
こんにちは!令和トラベル エンジニアリングUnit マネージャーの yoshikei です。
この記事は、『NEWT 3rd ANNIVERSARY CALENDAR』のDAY19として、書かせていただきます。
私たちが開発している旅行アプリ『NEWT(ニュート)』は、2025年4月5日でおかげさまでサービス開始から3周年を迎えました。総予約流通額は、YoY約310%の大幅成長を達成し、引き続き大きな成長を継続できており、会員数も30万人を突破する規模になってきました。


▼『NEWT』リリース3周年をお知らせしたプレスリリース:
そんなサービスのグロースにあわせて、プロダクト開発組織もスケールアウトを続けてきました。
そして、FY25 (2024/04/01〜2025/03/31) が終わりに近づく頃、令和トラベルのプロダクト開発組織は40名を超える規模となり、「50人の壁」が現実味を帯びてきました。現状まだ大きな問題が起きてはいないものの、組織が急拡大したことでこれまでのやり方では通用しなくなってきていると感じることが増えてきました。
これまで ”スケールアウト” をテーマに、数年先を見据え組織拡大してきましたが、FY26 (2025/04/01〜2026/03/31) からは組織とプロダクトを内側から強化・最大化することを目指す、”質” を高める1年として”スケールイン”をテーマと定め歩み始めました。
この記事では、FY26のテーマが ”スケールイン” に至った経緯とそのテーマを実現するために取り組み始めていることについて紹介できればと思います。
🧱 50人の壁とは?
まず、急成長中のスタートアップやプロダクト組織でよく話題に挙がる転換点の1つ「50人の壁」について整理してみます。
組織の人数が50人に近づくと、これまでのやり方では自然と回らなくなるという現象が多くの組織で報告されています。一般的に、このフェーズで起きやすい変化としては以下のようなものが挙げられます。
コミュニケーションの非対称性
情報が全員に行き渡らなくなり、「言った・聞いていない」のズレが増える
意思決定のスピードダウン
判断に関わる人数が増え、関係者調整に時間がかかるようになる
文化の伝播力の低下
「背中を見て学ぶ」が通用しなくなり、暗黙知の共有が難しくなる
役割・責任の曖昧さの増加
機能やスコープが重なり、誰が何をやるべきか分かりにくくなる
この壁自体は ”悪いこと” ではなく、成長したからこそ迎える正常なプロセスだとも言えます。ただし、何も対策をせずに通過しようとすると、問題が連鎖的に表出し、組織の崩壊を招く原因になってしまうこともまた事実です。
そのため、私たちは「壁にぶつかってから考える」のではなく、兆しの段階で変化に向き合うことが大切だと考えています。次の章では、FY25下期において令和トラベルのプロダクト開発組織にどのような変化の兆しが見え始めたのか、そしてそれにどう取り組んできたのかをご紹介します。
♻️ FY25下期の振り返り
FY25下期では組織開発の観点において、特に以下の2点に注力しました。
- 適切な権限委譲による自律的なプロダクト開発の実現
- 採用強化によるプロダクト開発組織の拡大
▼FY25上期も含め、1年間のエンジニアリング戦略をまるっと振り返っている記事はこちら
1. 適切な権限委譲による自律的なプロダクト開発の実現
FY25下期がスタートした当初、プロダクト開発組織は約30名程度のメンバーで構成されていました。しかし、後述の通り、プロダクト開発組織を今期で50名規模に拡大する計画がありました。
令和トラベルではプロダクト開発を少数規模で構成された「職能横断のミッション別チーム」ごとに推進する編成を取っています。
▼過去にこれまでのチーム編成の変遷について語ったLT会のイベントレポート
より事業を成長させるためにプロダクト開発組織のメンバー数が2倍近くに拡大しようとする中で、「コミュニケーションの非対称性」や「意思決定のスピードダウン」「役割・責任の曖昧さの増加」などが課題となりそうな兆しを見せていました。
そこで、各チームメンバーに適切に権限を委譲することで、役割や責任を明確にし、情報の伝達経路を整理し、意思決定のスピードを早めるために、チーム内に以下の新たな役割を持つメンバーを配置しました。

Development Manager:プロダクト開発推進責任者
- 横断でのアサイン最適化、プロジェクトマネジメント
- KPI指標に対してのコミットメント
Lead Engineer:開発実行責任者
- 生産性向上、品質向上など、開発成果やエンジニアリングKPIに対してのコミットメント
- 自チームのエンジニアリングKPIを設定し、リードする
Scrum Leader:チーム運営 / スクラム推進責任者
- チームの適切な組織運営
- スプリントゴール達成に向けチームを最適化し、目標達成に向けてリードする
トライした先に見えてきたこと
半年間のトライアルを経て、現在の組織フェーズにおいて、取り組みがもたらすメリットとデメリットの両面が見えてきました。
まず、今回新設した役割を担ったメンバーについては、役割が明確になったことで「個」から「チーム」への意識のシフトが進みました。その結果、視座が上がったメンバーも増え、まだまだ伸びしろはあるものの、チーム内での意思決定がよりスピーディーかつ適切に行える土壌が整いつつあると感じています。
一方で、役割をややトップダウンで細かく定義しすぎたかもしれない、という反省もあります。役割の細分化によって、ある程度の分業は進んだものの、オーナーシップを持って自律的に動ける状態とのバランスにジレンマを感じる場面がありました。
特に、各チームに与えられているミッションが異なる以上、ミッション達成のために最適な開発スタイルや運営方針も当然異なります。チームを横断して一定の標準化が必要なのは事実ですが、過度な標準化は、時に各チームの柔軟性を奪い、制約になりかねないことも改めて実感しました。
また、今回私自身がDevelopment Managerの役割を担ったのですが、異なるミッションを持つ複数のチームを横断的に見るというのは、想像以上に難しさを伴うものでした。
全体を俯瞰しながら、大きな問題が起きないように先回りして動くことが求められ、そのこと自体には大きな価値があると感じています。ただ、その一方で、見る範囲が広くなる分、各チームに深く入り込むことが難しく、どうしても「マイナスを防ぐ動き」が中心になってしまいました。
結果として、チームをより良くしていくための「プラスの働きかけ」やアクションを思うように取ることができなかったな、という振り返りがあります。
2. 採用強化によるプロダクト開発組織の拡大
FY25下期では組織づくり・戦略を担当する「Engineering Office」というチームを立ち上げました。そして、本チームのKPIの1つとして、以下を期初に定めました。
半期でのプロダクト開発組織における採用目標数:10名 (過去最大規模)
事業が順調に成長していく中で、開発がボトルネックにならないためにも、プロダクト開発組織を急速に拡大させる必要がありました。
そのため、日々の開発サイクルを回すこと (組織内部の営み) は各チームメンバーに権限を委譲するとともに、一定は任せつつ、マネージャーは特に組織外へのアプローチ (採用やブランディングなど) にコミットすることが求められました。
あらゆる採用チャネルを改めて洗い出し、EM主体に動きつつも少しずつメンバーを巻き込み、「全員採用」を体現する体制づくりを戦略的に進めていきました。
その結果、採用活動が実を結び、FY25下期だけで目標を大幅に超えるあたらしいメンバーを迎えることができました。しかし、それによって新たな変化の兆しが見られるようになってきました。
急速なメンバー増加に伴う組織の歪みとFY26への布石
権限委譲による組織の自律化と採用強化による組織の拡大を同時に進めた結果、ストレッチがかかった組織に対して、新メンバーがどんどんジョインしてくるという構図になりました。
ある種、戦略的に進めた結果ではあるものの、それによって「文化の伝播力の低下」を感じる場面が増えてきました。
実は採用の強化と並行して、体系的なオンボーディングの整備も進めていました。その結果、入社初期のオンボーディングは新メンバーから「充実している」と評価されるなど、一定の充実度を感じられるところまで到達してきました。
しかし一方で、実際にチームにジョインし、プロダクト開発に本格的に関わるフェーズに入ると、ギャップを感じたというフィードバックが新メンバーから少しずつ寄せられるようになってきました。
組織が急速に拡大する中で、新メンバーがその “荒波” に翻弄されないようにするためには、丁寧に伴走できるリーダーやマネージャーの育成・成長がこれまで以上に求められていると感じるようになってきました。
🔍 FY26のテーマは「スケールイン」

FY25では「スケールアウト」をテーマに掲げ、プロダクト開発組織の急速な拡大と、自律的なチーム構築に取り組みました。
その結果、組織は25名から46名へと約2倍に拡大し、事業の成長に追従すべく、複数のミッション別チームが並行して走る開発体制が整いつつありました。
一方で、急拡大に伴う副作用として、いわゆる「50人の壁」に通じるような組織課題が徐々に表面化してきたのも事実です。FY25下期には、そうした兆しに対して愚直に対策を講じてきましたが、同時に「チームをより強く、持続的なものにするには、内側からの見直しが不可欠だ」という確信も深まりました。
また同時に50人に耐えられる組織基盤の構築に取り組み、辿り着くことができたこと、さらにここから100人規模の組織、AI時代への突入、グローバル展開などを見据え、今の組織をもっと筋肉質な状態に強化し、スケールの質にこだわりたいという想いも強くありました。
そこでFY26では、「強くしなやかで持続可能な体制を築くために、内側から質を高める1年」と位置付け、新たなテーマとして「スケールイン」を掲げることにしました。
開発チームの体制アップデート
FY25下期には、「コミュニケーションの非対称性」「意思決定のスピードダウン」「役割・責任の曖昧さの増加」といった課題に対し、チーム内に新たな役割を担うメンバーを配置する取り組みにチャレンジしました。
この施策により、一定のメリットを実感できた一方で、運用を通じて見えてきた課題もあったため、FY26ではそれらを踏まえた体制のアップデートを行いました。
具体的には、意思決定のスピードを維持しつつも、必要以上の役割細分化は避け、各チームに最適な開発スタイルの余白を残せる構造へと再設計しました。
そのために、チーム単位ではなく「テーマ」単位で区切りを設け、そのテーマに対して適切な役割を持つメンバーを配置する形に変更しました。
また、Development Manager (プロダクト開発推進責任者) の担当範囲についても、従来の広く浅く関わる形から、テーマごとにスコープを絞り、より深くチームに入り込める構造へとアップデートしました。
これにより、現場に対してより質の高い関与や支援が可能になっています。あわせて、この新体制を実現するために新たなマネージャーの登用を行い、大胆な権限委譲にも踏み込みました。

Developer Successグループの設立
FY25下期に発足した「Engineering Office」チームのミッション実現をさらに強化するため、主に組織開発をテーマにした「Developer Successグループ」と、主に技術発信やブランディング強化をテーマにした「Tech Brandingグループ」に分け、それぞれのグループに携わるメンバーの強化も行いました。

特にDeveloper Successグループは、「エンジニアリングカルチャーを持続的に体現できる、強固な組織基盤の構築」をミッションに掲げています。急速なメンバー増加に伴って表面化した組織課題に対してコミットし、FY26における" スケールイン" の鍵を握る重要なグループとして位置づけました。
現在は、人数増加により課題となりつつある「文化の伝播力の低下」への対応や、組織を構造的に支えるリーダー・マネージャー層の育成と支援に重点を置いて取り組みを始めています。その一環として、組織の状態を定点観測するための「組織スコアリングアンケート」の作成・導入に着手しました。
組織スコアリングアンケートの作成
令和トラベルでは全社で組織内での状態を可視化するために半期に一度、組織サーベイを取得し、eNPS®スコアを算出しています。(詳しくはこちらの記事もご覧ください)
加えて、プロダクト開発組織独自の取り組みとして、組織スコアリングの仕組みを新たにスタートしました。
月に一度、簡易なアンケートを実施し、その結果をもとにDeveloper Successグループが主体となって組織開発のPDCAを回していくことを目的としています。
このアンケートは50人の壁と向き合うためにグループ内で議論を重ね、以下の4つの観点に対して定量的なスコアリングと定性的なフィードバックの両方を収集できるように設計しました。
- 成長・学習
- コミュニケーション・コラボレーション
- 組織・マネジメント
- カルチャー・バリュー
取り組みはまだ始まったばかりですが、今後継続的に改善を重ねながら、強いプロダクト開発組織をつくるための「ヘルスチェック」として機能させていくことを目指しています。
🧭 振り返りと、その先へ
令和トラベルのプロダクト開発組織は、急成長と向き合いながら、次のフェーズへの一歩を踏み出しました。FY25では「スケールアウト」によって大きな推進力を得ましたが、FY26では「スケールイン」というテーマのもと、組織内部の質的な強化と持続可能な成長にコミットします。
「人数を増やす」だけでなく、「どうすればこの人数で最大の成果を出せるか」に真正面から向き合う──
それが今の私たちが選んだ次のチャレンジです。
FY26を振り返ったときに良い報告ができるように、引き続き事業や組織、プロダクトに真剣に向き合っていきます。
📣 宣伝
最後までお読みいただきありがとうございました!
明日、DAY20の『NEWT 3rd ANNIVERSARY CALENDAR』は、コーポレートデザインUnit Corporate ITチーム 村田が『令和トラベル:1人目Corporate ITが半年で社内ITを整備した話』というテーマで、入社から半年間を振り返りながら、令和トラベルとの出会いや入社の決め手、そして1人目Corporate ITとして入社してから、どんな課題に直面し、どのような取り組みを重ねてきたのかについてご紹介していきます。
次回の記事もお楽しみに!
『NEWT 3rd ANNIVERSARY CALENDAR』についてはこちらから。
令和トラベルでは一緒に働く仲間を募集しています
令和トラベルでは、全ポジション、全力で仲間探しをしていますので、少しでもご興味ある方はぜひ採用ページからご連絡ください。まずは、気軽にお話を聞いていただけるミートアップも開催しています。メンバー全員で温かくお迎えいたしますので、ぜひご検討ください!
イベントのお知らせ
令和トラベルでは、技術的な知識や知見・成果を共有するLT会を毎月実施しています。発表テーマや令和トラベルに興味をお持ちいただいた方は、ぜひご参加ください!
5月のテーマは、” Rails, Go, TypeScriptで挑む ─ バックエンド開発の選択と実践”
5月の開催は、GA technologies社・ナレッジワーク社・令和トラベルの3社にて、タイアップイベントを企画しています!詳細が決定したらconnpassにてイベントページを公開いたします。ぜひメンバー登録して最新情報をチェックしてみてください!
『NEWT FES 3周年メガセール』開催中!
現在、海外旅行やホテルをおトクにご予約いただける『NEWT FES 3周年メガセール』を開催中です。ぜひこの機会にご利用ください!
旅行アプリ『NEWT(ニュート)』はこちらから。