
こんにちは!令和トラベル エンジニアリングオフィスです。
2025年9月17日、旅行アプリ『NEWT(ニュート)』は、株式会社シーナッツが提供する宿泊施設向け販売管理システム「TL-リンカーン」とのシステム連携を開始し、ホテル事業を本格的にスタートしました。
今回の記事では、外部サービス中心のシステム構造から脱し、ホテル事業の基盤を支える「NEWT Partner Hub」の “ゼロイチ” のプロダクト開発の裏側についてご紹介します。
半年を超える大規模プロジェクトにおける挑戦や課題、その過程で得たナレッジ、そしてこれからの展望について、プロジェクトメンバーが対談形式で語ります。
この記事に登場するひと





全員でゼロから走り出した、半年を超える挑戦のはじまり
yoshikei: あらためて、よろしくお願いします!まずはプロジェクトの背景や概要について、rihoさんから教えてください。
riho: よろしくお願いします。プロジェクト始動は、2025年1月のキックオフからでした。
ホテル事業の次のステージとして、宿泊施設さまと令和トラベルが直接契約することで品揃えの強化や収益性を改善できる仕組みを構築することが重要命題で、そのためには宿泊施設さまがNEWTに掲載・予約管理を行う管理画面の構築が必要不可欠でした。
今回のプロジェクトは、その管理画面「NEWT Partner Hub」をゼロから作るという令和トラベル史上最大の半年を超える大規模プロジェクトとなりました。
yoshikei: PMだけでなく、デザイナー、エンジニア、QAなど、多くのメンバーが関わっていたと思うのですが、rihoさんはPMとしてどのようにプロジェクトを進めていったんですか?
riho:「NEWT Partner Hub」のプロジェクトの特徴は、「ゼロから全員で走り始めた」ということです。全員で考えるという進め方で論点を出し合い、「これはエンジニアが考える」「ここはPMが考える」「ここはデザイナーファーストで考える」といった形で、それぞれのスコープや役割を決めて走り出しました。
yoshikei:そのなかで、PMの役割としてどのように進めていったんですか?
riho:私自身は、「何を作るべきか」を固めるため、他社サービスの管理画面の徹底的な調査からスタートしました。
ただ、BtoBのサービスは toCサービスと違って気軽に他社プロダクトを触れないので、情報を集めるのが本当に大変で、断片的な情報をつなぎ合わせながら、どういう機能が必要なのかを見極めていきました。
「ミニマムで作りたい」と言いつつも、全量を把握しきれていないから宿泊施設さまにとって何が本当に“必要不可欠”なのかが分からない。常に「クリティカルな部分を削っていないか?」という不安と隣り合わせでした。

yoshikei: 半年を超えるの大規模プロジェクトで、しかもゼロから基盤を作るというチャレンジ。エンジニア視点で、kitaさんはどうでしたか?
kita: 最初は、「3ヶ月あればなんとかなるだろう」というざっくりした見積りで、とにかく最速でやり遂げるんだ、という意気込みでスタートしました。
でも、いざプロジェクトが始動すると、何を作るのかすら曖昧な状況で、具体的な要件が固まるまでのプロセスやその後の開発プロセスにも想像以上に時間がかかりました。
yoshikei:そんななかでどのようにプロジェクトを軌道に乗せていったんですか?
kita:やりたいことを明確にして、「直契約の宿泊施設をNEWTに掲載する基盤を作る」「サイトコントローラーと外部連携すること」、まずはそこにフォーカスして進めました。
検証していくなかで、当初考えていた接続方式では要件を満たせないことが発覚したりして、再設計したりするなかで、想定よりは時間はかかりましたが、だんだんと “NEWT Partner Hub のあるべき姿” が見えてきた感覚はありました。
yoshikei:なるほど。デザイナー視点ではどうでしたか?
napo:私もはじめは「なにから作ればいいんだろう?」という状態ではありました。でも、止まっていても始まらないので、とにかく手を動かして形にすることを意識しました。
“絵” があると議論が進むので、まず叩き台としてデザインを起こす。そうするとPMやエンジニアから「こうした方がいい」「この仕様は変えよう」と意見が出てきて、結果的に方向性が明確になっていきました。

“後発でも選ばれる” プロダクトを目指して
yoshikei:9ヶ月という長期プロジェクトになると、会社としての体制の変化もあったと思うのですが、どのようにプロジェクトを推進していったんですか?
riho:プロジェクト始動当初は、特定の担当者と深く詰めて進めるやり方をしていました。ただ、途中でチームの体制が変わったりすると、「この話、だれまで共有したっけ?」という状況が多くなり、そこからはドキュメントを整備し、全員に共有するスタイルに切り替えたんです。
スピードを優先しつつも、情報の透明性を上げて、属人化しないように意識してプロジェクトを進めていきました。
yoshikei:”後発だけど、選ばれるプロダクト” にするために、初期リリースでどこまでやるかという議論は常にあったかと思うのですが、記憶に残っているエピソードはありますか?
napo:デザイナーの立場として一番議論が白熱したのは、「初期のデザインのテイストをどこまで追求するか」という論点でした。ミニマムリリースを目指す一方で、「後発でもNEWTらしい、使いやすさで勝つものにしたい」という想いが強かったんですよね。

yoshikei:社内でもさまざま意見がありましたよね。
napo:そうなんです。結果的に、”必要最小限の中で最高の使いやすさを目指す” という方針で着地し、業界のUXトレンドを調査しながら、デザイン作成の初期段階からプロダクトにのせていきました。この点が、合意形成や調整が最も大変なポイントでしたね。
yoshikei:途中から、ビジネスサイドのホテルセールスチームが参画してくれたことは大きかったんじゃないですか?
napo:まさにですね。ホテルセールスチームのみなさんが、宿泊施設さまの具体的な操作イメージやペインを共有してくれるようになったことで、「使うひと」の解像度が格段にあがり、UXの設計がしやすくなりました。
リリース後に「迷わず使えた」「他の管理画面より使いやすい」と言ってもらえた時は本当にうれしかったですね。
AIが支える、開発スピードと再現性の実現
yoshikei:エンジニアの立場として、プロダクト開発におけるハードルはどこにありましたか?
kita:外部サイトコントローラーとの調整は課題もあり、苦労したポイントでもありました。私たちと先方の価値観や方向性が異なるなかで、折り合いをつけながら達成したいゴールに向けて調整・推進が必要だったので、想定より時間はかかりましたが、丁寧に進めて着地させていきました。
yoshikei:想定より時間がかかる、というなかで開発プロセスにおけるAI活用がポイントになったのでは、と思うのですがどうでしたか?
kita:そうですね。リソースが限られている中で、求められる開発スピードとプロダクト品質の両軸を担保していくには、AI にコーディングをしてもらう前提で仕組みをつくることに賭け、どのモデルやツールを使うか、どういうルールで開発を進めるかを日々話し合い、ブラッシュアップしていきました。
最終的には、7〜8割のコードをAIが生成する状態となり、途中から参画したエンジニアもすぐにプロジェクトにキャッチアップできるようになりました。結果的に、AIがプロジェクトや開発チーム全体のスピードを支える仕組みになったと思います。

初期段階から品質を考える。スピードと品質を両立する挑戦
yoshikei: aoさんは、プロジェクトの途中からの参画だったと思うのですが、どんな役割でジョインしたんですか?
ao: 私は4月〜5月ごろからジョインしました。すでに「こういう方向性で進む」という道筋は見えていましたが、QAとしてはまだプロダクトを触れない段階。参画してすぐは、設計や仕様資料を読み込みながら、テスト方針を固めることに時間を使いました。
カスタマーが検索・予約するためのNEWTのホテルAPIの差し替え、NEWT Partner Hubの公開とNEWT Partner Hubで設定したホテルをNEWTで表示・予約という2つのリリースを予定していました。
それぞれが大規模なリリースになると分かっていたので「どんな不具合を起こしてはいけないか」「どの機能を重点的に見るべきか」を整理し、初期段階から品質を考えるベースを作っていきました。
yoshikei: 既存のプロダクトであるNEWTに影響を出さないことは、リリースにおいて最も気を遣うべき点だったかと思うのですが、品質を確保するためにどのように進めていきましたか?
ao: そうですね。 NEWT Partner Hub自体は新規プロダクトでしたが、既存システムに影響を出さないように進めるということが最重要でした。特にAPIの差し替えフェーズでは、どの画面から順に切り替えるかをエンジニアと綿密に調整し、できた画面からテスト開始しました。
最終的に、全画面を対象にしたリグレッションテスト期間を確保して、カスタマーが通る予約やキャンセルなどのケースを一通り網羅することができたので、「短い期間でも細かく丁寧に」進めたことが成功につながったと思っています。

チームで迎えたリリース 。 “使いやすさ” にすべてを込めて
yoshikei:そして、9月17日にNEWT Partner Hubのリリースを迎えました。当日のこと、覚えてますか?
napo:全員で会議室に集まって、本番環境に反映される瞬間を見守っていましたよね。不安もありましたが、「直感的に使えた」「説明がなくても分かる」と宿泊施設さまからフィードバックをもらえて、めちゃくちゃうれしかったです。
プロジェクトメンバー全員で「使い勝手の良さってなんだろう」ということを考え抜いた結果だし、後発だからこそそのハードルが上がっているなかで、宿泊施設さまから良い反応をもらえたことは本当に良かったと思っています。

riho:そうですね。全員がロールにとらわれず、一緒に考え抜いて、”PMが言ったものをただつくる” のではなく、考慮漏れを拾ってくれたり、要件を満たしつつもよりミニマムな方法を常に模索・提案してくれたり、プロジェクトメンバー全員のそういった姿勢が、リリース後に大きなトラブルもなく、成功につながった “鍵” だったと感じます。
リリースはゴールではなく、”スタートライン”
yoshikei: 9ヶ月にわたる長く、大規模なプロジェクトへの挑戦でしたが、NEWT Partner Hubプロジェクトに関わった感想をそれぞれ教えてください。

kita:無事にリリースを迎えることはできましたが、ゴールではなく、“スタートライン” に立ったばかりです。まだまだ他システムとの連携や機能拡張も必要ですし、これからは「事業を成長させる基盤」としてプロダクトを育てていきたいと思っています。
napo:デザインの観点では、「リリースして終わり」ではなく、実際に使われてからどう改善するかを考えるフェーズに入ったと思っています。
ホテルセールスチームや宿泊施設のみなさまの声を聞きながら、”愛されるプロダクト” を目指して、プロダクトを磨いていきたいと思っています。

ao:QAの立場からは、リリースを経てようやく “本当の品質” を見られるようになったと思っています。テストでは見えなかった「実際の使われ方」や、ユーザーである宿泊施設様の反応を見ながら、次の改善サイクルにどう活かすかがこれからの挑戦です。
また、このプロジェクトを通して「QAが早期から関わる重要性」を強く実感したので、今後はより上流から品質を作り込む文化を広げていきたいと思っています。
riho:私自身プロダクト構築をゼロから考えることが初めてだったり、「宿泊施設さまの業務」というドメインもこれまでの経験に似て非なるもので、また、チーム全体でいくと、エンジニア・デザイナーがPMに染み出したり、iOSエンジニアがBackend領域に挑戦したり、”経験や職能の枠を超えたチャレンジ” が多くありました。
”自分の専門に閉じず、幅を広げられる”。令和トラベルならではのカルチャーが体現された、そんなプロジェクトになったんじゃないかなと思います。
yoshikei:ありがとうございました。このプロジェクトを見ていて感じたのは、“スピード” と “共創” を両立しようとするチームの姿勢でした。体制や優先順位が変わっても、だれも「自分の担当外だから」と線を引かない。それが結果的に、事業の中核を支えるプロダクトを生み出したのだと心から思っています。
まずは、長期にわたる大規模プロジェクトの完遂、本当におつかれさまでした!そして、kitaさんの言う通り、これはスタートラインだと思っていますので、新たな気持ちでチャレンジを続けていきましょう!

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