
この記事は、「NEWT Product Advent Calendar 2025」Day15 および「あらたま・いくおの Advent Calendar 2025」Day19 の記事となります。
こんにちは、令和トラベルCPOのまがらです。
AIエージェント元年になると言われて始まった2025年も、あっという間に過ぎ去ってもう年末となってしまいました。
みなさまの所属組織におかれましてはこの1年、AIでどのような変化がありましたか?
令和トラベルは10月のタイミングで「AIファーストカンパニー宣言」を行い、これからのAI時代に組織としても事業としても機動力をもって適合していくために、プロダクト、業務自動化、人材育成の観点でAI化をさらに加速させるための取り組みを行っています。

▶︎AX室設立についてはこちら
そのなかでもエンジニア組織をどう進化させていくかは会社のなかでも重要イシューであり、社内でも危機感を持って議論を重ねているところです。
今回は令和トラベルがAIによってもたらされる大局的な時代の変化をどのように捉え、その中で具体的にどのような組織づくりに取り組んでいるのかをご紹介します。
とあるスタートアップの1つの事例として、EMやVPoEの方の組織づくりの参考になれば嬉しいです。
🔮 AIの発展がもたらす開発組織の未来
1. エンジニアの役割が変化する
ここ1~2年で、もはやコーディングエージェントを使わない開発などありえないというほどAIによる開発は当たり前になりましたが、エンジニアにとってこれは歴史的な技術進化の過程でいうとどのような意味を持つのでしょうか?
これまでアセンブラ→C言語→高水準言語と、技術進化とともにプログラミングは抽象化が進んできました。
そして、抽象化が進むにつれてエンジニアが主に向き合う課題の抽象度も上がってきました。エンジニアにとってAIはこの「抽象化」の最新形態と捉えるのがわかりやすいのではないかと考えています。
コーディングエージェントの登場で、自然言語でソフトウェアの実装ができるようになりつつあります。現時点では手放しにコーディングエージェントに任せて実装をブラックボックス化することはできませんが、今後ますますコーディングエージェントの思考力が高まっていけば、エンジニアが直接コードを書くことはほとんど無くなるかもしれません。
そうすると、エンジニアは自然言語でAIにソフトウェア実装を指示する役割にシフトしていきます。
自然言語でAIに何を指示するようになるかというと、「我々が住む現実世界におけるなにかしらの問題と、その解決方法」です。
この「現実世界の解くべき課題設定」と、「その解決策に対する意思決定」は現実世界の情報を全てコンテキストとしてインプットすることができないAIにはできません。
人間であるエンジニアが意思を込めてする必要のある作業になります。
また、そのときにエンジニアが指示をおこなうAIは1人である必要はなく、そのエンジニアの処理能力の限界まで並列でAIに指示を行うことができます。
◯◯機能を実装するAI、△△機能を実装するAI、それらを結合してテストを行うAI、etc…1つのAIがどのようなカバー範囲まで自律的に動けるようになるのかは予想もつきませんが、無数のAIたちが有機的に連携して機能するように、実行環境を整え、それぞれに現実世界のコンテキストをインプットして指示を出し、ディレクションしていくことが重要になってくると予想しています。
つまり、エンジニアは「現実世界における解くべき本質的な問題を見抜き、解決に至る筋道を立てて意思決定し、無数のAIエージェントを有機的に統合するオーケストレーター」としての役割が求められるようになるのではないでしょうか?
2. プロダクトチームの構成が変化する
“オーケストレーター” としてのエンジニアを前提とするならば、プロダクトチームの構成も変わってくるのではないでしょうか。
フロントエンド、バックエンドのような技術領域の違いによる分業体制は完全に解消され、1人のエンジニアが無数のAIを率いてソフトウェア機能をつくっていく。そのような仮想プロダクトチームが連携しながら複数並列で動いていく。
エンジニアが従来的なPMやデザイナーの領域にもオーバーラップしていくので、PMやデザイナーはより大局的な課題発見やコンセプトメイキング、ガイドライン策定など複数の仮想プロダクトチームが同じ方向性に動けるようにプロダクト全体をディレクションしていく役割の比重が増えていくでしょう。
全体としてはより少人数でこれまで以上に大きなソフトウェアを取り扱えるようになり、チームの少人数化が進みます。
(それに合わせて、これまでの開発プロセス面での様々な開発方法論なども大幅なアップデートが求められるかもしれませんね。)
3. エンジニア組織として考えること
AIのさらなる進化がどのスピードでどこまで発展するのか、私はAI領域の専門家ではないのでどれだけニュースや論文を見ても正確に見通すことはできません。
ただ、大きくは上記のような方向性でエンジニアの役割もプロダクトチームのあり方も変わってくると考えています。
人・組織という観点では以下のようなことがテーマになってくるのではないでしょうか。
人材育成・採用
- 従来的なテックリードやチームリーダーのみならず、エンジニア全員がAIのオーケストレーターとなるための育成
- ソフトウェアエンジニアリングの体系的な基礎知識やフロントエンドからバックエンドまでシステム全体の一気通貫での技術スキル
- 論理的思考力、論理的説明力、文章力、仮説検証力、プロジェクト推進、コミュニケーション力など、現実世界の問題解決をリードできるソフトスキル
- コーディングエージェントを始めとするAIエージェントを使いこなすためのガードレール設計や使いこなしてアウトプットを増やしてきたという経験、実績
- 採用
- 上記人材方針をふまえた採用人材要件と採用プロセスの刷新
- これまで以上に競争力が高まる中で候補者さまに選ばれる魅力的な組織づくり
組織設計
- プロダクトチームの少人数化
- フルスタック & フルサイクルで一気通貫でプロダクトデリバリー
- プロダクト成果へのコミットメント
- プロダクトマネジメント、デザイン領域との融合
- これらのAIトランスフォーメーションを推進する仕組みづくり
- トップダウンでのAI戦略策定、人事・評価制度刷新、教育機会提供、etc…
- ボトムアップでのAI積極活用、活用推進、知見共有、etc…
(※ そのほかにもいろいろあると思いますがこのブログでは人と組織という側面のみに焦点をあて割愛します)
🐢 2025年12月時点の令和トラベルの取り組み
そのような未来を妄想しつつも、組織全体をいきなりAIネイティブな組織にすることはできません。
生成AIのモデルやコーディングエージェントをはじめとするエージェントサービスの精度、いま我々が対峙している事業・サービスの課題、自分たち自身の現時点でのケーパビリティなど現実世界の問題を踏まえたうえで、どうAIを活用して妄想した未来に近づいていくかの筋道をたてながら組織を少しずつ変えていくしかありません。
令和トラベルでも悩みながら試行錯誤をしております。
1. 新規事業でAIネイティブな組織づくりと事業立ち上げにチャレンジする
NEWTはリリースからまだ3年半のプロダクトですが、バックヤードの基幹システム含めて重厚長大なモノリスシステムとなっており、複雑なビジネスロジックとデータパターンが存在します。創業期から積み上げてきているのでドキュメントも完璧には揃っていませんし、実装標準の改良に合わせて全てをリファクタリングしているわけでもないので、システム全体でみると理路整然と整理されたアーキテクチャにはなっていないのが実態です。
そのような既存事業のプロダクトにおいて、いきなりAIエージェントで生産性が10倍になるわけがありません。
NEWTにおいては、泥臭くドキュメントやガイドラインを整備したりリファクタリングしながら、リスクをヘッジしながらPRに占めるAI実装比率を段階的に上げてきたというのが現時点での実態です。
一方で、今年夏先から立ち上げた新規事業のAIチャットエージェント「NEWT Chat(ニュートチャット)」では、ゼロベースということもあり、はじめからAI前提でチームを立ち上げ、技術選定を行い、AIドリブンなプロダクト開発に挑みました。
▶︎NEWT Chatリリースまでの裏側はこちらをご覧ください。

LLMベースのチャットエージェントや自動ナレッジ収集機能など、AIネイティブな特性のプロダクトを、代表篠塚がプロダクトオーナーとなりエンジニア3名ほどの少人数チームでAI時代に来ると予測したスタイルで開発していきました。
もちろん爆速に事業を立ち上げるための意思決定ではありましたが、AIを前提とした実験的な要素も含まれた立ち上げプロジェクトでもありました。
結果としては、NEWT本体のような既存の制約がない分、コーディングエージェントでの実装が非常に高い生産性で機能した点や、仕様決めからエンジニアがフルサイクルで行うことで高速に開発を進めることができたことなど、予測した未来を感じさせる成果があった一方、現時点のAIの性能と我々のナレッジではスケールを見据えたクオリティを満たすとなるとシニアなエンジニアの関与度が高くなる実情や、このようなスタイルで再現性ある体制を構築する難しさなど、未来に向けて乗り越えなければならない課題も見えてきました。
既存事業ではこのような大胆な取り組みは難しいこともあると思います。
新規事業ならなんでもよいわけでもなく、もちろんプロダクト特性もありますが、社内システムやちょっとしたツール、小さなプロジェクトなどでも同じような状況は作れると思います。
まずはゼロベースで実験的に小さく試すということは、組織ナレッジをためるうえでもよいやり方だと考えています。
2. 段階的にマルチスタック&フルサイクル化 & 少人数チーム化を推進する
NEWTはネイティブアプリ、webというサービス提供プラットフォームが複数あること、創業期の2021年は副業メンバーも多かったことなどから、エンジニアはバックエンドエンジニア、フロントエンドエンジニア、iOSエンジニア、Androidエンジニアと1つの専門領域に特化したエンジニアが多く在籍しておりました。
もちろんその中にはマルチスタックなスキルを持ったメンバーもいますし、チームとしてはプロダクト軸でクロスファンクショナルなチームを組んでいましたが、基本的にはチームのなかでの各技術領域の担当は決まっていました。
これを半年ほど前から意図的に崩し、組織全体のマルチスタック化を進めてきています。
元からできるメンバーには積極的にマルチスタックで機能をつくりきってもらったり、はじめて他の技術領域にトライする人はかんたんな実装からサポートしつつトライしたり、強く転向を希望するメンバーにはメイン技術領域とサブ領域を完全に切り替えてもらったり、段階的に職能の壁を超えられる人材を増やす取り組みをしています。
それに伴ってチームも部分的に分割したり、スクラムを廃止して二人一組のバディ制で開発を担当することで擬似的に少人数化させたり、そのなかで全員がフルサイクルで開発をやりきれるようにしたりなどのトライもしてきました。
最近ではいわゆるプロダクトマネジメントの領域に興味も強みもあるメンバーにはプロダクトマネージャーを兼務してもらうなど、従来的なエンジニアの役割や枠組みにとらわれない動き方なども生まれてきました。
いきなり全員に明日からフルスタックになってなんでもやれ!は到底無理な話です。
が、新しいことにチャレンジしたい人、ドメイン知識や関係性などをもった前提で、強みを活かしつつ活躍の幅を広げていける人はたくさんいるはずです。
まずはできるところからにはなりますが、未来を見据えてこのように段階的に役割を拡張してチームを少人数化していくことが重要なのではないでしょうか。
3. AI推進を担う専門部署(AX室)を立ち上げ、AIファーストカンパニー化を会社として強制力をもって推進する
令和トラベルはこれまでもずっと社内でプロダクトへのAI活用、業務自動化のためのAI活用、ひとりひとりのAI活用の啓蒙、推進に取り組んできましたが、2025年10月からAIファーストカンパニー宣言を行い、全社のAI化を推進するAX室をたちあげAI化のギアを上げてきました。
(詳しくはこちらの記事をご覧ください。)
AX室の取り組みのなかで、「AIを使い自部署の何かしらの業務の生産性を大きく向上させるミッションを1つ定める」という組織ミッションを各部署に強制するという施策があります。
これはAIの単純利用がかなり浸透してきたなかで、次の段階として組織レベルでの生産性向上に集中しよう、というのが背景にあります。
当然エンジニア組織はプロダクト開発自体の生産性向上を定めたわけなのですが、この組織ミッションレベルでの強制力は究極は個人ごとのミッションにも反映され、個人業績評価にも影響することになるので、全員これまで以上に本気で向き合うことになります。
また、もとからサイクルタイムの短縮が大きなイシューだよね、という課題が開発組織としてはあったなかで、この施策のなかで、その目的達成のための手段としてAIを位置づけて、AI活用に組織レベルで取り組めるようになったことも大きな変化だったと思っています。
もちろんこのようなことをしなくてもはじめから取り組めるメンバーやチームも当然あります。ただ、全ての人、チームがそのような変化に迅速に自ら立ち向かえるかというとそうでないケースもあるのが普通です。
AIという働き方の転換点だからこそ、組織として強制力をもって強く推進するということも非常に有効な手段であると考えています。
3点ほど令和トラベルの取り組み事例を紹介させていただきました。
そのほかにも細かな取り組みや構想中のトライなど多々ありますのでまた別の機会にブログで詳しく紹介できればと思います。
🌟 おわりに
エンジニア組織づくりに日々向き合い続けている我々としては、上記のような大局的な社会変化を念頭におき、そのような変化の中でも事業としても組織としても勝ち続けることができる開発組織に自分たち自身をトランスフォームしていくことの覚悟をもち、リスクをとって組織変革を推進していくことが重要です。
この未来予測も1年後見返したら大外しして恥ずかしい!って思っているかもしれません。
ですがそのときは未来予測を修正して、組織づくりも軌道修正させていけばいいだけです。
不確実性が高いAI時代だからこそ、間違っててもいいので必死に未来を予測し、これからのAI時代に適合できる開発組織に自分たち自身を変革していくこと。
これがこれからの事業をつくるエンジニア組織のリーダーには求められていると思っています。
令和トラベルは来年もカオスを楽しみながらAIにオールインして開発組織を進化させていきたいと考えていますので引き続きよろしくお願いいたします!
📣 1月のイベント開催のお知らせ
令和トラベルでは、毎月技術的な知識や知見・成果を共有するLT会を毎月実施しています。発表テーマや令和トラベルに興味をお持ちいただいた方は、誰でも気軽に参加いただけます。
【1/28 開催!3社共催】モバイルアプリ開発 ✕ AI ー 組織・技術課題と向き合い、AIと走る
2026年のスタートを切る1月の「NEWT Tech Talk」は、”モバイルアプリ開発 ✕ AI ー 組織・技術課題と向き合い、AIと走る” というテーマで開催。
クラシル株式会社 なぐもさん、株式会社ヤプリ にゃふんたさんをゲストに、令和トラベル やぎにいの3名が登壇します。モバイルアプリ開発の現場で、AI活用に取り組む3社のエンジニアが、個人・チーム・技術課題それぞれの視点から、AIとどのように向き合い、どのように開発を前に進めてきたのか、具体の取り組みをシェアしながら語ります!
そのほか、毎月開催している技術発信イベントについては、connpass にてメンバー登録して最新情報をお見逃しなく!
📣 【NEWT Chat リリース記念】AI × Travel Innovation Week 開催!
12月3日〜6日の4日間、「NEWT Chat」誕生の裏側や開発ストーリーをお届けする特別企画 “AI × Travel Innovation Week” を令和トラベルのnote上で開催しました!
「NEWT Chat」のリリース背景、プロダクトの価値、開発体制、そして今後の展望など、新規事業の “舞台裏” を公開。特に、AIプロダクト開発に関わるエンジニア・PMの皆さまにとって学びの多い内容となりますので、ぜひご覧ください。
▼ AI × Travel Innovation Week のnoteはこちら:
旅行・観光業に特化したAIエージェントチャット「NEWT Chat(ニュートチャット)」についてはこちらから。
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NEWTでは現在、海外旅行やホテルをおトクにご予約いただける『クリスマスセール🎄』を12/4〜スタートしています!ぜひこの機会にご利用ください!
📣 令和トラベルでは一緒に働く仲間を募集しています
この記事を読んで会社やプロダクトについて興味を持ってくれた方は、ぜひご連絡お待ちしています!お気軽にお問い合わせください!
フランクに話だけでも聞きたいという方は、カジュアル面談も実施できますので、お気軽にお声がけください。







