事業フェーズにあわせた組織開発とマネジメントスタイルの変遷

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Dec 24, 2024
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Keisuke Yoshida
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この記事は、「NEWT Product Advent Calendar 2024」Day 17 および「Engineering Manager Advent Calendar 2024」Day 24 の記事となります。
 
こんにちは!NEWT Product Advent Calendar 2024」17日目は、令和トラベル のエンジニアリングマネージャー (以下、EM) 兼モバイルエンジニアのyoshikeiが、iOSエンジニア Rickからバトンをもらい、「事業フェーズにあわせた組織開発とマネジメントスタイルの変遷」について紹介します。ぜひ最後までご覧ください!
 
令和トラベルは2021年4月に創業し、その翌年2022年4月に海外旅行予約アプリ「NEWT(ニュート)」をローンチしました。NEWTをリリースして約2年半でありがたいことに、これまでに4万人を超えるカスタマーの方に海外旅行を提供してきました。
さらに年間の流通額は予約ベースで数十億円と短期間で大きく事業を伸ばしてきました。( Startup CTO of the year 2024 優勝ピッチより )
今回は急成長してきた事業フェーズにあわせてエンジニア組織をどのように進化させてきたのか、またそのときEMとして私自身の役割がどのように変遷してきたのかをお話します。
 
<目次>

はじめに

私自身が令和トラベルと関わり始めたのが、2022年3月とちょうどNEWTがローンチされる直前でした。このときはフルタイムとしてではなく、iOSエンジニアのプロパートナー(PP)*として参画していました。そして、ちょうど1年後の2023年3月からフルタイムとして令和トラベルに正式にジョインしました。このタイミングから前職でもEMをやっていたこともあり、iOSエンジニア兼EMとして組織に関わり始めました。
そのため、今回お話させていただくのは自身がフルタイムとしてジョインした2023年3月から現在 (2024年12月) までの内容になります。
*令和トラベルでは業務委託の方をプロパートナー(PP)と呼んでいます。
 
当時の入社エントリはこちら↓
 

3チーム編成期

NEWT Tech Talk vol.8 登壇資料から抜粋
NEWT Tech Talk vol.8 登壇資料から抜粋
📝
概要:NEWT App, NEWT Web, 基幹システムそれぞれを開発するチーム3つ
時期:2023/3~2024/5
規模:20名程度
役割:プレイングマネージャー (NEWT Appチームのマネジメント & iOSの開発)

やるべきことを愚直に積み重ねてきたフェーズ

2023年3月にジョインしてから2024年5月までは「NEWT App」「NEWT Web」「旅行の裏側をDXする基幹システム」のそれぞれを開発する3つのチーム体制で開発組織を運営していました。
この頃はまだメンバーも少なく、全員がプレーヤーとして動くことが求められるフェーズでした。この時期はプロダクトにおいても、マネジメントにおいても分かりやすくやるべきことが転がっている状態で、それらを如何にスピーディーに解決していくかにコミットメントしていました。
 

プロダクト

2022年4月にNEWTをローンチしてからちょうど1周年を迎える頃でした。最初の1年はコロナ禍が色濃く、そんな中でサービスとしてNEWTが世の中に受け入れられるか、どうPMFするかに注力しプロダクトを作ってきました。
結果ありがたいことに1周年を迎える頃には、予約流通額は2022年度四半期ごとの平均成長率は約176%を達成し、急成長を遂げることができました。
ある程度PMFしたといえる一方で、競合に比べるとまだまだプロダクトに足りない機能が多くある状況、つまり何を機能開発するべきかが明確なフェーズでした。そのため、プロダクト単位でチームを分けて、それぞれをしっかり磨き込んでいく戦略を取りました。
 
1周年記念のプレスリリースから抜粋
1周年記念のプレスリリースから抜粋
 

マネジメント

前述した通り、人数も少なく、プレイヤーが必要なフェーズだったため、私も例に漏れず、NEWT Appチームのマネージャーをやりながら、iOSエンジニアとしてコードを書く動きを取っていました。
このとき、チームにおける開発サイクルやスクラム運用に関しては、一応動いてはいるがしっかり整備された状態ではなく、改善に向けたPDCAを回せる状態ではありませんでした。まず、マネージャーとしてはこのあたりを整備し、改善サイクルを回せる状態にすることに注力しました。
 
また、人数が小規模だったこともあり、属人化によってスピードを出しているような側面がありました。人数が少ない中でドキュメンテーションや標準化を進めても、かけた工数に対するリターンが少ないため初期の頃はこれで良いという判断の元で開発を進めていました。しかし、少しずつプロダクトが進化することで機能が増えたり、組織としても人数が増えてくる中で標準化されていないことがスピードを毀損するフェーズに変わっていきました。
 
この頃から今の3チーム体制でのスケールに限界を感じ始め、開発サイクルやスクラム運用の型化・標準化、ドキュメンテーションや規約の整備による形式知化を進めていきました。
マネジメント観点でもプロダクト同様に、まだまだやった方がいいことが分かりやすく転がっている状態で、それらを愚直に解決していくことで、組織が良くなっていく感覚が得られるようなフェーズだったと思います。
そしてメンバー数が30名に差しかかる頃、次のチーム体制へ移行していくことを決めました。このタイミングで諸々の整備できたからこそ、次のチーム体制にスムーズに移行することができたと思っています。
 
3チーム体制時代にNEWT Appチームとして取り組んできた内容をまとめた記事はこちら
 

ミッション別チーム トライ期

NEWT Tech Talk vol.8 登壇資料から抜粋
NEWT Tech Talk vol.8 登壇資料から抜粋
📝
概要:職能横断のミッション別チームへ挑戦
時期:2024/5~2024/10
規模:30名程度
役割:複数チームのマネージャー
 

組織・プロダクトともにあらたな進化が求められるフェーズに

2024年5月からあたらしく職能横断のミッション別チームの体制を組成しました。メンバーも増えてきて、徐々に元の3チーム体制では適切なサイズ感でチームを運用するのが困難になってきていました。
またプロダクトにおいて、一定の基本機能は揃ってきており、効果が分かりやすい施策を積み重ねていくフェーズから、確度の高い洗練された施策やNEWT独自の価値を生み出す機能開発が求められるフェーズに変わってきていました。
そのため、プロダクトとマネジメントどちらの観点においても、あたらしいスタイルでの動きを検討し、進化が求められていました。
このタイミングで、プロダクト組織の構造を1つのUnit体制から主に組織開発を担当する開発イネーブリングUnitを新設し、プロダクト開発・組織開発の合計2つのUnit体制で運営を始めました。
当時のプロダクト組織の体制図
当時のプロダクト組織の体制図
 

プロダクト

2024年4月でNEWTは2周年を迎えてるタイミングでした。総予約流通総額は、FY2023 4QとFY2024 4Qを比較すると約357%と大幅に成長を遂げており、FY2023 1QからFY2024 4Qまでの8Q連続で過去最高を更新することができました。
また、競合と比べて劣後していたような機能についても、次々に開発を完了し、「プライスキープ」「トラベルリンク」といった旅行アプリとして独自の機能進化も遂げてきていました。ここからさらにプロダクトを進化させるためには、しっかりとプロダクトを分析する基盤を整え、根拠に基づく施策を目的を持って効果的に打っていく必要が出てきました。それと同時に未だ世の中に無いようなあたらしい価値を創造し、機能に落とし込むことで、会社のミッションである「あたらしい旅行を、デザインする。」ための動きも必要になってきました。
そのため、ミッション別にチームを組成して、それぞれのミッションにコミットメントする形でプロダクトを伸ばしていく戦略を取ることにしました。
 
2周年記念のプレスリリースから抜粋
2周年記念のプレスリリースから抜粋
2周年記念のプレスリリースから抜粋
2周年記念のプレスリリースから抜粋
 

マネジメント

この頃からメンバーも増えてきて、自分自身の役割が1人のプレイヤーとして機能開発に貢献するより、マネージャーとして組織づくりに貢献する方がレバレッジが効くようになってきました。
NEWT Appチーム1つをマネジメントしていた3チーム体制の頃から、複数のチームをマネジメントすることになり、マネジメントスタイルにも変化が起きてきました。
1チームのマネジメントをしていた頃は各メンバーの意見や相談を可能な限り吸い出して、それをもとにチームの改善を繰り返してきました。俗にいうサーバントリーダーシップ的なスタイルのマネジメントを行っており、自分自身の特性的にも比較的得意なマネジメントスタイルでした。
そこから体制を変更し、複数チームをマネジメントするようになり、責任範囲とともに見るべき範囲も広がったことで、従来通りのマネジメントスタイルだと段々スピード感が損なわれていく感覚がありました。組織の進化とともに自身のマネジメントスタイルも進化させていく必要がありました。
この頃からこれまで以上に自身の課題設定力と意思決定力を高めることに意識が向くようになりました。メンバーから意見を吸い出すことも引き続き大切にしつつ、時にはマネージャーとして的確に課題のセンターピンを捉え、トップダウンで意思決定をしていく動きを少しずつ実践していきました。
まずあたらしい体制を成立させた上で、違った特性を持った各チームをどう独自に進化させていくか、逆に組織としてチーム間で標準化しておくべきことは何かを模索しながらマネジメントを行っていきました。
まだまだ課題もありながら、結果として新体制を組織に根付かせることができ、次のステップに進むことができました。
 
新体制になったタイミングで狙いや想いを語ったNEWT Tech Talkのイベントレポート
 

ミッション別チーム 定着期

NEWT Tech Talk vol.8 登壇資料から一部抜粋
NEWT Tech Talk vol.8 登壇資料から一部抜粋
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概要:職能横断のミッション別チームの安定化
時期:2024/10~
規模:35名~
役割:すべてのミッション別チームのマネージャー
 

組織のスケールがしっかりとプロダクト進化に繋がるような形を目指して

2024年5月から始めた新体制を見直すタイミングが2024年10月にありました。というのも令和トラベルでは10月が期の切り替わりタイミングで、そのタイミングで改めて事業戦略のアップデートを行います。つまり、プロダクト開発組織におけるミッションにも変化が訪れるタイミングで、ミッション別でチームを組成していることからミッションにあわせてチームを組み替える必要が出てきます。
そのため、新体制を運用してきた中で見えてきたポジティブな面を残しつつ、ネガティブな面は可能な限り解消しながら、そして何よりプロダクトがしっかりとスケールするようにチームの再構築を行いました。
また、このタイミングで2Unitのプロダクト組織体制から横断的にプロダクトと組織を支援する2Unitを追加し、攻めと守りの両軸でよりプロダクト・組織を強固なものにすべく、合計4Unitの体制にアップデートしました。
現在(2024/12時点)のプロダクト組織の体制図
現在(2024/12時点)のプロダクト組織の体制図
 

プロダクト

令和トラベルとしては2024年9月にシリーズAの資金調達を実施し、NEWTアプリもver 3.0 にメジャーアップデートを行いました。今回の資金調達は、テクノロジー分野への投資を加速させ、グローバルにサービスを展開していくという目的がありました。
グローバルに展開するためには国内のみならず、海外の競合とも渡り合えるだけのプロダクトに育てていく必要があります。
さらに今までは戦略として、まずは海外に旅行する日本人をターゲットにしていましたが、グローバルの橋掛かりとして国内旅行やインバウンド旅行に対しても対応していくことも必要です。
そのために組織をより拡大し、並列で重要な機能開発を回すことで、今よりもさらにスピーディーにプロダクトを成長させることが求められました。
NEWT ver.3.0 のプレスリリースから抜粋
NEWT ver.3.0 のプレスリリースから抜粋
 

マネジメント

この頃から中長期を見据えた組織開発の重要性が今まで以上に上がり、100名規模のプロダクト組織にしていくために今何をやるべきか、どういう組織戦略を取るのかについてコミットメントするボリュームが増えました。
また、ミッション別チームをトライし始めた頃に比べてメンバーも増えており、改めてどういう体制で開発を進めていくのが、今取れるベストなのかを考えながらチームの再構築を行いました。そして、自分自身は開発組織全体をマネジメントする立場になりました。
中長期の組織戦略を描くことと、短期的に各チームの状況を俯瞰的に見て、各リーダー陣と連携して期のプロダクト目標を達成することが求められました。
特に組織のこれからを早め早めに検討して動いておくことが一番重要な自分の役割でした。その検討時間を確保するために、チーム運営に関しては適切な形で権限委譲を進めて、どんどんお願いしていきました。チームをスケールさせるためにも権限を委譲していくことは絶対に必要でした。
ミッション別チームが本当にベストな開発組織の形なのか、まだまだ模索しながらにはなりますが、さらなる組織・プロダクトの進化を目指して試行錯誤しています。
 

おわりに

今回は自分がフルタイムとしてジョインしたときからこれまでの事業フェーズの変化とそれにあわせて進化してきた開発組織のスタイル、自身に求められてきた役割の変化についてまとめてみました。こうしてまとめてみると、改めて事業も組織もプロダクトも進化してきているなと実感します。一方で私たちが成そうとしているミッションである「あたらしい旅行を、デザインする。」ためには、まだまだ険しい道のりだなとも痛感させられます。でも、私たちならそれが実現できると信じているし、実現できる組織がしっかり育ってきていると思っています。
 
前述した通り、来年度にはプロダクト組織の100名規模へのスケールを目指しています。今の高い生産性と品質、良い文化を保ちつつ、スケールさせることができるかは、直近の組織設計がかなり重要だと感じています。また、組織内部を整えることと並行して、しっかりと外部に令和トラベルの良さを発信して、共に高い山を登ってくれる仲間を見つける活動も同じくらい重要です。今までのフェーズももちろん重要な局面ばかりでしたが、今のフェーズがこれからの令和トラベルのプロダクト組織を形づくる上でかなり重要な局面だと思っています。
動きが早いスタートアップだからこそ、日々状況が変わり、そのときの正解が変わる中で、組織を信じた方向に前に進めるため、日々奮闘してきました。これからもそこは変わらないと思いつつ、その時々の事業や組織、プロダクトの状況にあわせて、頭を悩ませ、共に成長できる環境はそう多くはないと思っています。
来年また良い報告ができるように、引き続き事業や組織、プロダクトに真剣に向き合っていきます。
 

「NEWT Tech Talk」のお知らせ

令和トラベルでは、技術的な知識や知見・成果を共有するLT会を毎月実施しています。
発表テーマや令和トラベルに興味をお持ちいただいた方は、誰でも気軽に参加いただけます。

2025年1月のテーマは、 ” プロダクトマネジメント ”

新年第1弾のNEWT Tech Talkは、NEWTのプロダクト開発を牽引するPM 藤沼・Backendエンジニア兼PM 木村の2名が、”カスタマーファーストを実現するプロダクトマネジメントの舞台裏” と題して、LT形式で発表を行います。
 

令和トラベルでは一緒に働く仲間を募集しています

この記事を読んで会社やプロダクトについて興味をお持ちいただけましたら、ご連絡お待ちしています!フランクに話だけでも聞きたいという方は、カジュアル面談も実施できますので、お気軽にお声がけください。
 

今年最後の特大セールも開催中!

NEWTでは、12/26 お昼11:59まで、2024年最後のおトクなセールを開催中です!
 

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最後までお読みいただき、ありがとうございました!
いよいよ「NEWT Product Advent Calendar 2024」もラストです!次回の「NEWT Product Advent Calendar 2024」Day18は、MLチームリーダーのmiyattiが担当します。Difyをテーマに紹介する予定です。次のブログもお楽しみに!
 

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