4年ぶりのAndroider復帰、複雑なドメイン。そして、AIと走ったオンボーディング

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Itsuki Aoyagi
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android
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Aug 12, 2025
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入社エントリ
Android
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はじめに

はじめまして。令和トラベルで旅行アプリ『NEWT(ニュート)』のAndroidアプリエンジニアをしているやぎにい(yagi2)です。
この記事では2025年3月に入社して間もない時期に、「AIを活用して、いかに早く立ち上がるか」という課題への取り組みをメインにお話しします。4年ぶりのAndroidネイティブアプリ開発、旅行業界という複雑なドメイン理解、これら二重のハードルを、AIを装着することでどのように乗り越えたかをリアルに綴りたいと思います。
 
最後まで読んでいただけたら嬉しいです。AIと働く時代の「最初の壁」をどう超えるか、ひとつのリアルな実例になればと思います。
 

自己紹介

まず、簡単に私の自己紹介をさせてください。
前々職までは主にAndroidアプリエンジニアとして働きつつ、iOSアプリの開発にも携わってきました。前職ではFlutterアプリの開発からキャリアをスタートし、バックエンドやWebフロントエンドへと領域を広げ、最終的には複数のプロダクトチームを統括するEngineering Managerを務めていました。
2025年3月に令和トラベルへ入社し、NEWTアプリのAndroidアプリエンジニアとして復帰しました。また、兼務として組織開発と技術広報を担うEngineering OfficeのDeveloper SuccessグループおよびTech Brandingグループにも所属しており、エンジニア組織を加速させる取り組みや、カンファレンス、テックブログなどの外部発信などの技術広報についてもチームメンバーと共に活動しています。
 
直近、社内AIハッカソンイベントを企画し実施まで行ったイベントレポートもDeveloper Success活動の文脈で詳細に公開していますのでぜひ以下もご覧いただければと思います。
 

ぶつかった壁:4年のブランクと未知のドメイン

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ちょうど2025年の年明けから、生成AIやCoding Agentは一気に ”日常に組み込まれる存在” になっていった印象があります。CursorやFirebenderのようなCodingをサポートしてくれるサービス、GeminiやOpenAIの大規模言語モデルが次々と凄まじい進化を遂げ、AIサービスが日常業務において一気に身近な存在となりました。
令和トラベルでは、私の入社以前よりAI活用に対してのアンテナ感度は高く、入社前に1ヶ月ほど有休消化をしている間にも、CEOの篠塚がX上でAIについて熱量高く発信しており、このタイミングで転職と有休消化をしてしまった自分に焦りが募るぐらいでした。
 

技術的ギャップ:4年ぶりのAndroid復帰

私がAndroidアプリ開発を離れてからの数年間で、Android界隈は大きく変わっていました。2021年当時は Jetpack Compose も Kotlin Coroutine もまだまだプロダクトアプリでの採用を行っているケースは少なかったところが、今ではデファクトスタンダードとして採用されるようになっていたのは大きな時の流れを感じました。
私が最後にプロダクト開発で行っていたAndroidアプリではXMLでのレイアウト構築、RxJavaを使った非同期処理だったため、Androidアプリ開発での中心技術が全て入れ替わっているような状況に直面しました。
 
NEWTのAndroidアプリでも Jetpack Compose、Kotlin Coroutine はスタンダードとして採用されており、まさに ”モダンなAndroidアプリ開発の現場” がそこにありました。
令和トラベルの採用面接でも、モダンな技術で開発が行われていることは聞いていたため、入社前より本を読んだり、個人アプリの開発でこれら現代でデファクトとなっている技術を実際に手を動かしながら試し、キャッチアップを進めながら、開発の感覚を取り戻していきました。
 
それでも、いざ実践に入り個人アプリやサンプルコードでは表現しきれない大きな課題を解決するためのプロダクトアプリの大きさを目の前にすると、補い切れていない部分は多く、AIを介してコードの全体像を読み解いたり、設計意図を探るプロセスが重要になりました。
 

ドメイン理解の壁:旅行業界の複雑さ

旅行業界は、想像以上に複雑であることを令和トラベルへの入社直後に実感しました。
「旅行」をする側だった自分からすると、入社前は「航空券や宿泊先を予約して、決済する」というシンプルなアクションしか見えていませんでした。しかし、その一連の流れの裏側には「国や地域毎の課税ルール」「空港ごとの運用」「複数のサービスにまたがるAPIをまとめて、旅行アプリ1つに体験よく見せる」などが網の目のように絡まっていたのです。
 
特に、NEWTのような海外ツアーを取り扱っているプロダクトでは、目的地・宿泊先の様々な変数を、アプリのUI上で “かんたん” に使ってもらえるような表現をするために、ロジックとしても多様な条件分岐が存在しています。
自分自身、海外旅行の経験がそこまで多くなかったこともあり、仕様や設計の背景にある「なぜそうなっているのか?」を咀嚼するのに時間がかかりました。社内のドキュメントやオンボーディングコンテンツは充実しているものの、それでも理解が追いつかず、別のアプローチが必要でした。
予約や在庫だけでなく、国ごとの税制やUI上での扱いまで、膨大な背景知識が求められる領域。過去にも複雑な業界経験があった自分でも、旅行領域は想像以上に情報量が多く、一際難易度の高いドメインであることを実感しました。
そこで、AIの出番です。
 

突破口:AIを相棒にしたキャッチアップ術

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Coding Agentによるコードベース理解

NEWTのAndroidコードベースは、すでにリリースから時間が経っており一定の大きさを持ったリポジトリになっていました。
モダンなアーキテクチャや技術選定が最初からなされていたこともあり、設計は非常に整理されていて綺麗でしたが、あたらしく入った自分にとっては、まず全体の構造を理解しないと「どのファイルを読めばいいか」「どこを触ると影響が出るのか」すら判断が難しい状態でした。
 
そこで活用したのが、Cursor や Firebender といった Coding Agent です。
これらはリポジトリを読み込んで、特定の仕様や変更に関連するコードをマッピングしてくれるため、「この仕様に関わる処理はどこにある?」「この画面の遷移はどのレイヤーで制御されている?」といった質問に対し、数秒で糸口を提示してくれました。
 
AIと壁打ちをしながら設計を理解していくことで、自分の中でコードと仕様の対応関係が一気に整理され、それまでは「この画面、どこで表示制御されてるの?」と手探り状態だったのが、AIとの対話を通じて「このレイヤーを見れば全体がつかめる」と判断できるようになりました。
入社1週間で複数のPull Requestを立ち上げることができたのは、まさにAIの力があってこそだと実感しています。
 

GeminiとNotion AIによるドメイン習得

令和トラベルは、ドキュメントなどの社内資料は非常に充実していました。一方で、このような状況下で「今この情報を確認したい」という瞬間に、必要な情報へすぐにアクセスするのは意外と難しいものです。
そこで、Google Workspace での Google Gemini にドキュメントを読み込ませ、要点を抽出させたり、 わからなくなったときには自然言語で質問して補足情報を引き出すようにしていました。これらのAIを活用することで、相手に配慮することなく同じ質問を何度でも繰り返せたり、気になったタイミングでラフに質問できたりするようになりました。
 
さらに、自分のペースで深掘りも自在に行えます。業務中も “隣にアシスタントがいる” ような感覚が生まれ、まるで補助輪をつけたかのように、自走までのスピードを大きく高めることができました。
さらにNotion AIを使って、「なぜこれをやるのか?」「この変更は何に対する価値提供なのか?」という、Why / Whatの背景理解を深掘ることができました。ただ内容をなぞるのではなく、自分の理解レベルに引き寄せて反復できるのがAIならではの強みだと感じています。
 
入社時に整備されたオンボーディングやドキュメントを Google Gemini に読み込ませ、要点抽出やQ&Aでドメインを効率的に理解。Notion AIを使って「なぜこの仕様があるのか?」といった背景と目的の理解(Why / What)を強化し、AIとの対話の中で自然に咀嚼していける仕組みを自分の中で構築しながら進めました。
 

AIをコーチに変える:振る舞いのデザイン

令和トラベルでは、様々なAIツールの利用が正式に許可されており、全メンバーがAIとの共存を前提とした働き方にシフトしています。
これはありがたい環境で、自分もその前提のもと、AIを “ただの情報提供者” としてではなく、“コーチ” として設計するようにしました。
たとえば、AIに対してプロンプトなどで「令和トラベル創業期からNEWT Android開発に携わってきたシニアエンジニア」という人格を与え、その目線から自分の質問に答えてもらうようにしました。単なる技術情報ではなく、「この設計はなぜこうなっているのか?」「過去の背景を踏まえるとこの仕様にどういう意図があったのか?」といったコンテキストの深いアドバイスを引き出すことができました。
 
こうしたAIのロール設計は、AI活用において非常に効果が高く、自分のように一気にキャッチアップしなければいけないフェーズでは特に価値があると感じました。メンターが隣にいてくれる感覚で、何度でも気兼ねなく、基本的なことでも遠慮せず質問できる存在を自分で設計できる。
これはまさにAI時代の新しい入社後の立ち上がり方だと思います。
 

AIで立ち上がったからこそ、見えたこと

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この体験を通じて、数年のブランクやあたらしいドメインへのチャレンジは、AIの支援を前提にすれば大きな問題にはならないと実感することができました。
そして、オンボーディングにおける立ち上がりとは、「数週間かけて覚えるもの」から「AIと共に1週間で自走するもの」へと変わりつつあると強く感じることもできました。
このスピード感を前提にしているか否かで、立ち上がりの “1週間と3週間” という大きな差が生まれ得るとさえ感じます。
 
私の今後としては、この経験を活かして、令和トラベルでの新入社員だれもがAIを使って立ち上がれるオンボーディングの仕組み作りに、組織開発という面から積極的に取り組んでいきたいと考えています。
 

おわりに

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
今回は、入社エントリという位置づけの記事ではありつつも、オンボーディング期間において自分が置かれていた状況や抱えていた課題に対して、AIを使い実際に早い(と自認している)立ち上がりを自走できたプロセスに触れながら、「どういう仕組みを取り入れ、どういう意識で取り組んだのか」、試行錯誤していく中で得られた知見をご紹介しました。
 
昨今、世の中が “AIと一緒に、どう生産性をあげていくか” と命題において、急激に変化を求められていると感じます。そんな中、令和トラベルではAIを使ったあらゆる物事に「Try」できる環境が整っています。
まだまだ ”スタンダード” が世の中で固まりきっていないこの過渡期の中で、AIファーストペンギンとして大胆に「Try」してプロダクト、会社組織をより強固なものにしていく。そんな価値観に共感していただける方は、カジュアル面談も実施出来ますので、以下よりお声がけいただければと思います。
 

8月開催のLT会は、 ”AI x フロントエンド “がテーマ!

8月の「NEWT Tech Talk」は、NEWTのプロダクト開発を牽引するフロントエンドチームよりyassan、Ippo Matsuiの2名が登壇!
さらに今回は特別ゲストとして、LAPRAS株式会社からRyo Kawamataさん、Dress Code株式会社からYuji Yamaguchiさんをお迎えし、”AIが加速させるフロントエンド開発の未来 〜実装とUXの最前線〜” と題して、LT形式で発表を行います。
 
そのほか、毎月開催している技術発信イベントについては、connpass にてメンバー登録して最新情報をお見逃しなく!
 

令和トラベルでは一緒に働く仲間を募集しています

この記事を読んで会社やプロダクトについて興味を持ってくれた方は、ぜひご連絡お待ちしています!お気軽にお問い合わせください!
フランクに話だけでも聞きたいという方は、カジュアル面談も実施できますので、お気軽にお声がけください。
 
それでは次回のブログもお楽しみに!Have a nice trip ✈️

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