エンジニア全員で品質を創る令和トラベルのフルスタック戦略と、QAエンジニアのキャリア

published
published
author
authorDisplayName
Sakurai Mizuki
category
EM
QA
mainImage
20251107_KV.png
publishedAt
Nov 7, 2025
slug
onsidering-the-career-possibilities-for-qa-engineers
tags
QA
開発生産性
組織開発
notion image
 
こんにちは!令和トラベルの miisan です。
令和トラベルは2022年4月、旅行アプリ『NEWT(ニュート)』プロダクトローンチ前からQA文化を醸成しながら、サービス提供してきました。
サービスローンチ前から品質保証に力を入れてきた私たちが、AI共生時代における”境界線が消える世界”の中でのQAのあり方について再考しました。
 
私がQA戦略について触れる記事は、実に約1年半ぶりとなってしまいましたが、令和トラベルに1人目QAエンジニアとして入社した時に思い描いていた3ヵ年計画を駆け抜けた今、新たなフェーズに進み始めた私たちのマインドシェアをしてみようと思います。
 
▶︎ 2年間の振り返りについてはこちらをご参照ください。
スタートアップ企業をスケールアップするためのQA戦略
 
2025年10月から、これまで独立して機能していた「QAグループ」を、エンジニアリンググループに統合することにしました。単なる組織変更ではなく、品質保証のあり方を根本から見直し、AIが前提となる時代に最適化された開発体制へとシフトするための、未来に向けた戦略的な一手と考えています。
 
この記事では、なぜ私たちがこの選択をしたのか、そしてその先でQAエンジニアにどのようなキャリアの可能性が広がっているのかについて、先日登壇したイベント(※)の内容も踏まえてお話しします。
※この記事は、2025年9月のイベントでお話しした「境界線が消える世界におけるQAエンジニアのキャリアの可能性を考える」の内容に基づいています。

令和トラベルのエンジニア戦略と私たちを取り巻く変化

品質とスピードのトレードオン実現に向けて

notion image
2025年上期から、エンジニアリング組織としてできることとして、事業目標達成に必要な「生産量爆上げ🚀」を組織全体として目指し突き進んできました。
2025年度のエンジニアリング戦略は「AIを活用し、迅速かつ高品質な開発を可能にするエンジニアリング組織を構築すること」と掲げ、生産性・品質・組織それぞれが自転する仕組みと体制を鑑みながら、2025年前半戦を走り切りました。
 
結果的に半期を乗り越え、開発サイクルタイムは前期比30%改善、開発業務におけるAI活用率も平均30%を超える進化を遂げました。
 
こうした全体の方向性を実現するために、QAチームとしては「開発チーム全体を巻き込んだ品質向上」や「QAプロセス自体の生産性向上(自動化、AI活用)」を進めていきました。
QA文脈において、人に依存せずに品質保証を実現する形を一定構築し、乗り越えることができました。結果としてエンジニア1人あたりの開発アクティビティ量が前期比32%増加したなかで、品質とスピードの両立を達成することができました。
 
notion image
 

令和トラベルのプロダクト・事業変化

令和トラベルのサービスはすでにフェーズの異なる複数のプロダクトが存在しています。
 
  • ツアー事業 : グロースフェーズ・今時点での主力事業
  • ホテル事業:今年から国内ホテル事業に本格的に参入
  • トラベルマネジメントシステム:ツアー事業のデジタル化・完全自動化を目指す基幹システム
  • AIチャットエージェント「NEWT Chat(ニュートチャット):立ち上げフェーズの新規事業
 
このようにNEWTでは徐々にフェーズの異なる事業および攻め方の異なるサービスを展開しているため、一辺倒なやり方だけではそれぞれにあった価値提供ができません。
QAメンバーのアサインの仕方、品質水準や作り込み方など、各チームで最適な品質とスピードのトレードオンを目指し、プロダクト全体で高品質と開発生産性を追い求めていく必要があります。
 
またNEWTの事業ポートフォリオはまだまだ拡大予定で、中長期で見た時のスケーラビリティを担保する必要があります。
notion image
 
事業フェーズの変化、時流の変化などを捉え、より長期的なスパンで全体を見据えた時、懸念したのは「品質保証が開発スピードのボトルネックになるのではないか?」ということです。アウトプットが増える一方で、その速度に品質保証が追いつかず、結果的に技術的負債が高速で積み上がり、サービスの持続可能性を損なうリスクを感じました。
さらなるスピードアップを目指す中、従来のやり方には限界があると判断し、下期から大きな戦略転換を決定することにしました。
 

私たちの新しい戦略:全員で品質を創るフルサイクル体制へ

notion image
様々な背景から、私たちは「役割分担」から「役割の内包化」へのシフトチェンジを決断しました。
これはQA組織だけの話ではなく、令和トラベルのエンジニア組織全体のフルスタック戦略への転換を意味します。
これまで専門性に特化したグループごとに組織を構成していた形から、エンジニア全体でのフルスタック戦略に舵をきることにしました。
 
notion image
 
品質保証が弱まり負債の露呈が早まる懸念を回避するために、フルスタック化する環境におけるQA配置の重要性を意識した上で、QAのアサインだけでなく、品質保証の仕組みをどのように組織に装着するのか再検討しました。
 
その中で、「QAグループ」も、エンジニアリンググループに完全に統合することにしました。QAエンジニア自身の役割の越境もですが、ソフトウェアエンジニア全員に”QAスキル”を身につけてもらうための双方向の染み出しを狙ったものです。
 
QAエンジニアは最後の砦としてリリース直前に構えるのではなく、これまで以上に深く開発プロセス全体に入り込み、事業の「価値共創」そのものにコミットするメンバーの一人として貢献していきたいと考えています。
 
「QAグループ」を組織のどこに配置するか?については、2024年下期頃から私の中では思考を続けていたテーマでした。(昨年のJaSST'24 Tokaiの中でもテーマになり、お話ししました。
色々な思考と、環境変化などを鑑み、最終的に2025年10月から、ソフトウェアエンジニアのフルスタック化を目指す中で、QA文化も内包することにしました。
 
QAというグループがなくても私たちが培ってきた品質文化はなくならないと思ったことと、私たちのやるべきことの大きな本質はこれまでと変わらず、よりコミットメントすべきコトが明確になったと考えています。
 

QAエンジニアのキャリア:「越境」と「深化」の二刀流

組織の形が変わる中で、私たちQAエンジニア個人のキャリアにはどのような可能性が生まれるのでしょうか。私は、その鍵が「協働」、すなわち役割を越えていく力にあると考えています。
具体的には、2つのことを考えており、令和トラベルのQAエンジニアには以下のような新たな経験を積んでもらえるような役割やアサインを目指しています。
 

1. 職能の越境(インクルーシブ)

QAエンジニアが培ってきたスキル、特に物事を抽象化し、多様なケースを想定し、プロセスを構築する力は、非常に汎用性が高いものです。
実際に弊社のQAエンジニアは、プロジェクトに応じて柔軟に役割を越境しています。
 
私自身、2025年に入ってからコーポレートデザイン領域におけるミッションを担い推進してきましたが、QAエンジニアとしてのスキルや経験を応用することで乗り越えられた壁がたくさんありました。
QAエンジニアとして身につけたスキルは、最強のポータブルスキルだと思います。
 
複数の強みを持つことで、個人のキャリアは大きく広がります。個人の越境範囲を拡大することで、これまで以上に早まる事業変化に適応でき、ゼロイチフェーズからスケールアップするフェーズまで、あらゆる変化に柔軟に応えていくことができます。
 

2. 専門性の深化(フルスタックQAエンジニア)

もう一つの方向性は、QAとしての専門性を高めることです。
これまで、テスト設計、テスト自動化、分析、プロセス改善といった多様なQAスキルは「チーム」で担保していました。ただ、AIと協業することで、個人がハイレベルに「フルスタックQAエンジニア」として体現できる可能性が高まったと考えています。
 
「私とAIがいれば、フルスタックなQAが実現できる」。そんな状態を目指し、AIをメンバーの一人に迎え、効果的にコントロールできることで、可能性を広げていけると考えています。
事業フェーズの変化や開発スピードが速く、数ヶ月先の予測が困難な中で、1人のQAエンジニアがカバーできる範囲が深まることは、プロダクトや事業の発展を強力にサポートすることができると思っています。
AIを相棒にする「フルスタックQAエンジニア」へ可能性を広げていくことで、専門性をより事業貢献に繋げていけるはずです。

令和トラベルが目指す未来

令和トラベルは、「AIファーストカンパニー」になることを目指し、全社でAX化実現を推進しています。先日、AX室も設立され、私も全社のAX化に向け、日々奮闘しています。
 
とはいえ私自身、AIの台頭をストレスに感じること、疲弊感を覚えることもあります。ですが、ゲームチェンジできるチャンスだとも捉えています。
 
おそらく以前の私であれば、組織の形や戦略の大幅な見直しの意思決定をすることはできなかったと思います。
ですが、「役割」「職能」の壁が薄れていく未来に進む中、QAのスタンスや役割が止まっていていいわけがありません。
 
今後、10Xで加速していく世界では、ソフトウェア開発工程全体が進化していくでしょうし、現在のやり方・開発手法のままではうまくいかなくなります。ものづくりのバトンの受け渡しが高速化する中で、事業成長やサービスグロースを支える品質保証のあり方、QAエンジニアの価値提供の形はなんなのか。
これまでの延長線上の思考ではなく、新しい発想で未来を構想すること、またこの変化を「組織」と「個人」の両面セットで、同時に構成し直すことが大事だと考えています。
 
すでに10月から、開発手法やサイクルを見直しながら、プロダクト開発を続けています。JIRAやNotionをベースとしたスタイルからGitHubへの完全移行、1週間スプリントの廃止、100%AI開発によるコミットメントの増幅など、、、さまざまなトライがすでにプロダクト開発組織の中で生まれつつあります。こうしたチャレンジを定量的にモニタリングしながら、ベストプラクティスを模索しています。
おそらくこの時代の変化に沿った、ベストプラクティスはまだ存在していない可能性があります。だからといって、それを待つのではなく、フロンティア精神で先陣を切り、自分たちで考え、試し、失敗し学んだ上で、私たちの最適解を見つけていくしかありません。
 
この挑戦の結果がどうなるのかまだわかりませんが、正解のない時代においてもすべてはあたらしい挑戦からはじまると信じています。スタートアップにおける開発速度と品質(堅牢性)の両立を新しいフェーズにおいても私たちは目指していきます!
 

令和トラベルでは一緒に働くQAエンジニアを募集しています!

令和トラベルでは、この変革に共に挑戦するQAエンジニアを募集しています。従来の枠を超え、新しい価値を創造したいという方は、ぜひお話しさせてください。
「開発と品質保証の架け橋」「サービス・ビジネスとの架け橋」となり、サービス品質全体を向上させるためにたくさんのチャレンジや越境を楽しみながら、あたらしい旅行を作っていきたいという想いのある方と挑戦したいと思っています!
 
冒頭で触れた通り、NEWTはまだまだ未完成のプロダクトなので、成長機会もたくさんあります。ゼロイチからグロースフェーズ、toCとtoBプロダクトなどさまざまな経験がつめる環境です。変化に合わせ、サービス品質向上をリードしたいという方に挑戦していただきたいです。
QAエンジニアとしてだけでなく、事業に貢献できるソフトウェアエンジニアになれることをお約束します🙌
 
2025年に入ってからのさまざまなチャレンジをメンバー一人一人が取り組んでいるので、メンバーからの発信もお楽しみに!今後は継続的にQAに関する発信をしていきます💪
 
 
この記事を読んで会社やプロダクトについて興味を持ってくれた方は、ぜひご連絡お待ちしています!お気軽にお問い合わせください!
フランクに話だけでも聞きたいという方は、カジュアル面談も実施できますので、お気軽にお声がけください。
 

📣 12月のイベント開催のお知らせ

令和トラベルでは、毎月技術的な知識や知見・成果を共有するLT会を毎月実施しています。発表テーマや令和トラベルに興味をお持ちいただいた方は、誰でも気軽に参加いただけます。

【12/4開催!】2025年総決算!エンジニアリングマネージャーお悩み相談室 LIVE

2025年最後のイベントとなる「NEWT Tech Talk Vol.19」は エンジニアリングマネージャーお悩み相談室 を開催いたします!当日は、株式会社カケハシ・株式会社スマートバンク・株式会社LayerXを交えパネルディスカッションを開催。
2025年7月7日に発売された書籍『エンジニアリングマネージャーお悩み相談室』の著者と、書籍レビューに参加したEM実践者たちが集い、EMたちのさまざまな課題や悩み、またそれに対する解やアプローチについてここ限りのオフレコトークを語り合います!
 
そのほか、毎月開催している技術発信イベントについては、connpass にてメンバー登録して最新情報をお見逃しなく!
 
それでは次回のブログもお楽しみに!Have a nice trip ✈️
 
 

# QA

# 開発生産性

# 組織開発