トップダウンではなく現場から。令和トラベルが進めるAIファーストカンパニー化の軌跡

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Itsuki Aoyagi
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Nov 17, 2025
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こんにちは、令和トラベルAndroidアプリエンジニアのやぎにいです。
2025年10月28日に、1Day開発合宿『Bet on Future Day vol.12』を開催しました!この記事では、合宿開催前後の進め方や当日の様子についてご紹介します。
ぜひ、最後までご覧ください!
 

令和トラベル『AIファーストカンパニー宣言』

令和トラベルでは、2025年10月1日に「AIファーストカンパニー宣言」とともに、全社のAIトランスフォーメーションを推進する組織として、新たにAX室(AIトランスフォーメーション室)を立ち上げました。
 
AIを「一部の有志チームの特殊技能」ではなく、すべての事業・組織・戦略の前提に置く。
そんな大きな方向転換のなかで、「AIファーストカンパニーへ、大きく邁進するぞ!!!!」という全社テーマのもと、1Day開発合宿を企画しました。
 
本記事では、これまでのBOF(Bet on Future Day)という1Day開発合宿の形をとりながら、「AIファーストカンパニー」実現への第一歩として、どのように設計・実行したのか?そして、プロダクトチームだけでなくビジネスチームも巻き込んで、どんなアウトカムを生み出せたのか? をご紹介します。
 

Bet on Future Dayについて

💡
Bet on Future Dayとは?
『Bet on Future Day』とは、エンジニアやデザイナー、PMメンバーで一日中ひたすら開発やプロダクトと向き合うための1Day開発合宿です。
通常業務とは異なり、自ら取り組むテーマを決め、合宿期間中に何かしらのアウトプットを生み出すことを目指します。日々の案件開発では着手できないけれど、『NEWT(ニュート)』の未来につながるR&Dや開発改善など、腰を据えて行う一日として隔月開催してきました。
※イベント名「Bet on Future Day」は、令和トラベルのが過去に掲げていたバリューのひとつ「Bet on Fire」からもじって、”この日は未来に活かされる取り組みに全員でベットしよう”という想いを込めて「Bet on Future Day」と命名しました。
 
直近開催した『Bet on Future Day』のイベントレポートも是非チェックしてみてください。

vol.10の開催レポート

vol.11の開催レポート

 

今回の取り組み

前述の通り、今回のBOFのテーマは以下としました。
💡
全体のテーマ:AIファーストカンパニーへ大きく邁進するぞ!!!!
 

全体設計の背景

今回のBOF vol.12は上記のテーマを掲げ、「AI活用要件における Lv3 へのジャンプを、全グループで一斉に踏み切る 1 日にする」というコンセプトで設計しました。
 
今期の全社戦略のターゲットとして、AI活用要件 Level3をターゲットとして定め、その地点に向けて各グループのミッションなどを策定して動き出し始めました。
AI活用要件の定義については、株式会社ディー・エヌ・エーが公開している「DeNA AI Readiness Score(DARS)」をベースに作成をさせていただきました。
AI活用要件の定義については、株式会社ディー・エヌ・エーが公開している「DeNA AI Readiness Score(DARS)」をベースに作成をさせていただきました。
 
今回のBOFでは、各グループに対して以下のゴールを設定して進めました。
💡
  • 自分たちの業務のなかから「AI で改善したいテーマ」を1つ以上選ぶ
  • そのテーマに対して「Level3 相当」と言えるアウトカムを1日で作る
 
ここで定義している「Level3 相当のアウトカム」とは、例えば以下のようなイメージです。
💡
  • 単なる「PoCのメモ」ではなく、明日から実際に使えるNotionテンプレート / スクリプト / Botになっている状態
  • 特定のメンバーだけでなく、チーム全員が使える状態+簡単な使い方ドキュメント化されている状態
  • 「業務がどれくらい楽になるのか?」が、粗くてもいいので定量・定性的に言語化されている状態
 
社内において「AIファーストカンパニー」の実現に向けた大きなモメンタムを形成すべく、BOFの1日を最大限活用し、参加したメンバーが全社のAI活用推進をリードしていくための大きな1歩を踏み出せるような企画・設計を行いました。
 

全社モメンタム形成に向けたアクション

今回の開催でのもう1つのこだわりが「ビジネスチームの巻き込み」です。
これまでのBOFは、プロダクトチームを中心とした設計・実施となっていましたが、AIファーストカンパニーを本気で目指す以上、プロダクト開発組織だけでなく、ビジネス組織・コーポレート組織を含む全メンバーを巻き込んで行く必要があります。
 
そこで今回の開催では、全社にアナウンスを行い、広く参加者メンバーを募りました!
社内告知の様子
社内告知の様子
 

開発合宿の進め方

参加するグループは、以下の事前課題について準備し、当日を迎えます。

各グループでの課題の洗い出し

各グループが今回の開催テーマ・ゴールを見据えて、業務課題や改善ポイントを洗い出し、リストアップしました。
定型的な業務や単純作業をワークフローや、AI Agentに置き換えられないか?置き換えることにより、業務効率やコスト削減が実現できないか?など、日々の業務のなかで「時間があれば着手したい…」と思っていたような課題を、この機会に徹底的に洗い出しました。
 

BOFにおいて取り組むテーマの設定

BOFの大きな意義の一つは、” 日々の業務のなかではなかなか着手できない課題に対して、腰を据えて1日で集中して向き合う” こと。
全社戦略の実現は1日で叶わなくても、特に大きな課題や強いペインにの解決に向き合い集中することで、中長期的に他のテーマに取り組みやすくする土台が作る。とにかく「AIファーストカンパニーに大きく近づく!」をモットーに、各グループにおいてテーマ設定や役割分担、当日のアウトプットの目標などを設定していきました。
 

BOF当日の様子

そして迎えた合宿当日。参加メンバー全員が集中して課題に向き合います。それぞれ事前準備を経て当日を迎えているため、オープニング終了後から、各グループ全速力で課題解決へ取り組みました!
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当日は、オープニングセッションのあと以下の流れで進めていきました。成果発表の準備や時間は設けず、Notion&Slackでの共有のみの留めることにより、「つくる時間の最大化」をはかりました。
💡
  • 各グループで当日の進め方を最終確認
  • ひたすら手と頭を動かす 1 日
  • Notionへの成果ストック+Slack共有
時間
概要
備考
~10:00
準備運動
10:00 〜 10:10
オープニング
10:10 〜 18:30
各チームに分かれて邁進する
各チームのリーダーによる1分で開発するネタの共有をおこないます!
18:30 〜 19:00
クロージング & お片付け

会場

今年5月上旬に新オフィスに移転し、前回に引き続き、広いラウンジスペースでの開催となりました!このイベントスペースはオープン化されており、技術コミュニティへの会場提供を行っております。気になる方はこちらもチェックしてみてください!
令和トラベルオフィス Inspire Lounge
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生まれたソリューションの例

今回のBOFでは、「AI活用を前提にして業務を再設計する」という視点で課題解決や業務効率化に挑みました。そのなかでも、特に印象的だったアウトプットをいくつか紹介していきます!
 

1. Tech Branding グループ:n8n と AI を組み合わせた “ブログ運用フローの再設計”

Tech Branding グループは、PPさん(※ 令和トラベルでは業務委託の方をプロパートナー(PP)と呼んでいます)が担っていたブログ公開までの一連のオペレーションを棚卸しし、「AI ✕ Ops でどこまで自動化できるか」を検証しました。
 
取り組みは以下の3ステップで進められました。
📌
  1. 業務の棚卸し → フロー可視化
    1. まず、現在のブログ運用に必要なタスクをすべて書き出し、Miro でワークフローを再構築。
  1. データを一元管理できる箱を用意
    1. Google Docs / Spreadsheet を中心に、ブログ企画・日程・担当タスクなどの全データを一箇所に集約。
  1. n8n を使ったワークフロー自動化
    1. リマインド、タスク連携、Slack 通知など、人の手がいらない部分をn8nで自動化。全社導入の可能性まで見えるレベルで動く仕組みに到達。
 
これにより、「ブログ運用を人が回す」から「設計と最終判断だけを人がする」状態を実現することができるようになりました。
PPさんに依存していた業務が標準化され、社内のAI×Ops推進に向けた具体的な成功例となりました。
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2. バックエンド3グループ:人ではなくAI Agentが一次対応する世界の実験

バックエンド3グループは、バックエンド領域における「人の判断が必要な情報処理をAIに委ねられるか」を多面的に検証しました。
 
成果は大きく以下の3ラインに分かれます
📌
  1. データ修正 DSL の設計と実行基盤の実装
    1. 予約金額や旅程情報の修正など、従来はデータベースを直接操作していた作業を自動化するため、専用DSLと実行仕組みを開発。
    2. PR レベルで既に動作し、今後社内管理システム画面へ統合予定。
  1. Slack メンテナンス通知のAI一次受け
    1. #info-tour-maintenance の通知を automatically fetch → 分類 → tool 渡しまで自動化。MCP を travel-api に実装し、AI が必要ツールを呼び出せる土台を整備。
    2. ここから先の “AIが一次応答 → 人にエスカレーション” も実現見込み。
  1. Slack 議論 → issue 作成の自動化
    1. 議論中のメッセージに特定リアクションをつけると、AI が issue を起票。
    2. 意思決定の散逸を防ぎ、“議論 → 実装” の流れをスムーズに。
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3. ネイティブアプリグループ:AIが開発の一員として存在する日常

ネイティブアプリグループのテーマは「開発体験をAIで最適化する」。日々の開発では、ライブラリアップデートやCompose Previewのメンテナンス、E2Eテストの拡充など、人が確認しながら進めるタスクが多く発生します。
ネイティブアプリグループは、これらをAIに肩代わりさせるため、LLMを用いたコード自動解析やE2Eテストの自然言語仕様からテストコードへの変換を検証しました。
 
主に3つのアウトプットが生まれました
📌
  1. ライブラリアップデートの影響範囲をAIが解析
    1. リリースノートの内容を読み解き、変更点・注意点・影響するコンポーネントを Actionsが自動整理。
    2. “アップデートのたびに人が手で読んで判断する” 工程が大きく軽減。
  1. 自然言語で書いた E2E 仕様 → テストコード生成
    1. 自然言語のテスト仕様を読み取り、E2Eテストコードを生成するAgentを作成。
    2. テスト拡充の初期コストが減り、開発者が “作る” ことに集中できる環境が整いつつあります。
  1. iOS/Androidの開発体験統合を目指したAI Agentルールの整備
    1. ネイティブアプリグループではiOS/Androidのプラットフォームに閉じない形での開発の進め方に大きくシフトしている段階
    2. 両プラットフォームの開発を行っていく際に既存の命名ルールが違う武運、更に言えばドメイン用語の部分での機能や画面の呼び方を意識しないプロンプトを書けるようなルール整備
 
 
これにより、エンジニアは作ることに集中できる環境を実現。単なる自動化ではなく、AIがコードを理解し、チームの一員として機能する開発文化がまた一歩進みました。
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今回の合宿を振り返って

今回の『Bet on Future Day vol.12』を通して明確に感じたのは、『AIファーストカンパニー』への変革は、トップダウンではなく現場駆動で起こるということでした。
開催後に実施したアンケートでは、運営やテーマ設計に対する高い評価に加え、参加者が自分ごととしてAI活用を考える姿勢が広がりつつあることがよく分かる結果となりました。
 

全社的モメンタムが生まれた1日

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BOF全体の満足度は、平均3.47 / 4.0と全体的に高い水準の結果でした。
また、「今回のテーマ・ゴールの設計は有意義だったか」という設問も 平均4.22/5.0 と高評価で、「Level3 相当」と言えるアウトカムを1日で作るというゴールが、各チームの挑戦意欲を引き出していたことがよく分かる結果でした。
今回のBOFは、『AIファーストを体感する1日』として、意味のある機会になったと思います。
 

『AIファースト』を文化にする、次の一歩

数値から見ても、Bet on Future Day vol.12は「AIファースト」の文化を根付かせる明確なモメンタムを生み出したことを実感しました。運営や合宿全体への満足度だけでなく、テーマ設計に対する評価や、個人・チームともにAI活用への実感値も含めて、高い水準だったと言えると思います。
この積み重ねが、“AIファーストを宣言から文化へ” 移行させる推進力になっています。今後は、BOFで得られた学びを全社的な仕組みにし、日常業務の中でも「AIを前提に考える」状態を標準化していくフェーズに入ります。
 
今回のBOFを通じて、AIを使うことが特別なスキルではなく、日々の仕事の延長にあると改めて感じました。現場が先に動き出すことで、AIファーストカンパニーの姿が少しずつ輪郭を帯びてきています。
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📣 12月のイベント開催のお知らせ

令和トラベルでは、毎月技術的な知識や知見・成果を共有するLT会を毎月実施しています。発表テーマや令和トラベルに興味をお持ちいただいた方は、誰でも気軽に参加いただけます。

【12/4開催!】2025年総決算!エンジニアリングマネージャーお悩み相談室 LIVE

2025年最後のイベントとなる「NEWT Tech Talk Vol.19」は エンジニアリングマネージャーお悩み相談室 を開催いたします!当日は、株式会社カケハシ・株式会社スマートバンク・株式会社LayerXを交えパネルディスカッションを開催。
2025年7月7日に発売された書籍『エンジニアリングマネージャーお悩み相談室』の著者と、書籍レビューに参加したEM実践者たちが集い、EMたちのさまざまな課題や悩み、またそれに対する解やアプローチについてここ限りのオフレコトークを語り合います!
 
そのほか、毎月開催している技術発信イベントについては、connpass にてメンバー登録して最新情報をお見逃しなく!

令和トラベルでは一緒に働く仲間を募集しています

この記事を読んで会社やプロダクトについて興味を持ってくれた方は、ぜひご連絡お待ちしています!お気軽にお問い合わせください!
フランクに話だけでも聞きたいという方は、カジュアル面談も実施できますので、お気軽にお声がけください。
 
 
それでは次回のブログもお楽しみに!Have a nice trip ✈️
 
 
 

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