入社から8か月。AIファーストへ進化する令和トラベルで感じた変化と挑戦

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Takayuki Tomonaga
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Dec 26, 2025
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この記事は、「NEWT Product Advent Calendar 2025」Day20 の記事となります。
NEWT Product Advent Calendar 2025」最終日は、令和トラベル 執行役員CIOのtomonagaが、QAエンジニア massuからバトンをもらい執筆。ぜひ、最後までご覧ください!
 
こんにちは。令和トラベル執行役員の友永です。
2025年10月1日付けでCIOとして就任いたしました。引き続きよろしくお願いいたします。
 
世界的なAIの変化のまっただ中で、私はCIOとして「仕組み・制度・文化・リスクの四軸を同時に再構築する仕事」に取り組んでいます。
 
本記事では、令和トラベルにジョインしてからの8か月で向き合ってきたこと、AIファースト時代に必要な組織づくり、そしてこれから挑む未来についてまとめます。
 
—— 経営と現場をつなぐ、“次の10年” への実験記録
4月に令和トラベルへジョインしてから、早くも8か月が経ちました。(下記は、入社エントリー)
 
楽天、リクルートで十数年にわたり開発組織を率い、新規・既存事業やIT戦略を担ってきた私は、
「これまでの経験を、スタートアップという環境で再現・再定義したい」と考えて転職しました。
その直後、社会全体でAIの進化が一気に加速しました。
ChatGPT、Gemini、Claude、Devinなどの生成AIが業務のあり方を根底から変え、「AIを使いこなす組織」こそが次の競争優位を生む時代に入ったとも言えます。 令和トラベルも10月に「AIファーストカンパニーを目指す」という方針を掲げ、
全社のAIトランスフォーメーションを推進する組織として、新たにAX室(AIトランスフォーメーション室)を立ち上げました。
 
AIはもはや一部のチームのものではなく、経営・開発・制度・カルチャーのすべてを再構築する中心テーマとなりました。
私はCIOとして、その変革を支える「仕組み・制度・ガバナンスの再設計」を進めています。
 

1. 最初の100日:現場に入り、組織の“体温”を読み解く

入社してまず取り組んだのは、現場の温度を知ることでした。
エンジニア組織の構造、プロダクトの状態、開発フロー、経営層の期待。それぞれの前提を丁寧に観察し、信頼関係を築きながら課題を可視化していきました。
スタートアップではスピードが命ですが、スピードの前提には “共通理解” が必要です。目的・責任・判断基準を揃えたうえで、初めて加速が生まれると思っています。
私はまず、「経営と現場の翻訳者」として機能することに注力しました。技術と経営のギャップを埋め、意思決定の言語を揃える。
  • エンジニアとの1on1
  • 現場の課題の可視化
  • プロダクトレビューへの参加
  • 経営・現場間の翻訳
  • 技術的負債の把握
  • 現場で起きている“痛み”の可視化
 
組織の構造が立体的に見えるまでに時間はかかりましたが、ここが最初の100日で最も重要な仕事だったと思っています。
 

2. 専門分化から“フルスタック体制”へ:AI時代に適した組織へ

AI時代が到来し、AIがコード生成もテストもドキュメントもサポートできるようになりました。
 
従来のように、
  • フロントエンド
  • バックエンド
  • インフラ
  • QA
といった ”専門領域ごとに分断された組織” は、AI時代のスピードにフィットしなくなってきているのではないか、と強く感じました。
そこで私は、令和トラベルの開発組織を「フルスタックエンジニア体制」へ大きく舵を切る決断をしました。
 
■ 誤解してほしくないこと
「フルスタック=全部を一人でやる」ではありません。本質は、「役割や工程の境界を越えて協働できる組織」 にすること。
 
AIの力を前提にすると、キャリアは「専門に閉じる」か「全部やる」の二択ではなくなる。
むしろ、
  • 状況に応じて役割を横断する柔軟性
  • 領域をまたぐ共通言語
  • 問題を深く理解する姿勢
  • AIで不足を補完できる戦略性
 
こうした “越境力” が組織の競争優位につながると考えています。
 <令和トラベルが以前より大切にしてきたエンジニアリングカルチャー>
 <令和トラベルが以前より大切にしてきたエンジニアリングカルチャー>
 
専門性を否定するのではなく、「専門性 × 越境性」の両立が重要になるのです。
 
つまり、
マネージャーにもエンジニアにもこれまでとは違う観点のスキルが必要になってくる。
これからが新たなチャレンジの成果が試される時だと思うし、もちろん専門領域を持った人たちへのリスペクトは変わらず持ちつつも、フルスタック化は単なるスキルの話だけではなく、「組織的な動きも変化させる一手」になると思っています。
 

3. AIを日常に浸透させるための仕組みづくり

夏以降は、経営と開発の両輪をAI前提で再設計していきました。
  • 3年スパンのIT戦略ロードマップ策定
  • 技術負債の棚卸しと優先度整理
  • 開発生産性のKPI設計とデータドリブン化
  • ChatGPT、Gemini、Claude、Devinなどを開発フローに統合
  • 社内AIガイドラインの運用
  • AI勉強会と実践共有の仕組み化
AX室と連携し、社内勉強会や実践共有の仕組みを回し、トップダウンで何を作るか?ではなく ボトムアップで課題感を把握して行動するという文化が根付きつつあることを、手に取るように感じています。
結果的にAIが会話の中に自然に溶け込み、「どのモデルが最適か」「どんなプロンプトが良いか」が議論される。
その空気が日常になりつつあるのは、この8か月で最も大きな変化だと思います。 なお、直近2回の開発合宿(= BOF)のブログもぜひあわせて読んでみてください。
  • BOF(Vol12)
  • BOF(Vol11)
 

4. 組織フェーズの変化に合わせた「評価制度の再定義」

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このタイミングで評価制度を見直したのは、AI活用のためだけではありません。ここ1年で優秀なエンジニアが増え、組織の技術レベル・スピードが一気に上がりました。
つまり、「初期フェーズの評価軸では組織を正しく捉えられない」という状態に入ったと感じています。スタートアップは常にフェーズが変わる。しかもその変化スピードがとても速い。
 
「成長フェーズに入った組織が、次のステージへ進むための再定義だった」と言うほうが正確かもしれない。
「フルスタック型」「スペシャリスト型」などスキルだけではなく、「再現性」「波及効果」など「事業・組織の成長にどう貢献したか」を評価できるようにする。
 
もちろん、制度を作っただけでは意味がありません。
組織として形式知化し、継続的に組織マネジメントに生かしていく状況を、これからも作っていく必要があります。
 

5. CIOとして取り組む、リスクマネジメントの再構築

一方で、企業成長やAIを企業の中心に据えることで、あたらしいリスクも生まれると思っています。スタートアップとして企業成長していく中で、社会に「安心・安全な企業である」と証明し続けることの重要性です。
  • AIポリシー、ガイドラインの刷新
  • データ管理の透明性向上
  • 自動生成コードのセキュリティ標準化
  • 全社リスクリテラシー教育
  • モニタリング・監査プロセスの強化
  • 経営陣へのリスクレポートの定期化
など、多くの取り組みを進めていく必要があります。 本質は「スピードを落とさず、社会的信頼を維持し続けるための経営基盤」を整えることだと考えています。
 
どれだけAIを使いこなしても、どれだけ開発スピードが速くても、社会からの信頼がなければ企業は前に進めません。スピードを落とさずに信頼を積み上げる。 ”挑戦” と ”安全” を両立させる必要があります。
 
私はリスクマネジメントを、「挑戦の足かせではなく、挑戦を支える土台」と捉えています。
 
「攻めと守りが両立するAIガバナンス」を実現することが、CIOとしての使命だと思っています。AIファーストを掲げるなら、その裏にある“安全の設計”もAI時代の水準で更新すべきであるし、2026年に向けてさらに進化させていきます。
 

6. スタートアップで再発見した “大企業との違い”

大企業では最適化が中心、スタートアップでは仮説検証が中心。
 
AIのような未知の領域では、この柔軟性こそが最大の武器だと思っています。
「まず動かす」、成果を見て仕組みにする。
 
このスピード感がスタートアップの醍醐味であり、同時にAI時代の組織に必要なマインドセットでもあると感じています。
過去に培った構造化の力を活かしながら、変化を止めないこと。その両立が、自分の中でも確実に進化していると感じます。
 

7. 終わりに:経験を更新し続けるということ

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この8か月で痛感したのは、「経験を活かす」とは「過去を繰り返すこと」ではないということです。
環境が変われば、成功の形も変わると思っています。だからこそ、経験は「積み上げ」ではなく「更新」され続けるべきだと感じます。
AIというあたらしい前提の中で、制度も、組織も、リスクの考え方も進化していく。
私はその変化の中で、「経営と技術、そしてAIをつなぐ橋」でありたい。AIファースト時代の経営と技術の在り方を、令和トラベルから実証していく——
この挑戦は、まだ始まったばかりです。
 
 

📣 1月のイベント開催のお知らせ

令和トラベルでは、毎月技術的な知識や知見・成果を共有するLT会を毎月実施しています。発表テーマや令和トラベルに興味をお持ちいただいた方は、誰でも気軽に参加いただけます。
 

【1/28 開催!3社共催】モバイルアプリ開発 ✕ AI ー 組織・技術課題と向き合い、AIと走る

2026年のスタートを切る1月の「NEWT Tech Talk」は、”モバイルアプリ開発 ✕ AI ー 組織・技術課題と向き合い、AIと走る” というテーマで開催。
クラシル株式会社 なぐもさん、株式会社ヤプリ にゃふんたさんをゲストに、令和トラベル やぎにいの3名が登壇します。モバイルアプリ開発の現場で、AI活用に取り組む3社のエンジニアが、個人・チーム・技術課題それぞれの視点から、AIとどのように向き合い、どのように開発を前に進めてきたのか、具体の取り組みをシェアしながら語ります!
 
そのほか、毎月開催している技術発信イベントについては、connpass にてメンバー登録して最新情報をお見逃しなく!
 

【NEWT Chat リリース記念】AI × Travel Innovation Week 開催!

12月3日〜6日の4日間、「NEWT Chat」誕生の裏側や開発ストーリーをお届けする特別企画 “AI × Travel Innovation Week” を令和トラベルのnote上で開催しました!
「NEWT Chat」のリリース背景、プロダクトの価値、開発体制、そして今後の展望など、新規事業の “舞台裏” を公開。特に、AIプロダクト開発に関わるエンジニア・PMの皆さまにとって学びの多い内容となりますので、ぜひご覧ください。
▼ AI × Travel Innovation Week のnoteはこちら:
 
旅行・観光業に特化したAIエージェントチャット「NEWT Chat(ニュートチャット)」についてはこちらから。
 

令和トラベルでは一緒に働く仲間を募集しています

この記事を読んで会社やプロダクトについて興味を持ってくれた方は、ぜひご連絡お待ちしています!お気軽にお問い合わせください!
フランクに話だけでも聞きたいという方は、カジュアル面談も実施できますので、お気軽にお声がけください。
 
 

エンジニアリングオフィスからみなさまへ✨

最後までお読みいただきありがとうございました!
12月1日からスタートした『NEWT Product Advent Calendar 2025』。本日が最終日となりました。令和トラベルプロダクトチームの総勢20名が、途切れることなくバトンをつなぎ、無事に最終日まで走り切ることができました。
2025年の1年間のそれぞれの取り組みをさまざまな角度でお届けさせていただきましたが、いかがでしたでしょうか?
 
2025年の集大成とも言える『NEWT Product Advent Calendar 2025』に最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました!
 
令和トラベルは2026年も、最先端のテクノロジーを駆使し、旅行体験のアップデートという壮大なミッションの実現に向けて、メンバー全員でさらなる高みを目指して駆け抜けていきます。
2025年も令和トラベル・NEWTを応援いただきありがとうございました!2026年もどうぞよろしくお願い申し上げます!

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