること
  • また代表篠塚を含めたデザイナー、エンジニア、QA、PMなど多くの人を巻き込みながら作っていること
  • 実際にFigmaに当てはめて画面の中での表現でみること
 
テキストはよしな vs テキスト is 命のサマリ
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定説5:テキストは大まかに作成し、スピーディにリリースする
リリースの迅速さを優先するあまり、テキストは粗く済ませるという手法です。
 
逆説5:テキストこそがプロダクトに命を吹き込む要素であり、細部にまでこだわる
  • カスタマーの検索行動や初回のインタラクションでの印象はテキストの質によって大きく左右されるため、ライティングルールを厳格に設け、Figmaで実際にレイアウトやUIに落とし込んで議論を重ねるなど、テキストのクオリティ向上に注力。
  • これにより、カスタマーの行動ハードルを下げ、より良いカスタマーエクスペリエンス(WX)を創出しています。
 
逆説5のおさらい:
テキストこそがプロダクトに命を吹き込む重要要素であるため、絶対に妥協せずに作り込む
 

まとめ

ハイパーグロースを実現していくスタートアップの逆説は、
  1. 初期リリースの際には、70点で手早く出すのではなく、最初から可能な限り100点に近いクオリティを目指すこと
  1. PMF獲得にフォーカスしつつ、未来への種まきを同時に行うことで、非連続的な成長を実現していくこと
  1. 無理な差別化よりも、基本に忠実な王道のプロダクト体験の積み重ねが自然な差別化を生み出していくこと
  1. カスタマーリサーチは単なるヒアリングに頼らず、実体験と徹底した競合調査を通して、より確かなプロダクト設計を行う
  1. テキストの質がカスタマー体験に大きく影響するため、細部までこだわりきったライティングをして命を吹き込んでいくこと
 
令和トラベルは本気で創業から10年でデカコーンを目指しています!
これから10 → 100だけでなく、100→1000 → 10000のフェーズを迎えていくことになるので、ぜひ一緒にハイパーグロースしませんか?
 
Xからカジュアル面談もお待ちしております!
 

3月18日開催!「NEWT Tech Talk vol.15」のお知らせ

令和トラベルでは、技術的な知識や知見・成果を共有するLT会を毎月実施しています。発表テーマや令和トラベルに興味をお持ちいただいた方は、誰でも気軽に参加いただけます。

3月のテーマは ”サービスの成長に合わせたフロントエンドの進化

3月の「NEWT Tech Talk vol.15」は、『NEWT(ニュート)』のプロダクト開発を牽引するフロントエンドチームよりyassan、shirahama_xの2名が登壇!
さらに今回は特別ゲストとして、『バクラク』の開発・運営を行う株式会社LayerXからizuminさん、『ベースマキナ』の開発・運営を行う株式会社ベースマキナからtaroさんをお迎えし、”サービスの成長に合わせたフロントエンドの進化” と題して、LT形式で発表を行います。
 
そのほか、毎月開催している技術発信イベントについては、connpass にてメンバー登録して最新情報をお見逃しなく!
 

令和トラベルでは一緒に働く仲間を募集しています

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それでは次回のブログもお楽しみに!Have a nice trip ✈️

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