
こんにちは。令和トラベルのEMのyoshikeiです!
2026年3月4日に『EMConf JP 2026』が開催されました。参加されたみなさま、カンファレンス運営に携わったみなさま、お疲れさまでした。
今回はEMConf JP 2026において印象に残った内容や、当日の様子を交えてイベント内容をお伝えしたいと思います。
▼ 2025年の参加レポートはこちら
『EMConf JP 2026』について

カンファレンス概要
EMConf JP 2026 とは?
Engineering Management Conference Japan (EMConf JP) は、エンジニアリングマネジメントを実践する皆さんのためのカンファレンスです。
私たちの掲げるテーマは 「増幅」と「触媒」。
Engineering Manager (EM) たちが生み出す熱が、より大きく、より広がっていくようなイベントとなることを目指しています。
EMを目指すエンジニアからベテランEM・経営者に至るまでが一同に会すこの場で、ともに学び、悩みを分かち合い、お互いの心に火を灯しましょう!
※ EMConf JP 2026 (イベントサイト) より
タイムテーブル
イベントはセッションパートと懇親会パートの二部構成で開催されました。
セッションはA~Cの3つのホールに分かれて実施され、同時にスポンサーブースの出展や企画ブースが用意されていました。


▼ タイムテーブルの詳細はこちら
イベント当日の様子




EMConf JP 2026は、普段それぞれの組織で「これで合っているのか?」と手探りになりがちなEMの仕事に対して、言語化のヒントと仲間を同時にもらえる一日でした。
運営のみなさまの熱量も相まって、会場全体が “知見の持ち寄り” というより “火種の受け渡し” みたいな空気で、テーマの「増幅」「触媒」を体感できたのが印象的でした。
セッションはもちろん、ブース・企画コーナー、アンカンファレンス、懇親会などのしかけを通じて、偶発的な会話から学びが立ち上がる瞬間が多かったように思います。
印象に残ったセッション
#1 基調講演:冒険する組織のつくりかた | 安斎 勇樹

安斎さんの基調講演は、これまでのマネジメントが前提としてきた「軍事的」な世界観 (上が決めた目標を末端まで正確に実行させる) から脱却し、不確実性の高い時代に合わせて好奇心を資源に価値を探求し続ける「冒険的カルチャー」へ移行していく必要性を提示していました。
- パラダイムシフト:軍事→冒険
- 「戦略・戦術・制圧」といった言葉が象徴するトップダウン型は、キャリア観が多様化し人材流動性が高い現代では限界が来ている
- 危機感で変革を促すやり方は、今では “静かな退職” を生みやすい
- 半径5mから変える4つの突破口
- 目標 (SMARTとALIVEを両立する)
- 評価しやすさより、内発的動機を引き出す目標へ
- ALIVE:Adaptive / Learningful / Interesting / Visionary / Experimental
- 目標を “配る” のではなく、意味付けを対話してストーリー化することが重要
- 興味 (Willハラスメントからの脱却)
- 生成AI時代はスキル以上に「興味を深められるか」が差になる
- “将来のWill” の押し付けではなく、「今なにが面白いか」を起点にする
- 興味の傾向は大きく「人寄り」と「こと寄り」。互いの傾向理解がマネジメントコストを下げる
- 会議 (問いのデザイン)
- 「何か意見ありますか?」は意見が出ない問い
- 点数付けや選択肢など、制約のある問いで主体性を引き出す (例:100点満点で何点?→理由→+5点の改善案)
- 文化 (風土と文化の違い)
- 風土 (気候) と文化 (価値基準) は別物
- マネージャー自身が「自チームは何を優先するか」を明確にし、会議・習慣・ルールに意図的に埋め込む
- 個人のリフレクション
- 忙しさのノイズから距離を取り、自分の興味や価値観を言語化する重要性にも触れ、最後は新刊『静かな時間のつかいかた』の紹介で締めくくられました。
個人的には、「危機感で動かす」から「好奇心で探求する」への転換が、EMの言葉やふるまい (目標の語り方、問いの置き方、価値基準の刷り込み方) で実装できる、というメッセージが強く残りました。
Proposal
#2 「事業目線」の正体 〜3つのフェーズのCTO経験から見えてきた、EMが持つべき視点 | sotarok

「事業目線を持て」と言われても具体的な行動に落ちにくい、という課題に対して、このセッションではEMがすぐに実行できる3つのステップとして整理されていました。前提として、マネジメントの目的は事業活動を成功に導き、アウトプットを最大化すること。そのため、エンジニアリングで事業を成功に導くEMにとって、事業目線は必須の土台だと位置づけられます。
- ステップ1:自組織の「数字」と「予算の構造」を知る
- トラフィック、売上、ユーザー数などの主要指標に加え、「クレジットカード登録のエラー数」のようなエンジニアリング寄りの指標も含めて可視化し、常に見える状態にする
- 異常値に早く気づけることで、セキュリティ施策などの提案につながる
- 売上目標の内訳 (単価×MAU×継続率など) を理解し、開発施策が事業にどう効くかの意味付けをできるようにする
- ステップ2:お客様と「隣接組織」を知る
- 数字は「何が起きたか」を教えるが、「なぜ起きたか」は顧客が持っている。ユーザーインタビュー、営業同行、CS研修などで一次情報に触れる
- CS、法務、経理など隣接組織の業務フローやルールも含めて理解し、開発が与える影響を前提に計画する
- 日報を読む、Slackチャンネルに参加するなどで相互理解の解像度を上げる
- ステップ3:戦略に反映し、チームの「仕組み」にする
- 得た視点をロードマップや採用計画などに反映し、「半年後・1年後の問題」を見据えた意思決定につなげる
- マネージャー個人の視点に閉じず、チーム全体が事業目線を持てる仕組みに落とす (ダッシュボードの常設、オンボーディングにCS研修を組み込むなど)
まとめとしては、すべてを完璧にやり切るとCTO領域に近づくが、EMとしては抱え込みすぎず、事業の全体像を理解した上で「自分たちのアウトプットを最大化できるポイント」にフォーカスして着実に実践していく、というメッセージが残りました。
Proposal
#3 マネージャー版 "提案のレベル" を上げる | こにふぁー

メンバー時代は自然にできていた提案が、マネージャーになった途端に難しく感じるのは、ポンコツになったからではなく、関わる範囲と変数が一気に増えるから。そう捉え直した上で、提案の練度を上げるための具体的な考え方が整理されていました。
- 「提案レベル」の4段階
- レベル0 (指摘) :「どうすればいいですか?」と問いかけるだけ
- レベル1 (選択肢) :複数案を整理して「どれにしましょうか?」と提示
- レベル2 (意見) :推奨案を添えて「自分はこれがいいと思う」
- レベル3 (お膳立て) :多角的な観点で準備を終え「これで進めていいですよね?」まで持っていく
- なぜマネージャーは提案が難しくなるのか
- 他部署連携や経営への提案など、扱う範囲と複雑度が増える
- 1年以上先の不確実な未来に対して、正解のない意思決定をし続ける必要がある
- 採用、予算、体制など「打てる手」が増えすぎて選択肢が発散する
- 解決策①:「理解」する
- 自チームと周辺組織のコンテキストを、4つの切り口で掴む
- 組織図:職務権限と役割分担
- 目標:事業計画や他チームの目標
- 会議体:相談や意思決定がどこで行われるか
- 予算:全体感と意思決定プロセス (「お金がない」の思い込みを外す)
- 最短ルートは資料を読むだけでなく、人に会って会話し、会議に参加して生情報を得ること
- 解決策②:「覚悟」を決める (かっこつけない)
- 不確実で正解がない領域なので、最初からスマートにレベル2・3を狙わなくていい
- あえてレベル0から相談して巻き込み、初手の引き出しを増やす
- 「お試し期間」「振り返り」「定期レポート」とセットで提案し、心理的ハードルを下げる
結論として、提案のレベルを上げるとは、1人で完璧な提案を作ることではなく、状況理解を深めつつ周囲を巻き込み、壁打ちを重ねながらチーム全体で練度を上げていくことだと腹落ちしました。
Proposal
#4 経営と会計とエンジニアリング | 前田 和樹
このセッションでは、EMが経営陣に技術投資を提案する際、ミクロな技術的合理性だけでなく、会社の財務、とりわけキャッシュフロー (CF) を踏まえたマクロ視点が必要だと語られていました。
- なぜ合理的な技術提案が却下されるのか
- 例えば「EC2→ECSで年2400万円削減、半年で回収」といった提案が通らないのは、ロジックが間違いなのではなく、会社の財務フェーズと提案内容が噛み合っていないことがある
- 経営の共通言語は利益ではなくキャッシュフロー
- 企業にとって重要なのは、将来生み出すCFを最大化すること
- 「利益は意見、キャッシュは事実」という通り、PL上の利益は会計ルールで見え方が変わるが、現金の増減はごまかせない
- Amazonの例のように、PL上は薄利でも営業CFを投資に回し続けることで企業価値を高められる
- CFのパターンで技術戦略は変わる
- CFは「営業」「投資」「財務」の3種類。組み合わせで会社の状況が見える
- 例:
- 優良型 (営業CF+、投資CF−) :新規プロダクト、アーキ刷新、DevExなどに投資しやすい
- 先行投資型 (営業CF−、財務CF+) :PMF最優先。SaaS活用でコアに集中し、スピード重視
- 生存最優先型 (営業CF−、投資CF+など) :コスト最適化と売上直結に集中
- 厳しい時期でも技術投資をゼロにしない
- 投資停止は「速度・品質低下→競争力低下→営業CF悪化」の悪循環になりやすい
- 実体験として、厳しい時期でも予算ゼロで生成AI機能を試作し、事業の種になった事例が紹介されていた
- 本来は「投資を止めると将来のCFを取り逃がす」という改善シナリオも含めて提案すべき、という振り返りも示された
- AI投資の特殊性
- AIツールは固定費というより変動費に近く、ボトルネックも要件定義やQAへ移りやすい
- 1年単位ではなく、四半期など短いサイクルで投資配分を見直す必要がある
EMの提案は「技術的に正しい」だけでなく、自社のCFフェーズを踏まえた形で「今この会社は何にエンジニアリングを使うべきか」まで引き上げて語ることが重要だという非常に考えさせられるセッション内容でした。
Proposal
#5 EMからVPoEを経てCTOへ:マネジメントキャリアパスにおける葛藤と成長 | yunon_phys

このセッションは、EMからVPoE、そしてCTOへと役割が変わるにつれて直面する「無能感」や葛藤を、個人の能力不足ではなく向き合うべき「問」の性質が変わることとして捉え直す話でした。視座が上がるほど抽象度と不確実性が増え、これまでの勝ち筋が通用しなくなるのは自然な変化だ、という前提が印象的でした。
- マネジメントキャリアの壁 (無能感の正体)
- 役割が変わると、問題の抽象度が上がり不確実性も増える
- その結果、スキルが「通用しない」感覚になりやすいが、退化ではなく「問」が変化している
- 役割ごとに変わる「問」
- EMの問
- 「目の前の課題をどう解くか」→「再現性をどう高めるか (仕組み化) 」→「今このチームでその課題を解くべきか」へ
- 要望をすべて受けてチームをスケールさせた結果、不具合が増え誰も幸せにならなかった失敗談から、フォーカスの重要性が示された
- VPoEの問
- 「チーム」から「組織全体」へ。どのチームで何をやるか、全体のルールや新陳代謝をどう設計するか
- 「良い組織づくり」を目的化しすぎると、事業成長に必要な非連続な変化 (劇薬) から組織を守ってしまう、という気づきが語られた
- CTO (CPO) の問
- 経営視点で、数年先の売上最大化のためにどこに投資するか、どんな痛みを許容するかを決める
- EM/VPoEが不確実性を論理で収束させ再現性を上げるのに対し、CTOは不確実性を「意思」で書き換え、非連続な成長を定義する仕事になる
- CTOとしての実践例 (品質と生産性のバランス)
- インシデント対応が開発時間の10〜20%を占める課題に対し、要因を構造化して対策
- ただしチェック増は生産性低下につながるため「やりすぎないポイント」を見極める方針を明確化
- 1年後に開発に使える時間が35%向上し、インシデント対応は5%以下へ。事前検知文化も醸成された
- 役割変化を乗り切る3つのアドバイス
- 体系的な知識をつける (例:MBA)。受託者責任の考え方が指針になった
- 「宣言」して小さくリスクを取る (心理的ストッパーを外す)
- AIを厳しいレビューアーとして使い、経営会議向け提案を壁打ちする
結論として、マネジメントキャリアは連続的な改善だけでなく、非連続な意思決定を引き受ける世界へ進んでいく「冒険」であり、その過程での葛藤も含めて面白さがある、というメッセージでした。
Proposal
#6 基調講演:AI Coding の先にある、Engineering Manager の本当の仕事 | 藤倉 成太

AI (生成AIやコーディングエージェント) の進化によって、開発の「やり方」だけでなく、エンジニアの価値やチームの最適形、そしてEMが背負うべき役割そのものが変わっていく、という視点が提示されていました。
- AI時代のソフトウェアとエンジニアの価値
- ソフトウェアの価値が消えるのではなく、AIという新技術を前提にビジネスの仕組みが作り変えられていく過程で、業界ごとの適応の壁 (グラデーション) を埋める役割としてソフトウェアエンジニアリングは残る
- これまで「知識」→「検索」→「コーディング」→「経験」へと代替が進む中で、最後に残るエンジニアのコア価値は
- 何を作るかを考える
- どの技術を使うかを判断する
- そして最終結果に責任を取ること
- チーム体制と組織規模の変化
- AIで生産性が上がっても、人材要件が「AIをマネジメントし責任を引き受けられる人」に絞られるため、組織は拡大よりも縮小に向かう可能性がある
- 1人で全責任を負うのは現実的ではなく、AIを活用しつつ
- 2〜3人の少人数
- クロスファンクショナル (PMやデザイナーとの境界が溶ける)
- 相互にクロスチェックし責任分担できる
ようなチームが主流になりうる
- EMの仕事の比重の変化
- プロジェクトマネジメント:AIが不確実性や複雑性を吸収する分、相対的に重要度は下がる
- 技術マネジメント:How (実装方法) は均質化し、What / Whether (何をするか、何をしないか、どの技術を採るか) の意思決定へ抽象度が上がる
- ピープル・組織マネジメント:最重要かつ難化
- 相談内容が「書けない / わからない」から、「ビジネス上の責任をどう引き受けるか」「市場に当てる判断をどうするか」へ重くなる
- 人数が減っても責任と意思決定速度が上がり、1on1の密度やEMの負荷はむしろ上がりうる
- 結論:正解のない時代の覚悟
- 正解やプラクティスを待つのではなく、EM自身が仮説を持って実践し、その結果の責任を引き受けることが、これからも最も重要な役割
最後は、この激動の時代にマネージャーとして立ち会える面白さを肯定し、コミュニティの仲間とともにカオスを楽しんでいこう、という前向きなメッセージで締めくくられていました。
Proposal
他にも開催期間中にたくさんのセッションが企画されていました。詳しくはこちらをご覧ください!
おわりに
今回のカンファレンスのすべてのセッションを聴講し、エンジニアリングマネジメントの奥深さと、その役割が大きく変化していることを実感しました。
特に経営目線の話が多くて非常に参考になりました。
「事業目線」の獲得プロセスや、ROIC (投下資本利益率) を用いた事業生産性の考え方、そしてキャッシュフローに基づいた技術投資の提案など、単なる技術論にとどまらず、いかにして企業価値の向上に貢献するかという視座の高さを学ぶことができました。
また、EMからVPoE、CTOへと役割が変わるにつれて直面する「不確実性の中で自らの意思で決断する」ことの重みや、AI時代においてEMが担うべき「最終的な責任を引き受ける」ことの重要性も深く胸に刺さりました。
さらに、「軍事」から「冒険」へのマネジメントの移行や、特定の優秀な個人に頼らない「分権型組織 (委員会制度) 」の構築、マネージャーとしての「提案レベル」を上げるための周囲の巻き込み方など、すぐに活かせる実践的なノウハウも豊富でした。
今後は、開発プロセスにおける課題解決だけでなく、事業や経営という一段高い視座を持ち、不確実な変化を楽しみながらチームを導けるマネージャーを目指していきたいです。
参加・登壇・運営に関わったみなさま、改めてありがとうございました。来年もぜひ参加したいです。
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それでは次回のブログもお楽しみに!Have a nice trip ✈️







